演題1は、流通経済大学経済学部の後藤哲雄特任教授による「ナシ園のカブリダニ種の置換に缶よする要因を探る」でした。後藤先生は玉川大学出身で、私が1978年にアメリカから帰国して千葉大学助手に着任した時に同じ研究室で大学院修士課程の1年生でした。その後、北海道大学で博士課程を修了し、茨城大学助手、助教授、教授として勤務し、2~3年前に流通経済大学に移った人で、一貫してカブリダニの研究をしてきました。今日は、ナシ園でのカブリダニの優先種がケナガカブリダニからミヤコカブリダニに置き換わったのは何故かということを、緻密な実験結果に基づいて説明しました。内容もプレゼンテーションも実に見事でした。
演題2は、農業・産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門の瀬尾茂美博士による「天然からの抵抗性誘導物質の探索とその作用機作」でした。瀬尾博士は筑波大学の出身で、農水省所管の独立行政法人農研機構に博士研究員(ポストドク)として勤務し、そのまま正式の研究者として採用されたとのことでした。瀬尾博士は、害虫が植物の葉を食害したり、あるいは人為的に傷つけたりした時に植物細胞内のいくつかの物質(例えばサリチル酸)が誘導されて、植物が害虫抵抗性や病原菌耐性を示すという現象を説明し、そのような抵抗性誘導物質を探索してきた研究について紹介されました。学問的には非常に興味深い研究分野だと思いましたが、実際の農業分野で農薬に代わる病害虫防除技術として利用するには、まだまだ乗り越えなければならない高いハードルがあるなという印象を受けました。
瀬尾博士が講演の中で引用した、農薬による防除をしなかった場合の病害虫による被害率はモモやリンゴではほぼ100%に達することを示した円グラフについて、フロアから意見があり、これが事実ならモモやリンゴは絶滅してしまう筈だが、実際には農薬がなかった時代からモモやリンゴは存在してきたので、このグラフはミスリーディングだという指摘でした。一理ありますが、農薬がなかった時代に栽培していた品種は育種で品種改良されて現在栽培されてる品種とは違うので、病害虫に対する抵抗性や耐性が違っていた可能性もある筈だと思いました。