2014年10月31日金曜日

元空手の弟子/友人で弁護士のEverette Nolandさんが、約束通り朝7時にモーテルに訪ねてきてくれました。8時半に別の約束があり、その後は海岸の別荘に出かける予定があるとのことで、朝7時しか会う時間がなかったからです。ロビーで二人でコーヒーを飲みながらちょうど1時間くらい話をしました。

昔、マーチン・ルーサー・キング牧師と一緒に行進したり、黒人に選挙の投票権を認めるようにジョージア州アトランタの裁判所の前に座り込みのデモをした時に奥さんと一緒に参加して警官隊と対決もした人権派の73才の弁護士ですが、来月で弁護士事務所を閉じて廃業するとのこと。隠居して奥さんと一緒に海岸の別荘に引っ越して、余生をゆっくり楽しむのかと思って訊いたら、全然違っていました。奥さんはRaleigh市内のMeredith Collegeという女子大学で教員をしていますが、彼の方はダウンタウンの裁判所の近くの一等地の高層ビルに事務所を構えていましたが、だんだん依頼件数が減って事務所の維持が難しくなり、フルタイムのセクレタリーも辞めてもらって経費節減をしてRight Sizing(規模の適正化)をしてきたが赤字が続いてとうとう事務所を閉じなければならなくなったとのこと。それと詳細は語りませんでしたが、ノースカロライナ州のBar Association(弁護士協会?)との確執があって解決できないことももう一つの理由としてあるとのこと。仕事の依頼が少なくなった背景には、彼のように私とほぼ同年代の弁護士はインターネットで宣伝をすることが苦手で、昔から継続している依頼人(顧客)からの依頼に頼らざるを得なかったけど、依頼人の方も高齢化して段々人数が少なくなってきて、とうとうDown Sizing(規模の縮小化)をしても経済的に支えきれなくなったと、正直に打ち明けてくれました。
Social Securityの収入だけでは苦しいので、これから弁護士業以外のやれる仕事を探して、働くつもりだとのことでした。

日本でも高齢化が進んで、定年退職後の男たちは生き甲斐がなくなれば急激に心身ともに老化していくのが問題だと伝えたら、アメリカでも全く同じだとのこと。彼の息子さんは医者になっていますが、アメリカ人はThe Syndrome(特定の症候群)として、肥満、運動不足、心臓病などで皆が苦しんいる状態で、医者にかかって病気の治療を受ける前に先ずこれらの状況を自分で改善しなければ駄目だと言っているとのことです。私も、この年齢になったら先ず健康第一で、できるだけ毎日少なくとも2時間は歩いたりジョギングしたりして運動をし、農薬に関する講演活動をしたり、特に松くい虫問題については現役として今でも調査研究をしていることを伝えました。
先に定年退職した先輩として、健康管理と興味のあることを見つけることが大事だと助言したつもりだったら、100%同意すると言って、さらに退職して弁護士を辞めた友人から一日中家にいて奥さんと顔を合わせていると両方にストレスが貯まるので避けた方がいいと助言されたとも言っていました。日本もアメリカも退職した男性の悩みは全く同じだなと感じました。
餞別(せんべつ)の気持でしょうか、Baen Publishing Enterprises 社出版のThe Ring of Fire Series というScience Fiction のシリーズものの”1636:Seas of Fortune" by Iver P. Cooper (2014年)という本をくれました。1636年当時の日本のことも出てくるとのことです。私はフィクションはもう何年も読んだことがないと言ったら、自分はサイエンスフィクションが好きで、このシリーズは全部読んだと言っていました。時間を見つけて読んでみようと思っています。

昨日Dr. Roe、Dr. Hodgsonと昼食を食べた時に、私が過去10年間松くい虫問題に関わっていて、今回のアメリカ滞在中も枯れた松の木を探しては材片のサンプルを集めているのだと話したら、Dr. Roeが自分は40エーカーの土地に住んでいるが樹齢100年くらいの大きな松がたくさんあって、このところアリが株元に巣を作って大きな松の木を根元から枯らしていると言いました。私がそんな話は聞いたことがないので、一度見てみたいということになり、今朝弁護士との話が終わった後、彼の家を9時に訪ねる約束をしました。GPSに住所を入力して、道を間違えないように慎重に運転して無事に9時に現地に到着できました。確かに大きな松の木の根元にアリが塚のようなものを作っていて、ほじくってみたら腹部だけが真っ黒でその他はあずき色をしたアリがたくさんでてきました。
しかし枯れた松の幹をよく見ると、カミキリムシの幼虫の穿入孔や成虫の羽化脱出痕みたいなものもあり、樹皮を剥がすとSoft Bark(コルク層?)の部分が食害されていて、樹皮は簡単にベロッと剥がれる状態でした。従って、アリが原因で松が衰弱して、そこにカミキリムシが寄生したのか、逆にカミキリムシ(が伝搬したマツノザイセンチュウ)で衰弱した松の木の根元にアリが巣を作って枯死を促進したのかはわかりませんでした。手斧とドリルを持って行ったので、材片のサンプルを採取してきました。
Roe先生の家は大学から40マイルくらい離れた田舎にありますので、途中にはワタ畑やダイズ畑もあります。特にワタ畑は普段あまり見慣れないので、まるで一面に雪が降ったように見えて綺麗です。

