2020年1月17日金曜日

東京農業大学校友会グリーンアカデミーホール(世田谷キャンパス)で、東京農業大学総合研究所研究会農薬部会(私が部会長)の新年顔合わせの会が午後2時からありました。少し早目に大学に到着しましたので、久し振りにキャンパス内を少し歩いてみましたら、建設中だった新研究棟がほぼ完成していました。いずれ別々の建物に分散していた学科や研究室が全てこの中に入る予定のようですが、各研究室の引っ越しは大変だろうなと想像しました。先に新管理棟と新教育棟1号館が建設されてすでに動いていますので、引っ越しが済んで古い建物が解体されれば、キャンパスの景観が大きく変わる筈で、学生人口の減少が予測されている中でこういうキャンパス造りができる東京農業大学(の財政基盤)はすごいなと思いました。



新年顔合わせの会では、私の10分程度の「部会長挨拶」に続いて、山本 出先生(東京農業大学名誉教授で農薬部会名誉会長)による約20分の「年頭所感」、西本 麗氏(住友化学(株)代表取締役副社長執行役員)による「農薬産業のイノベーションと社会貢献」と題した1時間半の特別講演がありました。
山本先生の配布資料には、1998年に70才で東京農業大学を定年退職されて以降の各種分野における執筆活動や講演などの社会活動が整理されていて、先生の多方面にわたるご活動がわかりました。先生は昭和3年(1928年)生まれで93才になられたとのことですが、私が嬉しかったのは、16才で海軍経理学校に入学したことや、戦中・戦後の日本社会の様子や、それが先生の農薬科学の研究にどうつながっていったかの大義について話して下さったことです。1945年の終戦(敗戦)から75年経って、日本とアメリカが戦争をしたこともどちらが勝ったかも知らない世代の若者が出現してきている状況で、同じ間違いを犯さないために戦中・戦後を直接経験してきた方の証言は貴重です。


西本氏の特別講演は、正に新年に相応しいグローバルな視点から農薬産業がイノベーションによっていかに人類共通のSDGs(持続可能な開発目標 Sustainable Developement Goals) (2015年9月の国連で開かれたサミットの中で採択された国際社会の共通目標)
に貢献できるか、という格調高い内容でした。西本氏は大学では経済学を専攻した文系出身ですが、農薬産業のイノベーションとしてGM作物、ゲノム編集、クロップストレスマネジメント、精密農業、持続可能な農業体系を指摘し、農薬に関わる研究者に目標と使命感と誇りを与えるお話しでした。
ちょっと残念なのは、世界的にはGM作物は大きな役割を果たしているにもかかわらず、日本では反遺伝子組換え活動の影響でこの分野には参加不可能の社会的状態に置かれているということです。そのために、効率的な品種改良はゲノム編集に頼らざるを得ず、ゲノム編集が遺伝子組換えと同じ規制を受けないように頑張らなければならない状態のようです。
西本氏の特別講演に対しては活発な質疑応答がありました。これ以上の耕地拡大が困難な世界で、増大する人口に食糧を供給するためには生産性を向上させることが必要だが、経済学でいう「収穫逓減の法則」に照らして限界があるのではないかという質問に対して、種子の改良と耕地の土壌改良でまだまだ生産性向上の可能性があるとの指摘がありました。
講演終了後、グリーンアカデミーホール1階のレストランで賀詞交歓会が行われ、講師を含んで会員同士の活発な交流が行われました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8E%E7%A9%AB%E9%80%93%E6%B8%9B
いつもの通り、山本 出先生のご自宅での二次会もありました。

今日は幹事会は行われませんでしたが、前回の幹事会で決めた通り、次回第117回部会セミナーは3月13日(金)に開催され、薮田秀行氏(北海道で自然農業を実践している農家)による「自然栽培の標(しるべ)」と、松尾憲治(のりただ)氏(元住友化学、現関西学院大学研究員)による「ピレスロイド殺虫剤開発の経緯と現状」(仮題)の2題の講演が予定されていることの予告をしました。