2010年12月4日土曜日

今日は神田の学士会館で名古屋大学農学部同窓会関東支部総会ならびに講演会があり、私も参加しました。昭和32年(1957年)卒から平成16年(2004年)卒までですから、47年の年齢差のある同窓生が楽しいひと時を過ごしました。講演の部は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)未踏技術研究センターの小口美津夫氏による「宇宙で生きる~人工的な地球の創造~」という演題の講演があり、スライドに動画(宇宙飛行士がどうやって歯を磨いたり頭を洗ったりするかとか、無重量状態で魚が突然キリキリ舞いする様子とか)も挿入して、あまりにも興味深いお話に最初から最後まで惹きこまれました。宇宙船での長期生活用に開発された様々な技術、例えば物質の再利用、水の浄化、植物工場による食料生産など、地球上の問題を克服するのにも活用できるということを再認識しました。

数日前に大阪大学で物理学を教えておられるK教授から、私たちが10年以上前に取り組んでいた農薬と発がん性に関する研究についての問い合わせのメールが届きました。科学を装いつつ実は科学的根拠のないさまざまな問題を「ニセ科学」として検討しておられるとのことです。私たちは、1960年代に使われていた水田除草剤が、新潟県における胆のう癌による死亡率が全国一高いことと関係があると示唆した疫学的な研究を再検証し、仮説を否定しました。この問題については、日米の癌の疫学の専門家その他を招聘した日米科学協力事業セミナーでも検討しましたので、その時のプロシーディングズ
"Pesticides and the Future: Minimizing Chronic Exposure of Humans and the Environment" eds. Ronald J. Kuhr and Naoki Motoyama, IOS Press, Amsterdam, 1998
を一冊お送りしました。

疫学的研究の仮説は否定されたにもかかわらず、当時アエラという週刊誌に大きく報道されたこともあって、この事例が今でも農薬による発がん性の事例として引用され続けているのは残念なことです。間違いがわかっても、報道を訂正しない一部のメディアやジャーナリストの無責任な体質にも責任があると思います。