Janet Guthrie, 59, died Thursday December 16, 2010 of ovarian cancer.
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In lieu of flowers, Janet asked that donations be made to one or more of the following: The Frank E. Guthrie Memorial Scholarship, College of Agriculture and Life Sciences, Campus Box 7645, NSCU, Raleigh, NC 27695-7645; Hospice of Wake County, 250 Hospice Circle, Raleigh, NC 27607; SPCA of Wake County, 200 Petfinder Lane, Raleigh, NC 27603.
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Janet さんは献花の代わりに、次のいずれか又は複数に寄付をして下さいと要請しました。①ノースカロライナ州立大学農学・生命科学学部のFrank E. Guthrie 記念奨学金 ②ノースカロライナ州ローリー市ウェイク郡ホスピス ③ウェイク郡のSPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals 動物虐待防止協会) http://www.spcawake.org/site/PageServer
私は現地の友人(Margie さん)を通して、①のF.E. Guthrie 記念奨学金に100ドルを寄付するように依頼しました。この奨学金はF.E. Guthrie先生が亡くなった時に、先生の遺言で、毒性学を専攻する大学院生を経済的に支援する目的で、多くの人から献花の代わりに寄せられた寄付で設立されたものです。
Janet さんは、私が約10年間勤務していたノースカロライナ州立大学のFrank E. Guthrie 教授のお嬢さんで、1982年に京都で第5回国際農薬化学会議が開催された時に車椅子のF.E. Guthrie 先生に付き添って来日したのを思い出します。③を寄付先の候補に加えたのは、Janet さんは生涯独身で過ごしたのでペットを可愛がっていたのでしょう。
それにしても、日本の葬式のように香典や、ご遺体と一緒に棺桶に入れる献花と違って、John君の時もそうでしたが、これから生きていく人たちの幸福のために寄付をするというのは、アメリカ的な合理的な考えだなあという気がします。
私が名古屋大学大学院博士課程2年の半ばで休学してノースカロライナ州立大学(NCSU)のPh.D 課程に入り直したのは1969年ですからもう40年以上前ですが、その当時のNCSUでは毒性学科設立の萌芽期で、3人の教授が中心でした。イギリス出身のE. Hodgson 教授は、生物化学が得意で、農薬を含む薬物の第1段階代謝反応に関与する cytochrome P450 という酵素について先駆的な研究をしていました。E. Hodgson 教授は確か私よりも10才くらい年長でしたからすでに80才前後の筈ですが、今でもまだお元気で研究費を獲得して現役でNCSUで研究を続けておられます。多分、体が動かなくなるか最後の息を引き取る瞬間まで研究を続けられることでしょう。W.C. Dauterman 教授は私の恩師ですが、有機化学が得意で、殺虫剤の類縁化合物を多数合成して作用点との反応性の解析などをしていました。F.E. Guthrie 教授は、農薬を散布した後のタバコ畑に入って作業をする季節労働者の採血をしてコリンエステラーゼという酵素の阻害度を測定するような研究(それによって農作業中にどれくらい残留農薬に暴露するか推定する)の他に、農薬の経皮的吸収を調べるために、病院から事故死した人の皮膚を入手して拡散セルに装着して、放射能で標識した農薬の透過速度を測定していました。
F.E. Guthrie 先生は第二次世界大戦中はアメリカ軍の海兵隊員で、日本軍との間で激戦のあった硫黄島にも派遣され、朝鮮戦争時に在日米軍基地に駐屯していた時の「グスリー中尉」と日本語で書かれた板の表札を私に見せてくれたことがあります。私は君を共産軍から救ったんだと冗談を言って、留学時まだ20代だった私に目をかけてくれました。
F.E. Guthrie 先生とお嬢さんのJanet さんのご冥福をお祈りします。
3人の教授の肖像写真は本ブログの2010年10月2日の記事に貼付してあります。(左がF.E. Guthrie 先生、中がE.Hodgson 先生、右がW.C. Dauterman 先生)