財団法人報農会というのは、昔日本特殊農薬という会社がパラチオンという有機リン殺虫剤を導入・販売して得た巨額の利益を農業に還元する目的で設立した財団で、植物保護関係分野の学生や大学院生に奨学金を支給したり、研究者の国際会議出張の旅費の支援する活動をしてきました。私も名古屋大学大学院生だった一時期奨学金を支給されて大変助かりました。
今でも奨学金を支給しているようですが、銀行の利子が極端に安くなったので、支給額は非常に低く抑えざるを得ない状況だと聞きました。その他の活動として、年に1回報農会シンポジウム(今回は第34回目)を開催するとともに、植物保護分野で現場に近いところで大きな貢献をした人たちに功労賞を授与して表彰するという活動をしています。
第35回報農会シンポジウムは例年通り東京都北区王子(おうじ)駅近くの「北とぴあ」で開催されました。
1. 開会の挨拶 長田付貞洋(報農会理事長)
2. 「農薬取締法の改正について」 石岡知洋(農林水産省農薬対策室長)
3. 「ドローンを用いた防除の展望」 岡田善樹(DJI JAPAN (株)
4. 「生物的防除を基幹としたIPMへの移行とその意義」大野和郎(宮崎大学教授)
5. 「GAPを利用した茶の経営改善の取り組み」 小川英之(埼玉県茶業研究所)/横田泰宏((有)東阜狭山茶横田園)
6. 総合討論
いずれも興味深い内容で大変勉強になりました。4番目の「生物的防除を基幹としたIPMへの移行とその意義」という演題の講演は、通常のIPMは耕種的防除、物理的防除、生物的防除、化学的防除を合理的に組み合わせるといっても実際には化学的防除が切り札になっているという実態に対して、生物的防除を基幹にする(Biointensive IPM)という新しい発想とその普及を目指した内容でした。しかし、現実には実現するのは難しいだろうなという印象を受けました。兼業農家が多い日本のような国で、IPMに必要な害虫の発生予察や密度モニタリングが農家レベルでできるのかという問題と、施設栽培で天敵温存植物を施設の内外に設置するといっても、天敵の増殖と害虫の増殖のタイムラグを考えると、農家が消費者から求められる高品質の作物が本当に収穫できるかどうかちょっと疑問だな感じました。
つまり、IPMそのものを目的化してしまうと、農家が求めていることと乖離してしまうのではという心配です。
功労賞の表彰式と祝賀会は会場を16階の展覧の間で行われました。元千葉県農業試験場の藤家 梓博士、元福島県病害虫防除所・宮城県病害虫防除所の藤崎祐一郎s日、元青森県りんご試験場の松中謙次郎氏の功績が紹介され、表彰が行われました。