朝8時前にRegency Parkに寄ってみたら先日伐採した松の丸太がまだ置いてありましたが、11時頃Roe先生の家から帰ってきてもう一度行ってみたらなくなっていたので、今日Log Truck(丸太を運ぶトラック)がきて搬出したようです。こんな大きな丸太をどうやってトラックに積み込むのか見てみたかったのに、見られなくて残念です。
アメリカ滞在も明日がいよいよ最終日ですので、今までのサンプルも全部一緒にDNA診断の実験をする予定です。



















2014年10月30日木曜日

ノースカロライナ州立大学昆虫学科の教授のDr. Mike Roeと、元毒性学科長だったDr. Ernest Hodgsonともう一度ランチを一緒に食べようという約束でしたので、Roe教授の研究室に午前11時15分に行きました。大学の近くのレストランに行くのだとばかり思っていましたので、いつもの格好のスニーカーにブルージーンに、上だけはTシャツの上に普通のシャツを着ていきました。そうしたら、今日行くところはAlumni Hall(同窓会館)でDress Code(服装の決まり)があって、ほとんどの人は背広上下にネクタイ着用、革靴を履いてくるが、モーテルに戻れば背広やネクタイは持ってきているかと言われてしまいました。一応持ってきているが、服装の決まりがあるところに行くとは言ってくれなかったじゃないかと答えました。必要なら今からモーテルに戻って着替えてくると言ったら、Dr. Hodgsonに電話をしてくれました。そうしたら自分もスニーカーを履いていて上着も来ていないが、短パンや水着でなければ大丈夫だと言われたので、そのままDr. HodgsonのオフィスのあるToxicologyの建物に寄って、3人で同窓会館のレストランに行きました。会員制になっていて、高級な雰囲気のレストランで、食事の値段も高いとのことでした。

ウェイトレスがテーブルに来てメニューが必要かバッフェにするかと訊かれたので、3人とも自分の好きなものを好きなだけ選べるバッフェにしました。先ずはサラダを取ってきて食べ、次はメインディッシュで肉や野菜やパンを食べ、最後はデザートのケーキとコーヒーで、3人でいろいろ会話をしながら美味しくいただきました。会計はここの会員になっているDr. Hodgsonが全部払ってくれました。

このところ旅行をしてきて運動不足なので、夕方はLake Johsonに行って景色を眺めながら1周歩いてきました。こちらの松の木の樹皮は、日本のクロマツに似ているものやアカマツに似て赤みがかっているものなどいろいろあるので、歩きながら何本かの松の木の樹皮の写真を撮りました。樹皮の厚さにも薄いものから厚いものまでいろいろありました。以前から気になっているのですが、松の樹皮の色や形や厚さなどは遺伝的に決まっているのか生育環境で変わるものなのか、いつか誰かに確かめてみたいと思っています。
多分ハリケーンの強風で倒れたと思われる大木がありましたが、垂直に伸びている直根がなく、根は浅い位置で水平に伸びているだけですので、風圧に弱いのでしょう。しかし、倒木の株元の土からは実生のOak Treeの稚樹が生えていましたので、こうして世代交代して森が維持されていくのでしょう。
モーテルに帰ってシャワーを浴びたらお腹がすいた気がして、近くのWalmartの惣菜売り場でフライドチキンとオクラの揚げ物とコーンを買ってきて、オレンジジュースとミルクを飲みながら食べました。

夜寝ていたら夜中の2時近くに携帯がなったので、またいつもの市橋君の支援活動以来ストーカー行為を続けている女性の非通知設定の電話かと思ったら、緑の安全推進協会の担当者からの12月と1月に合わせて4回私がすることになっている講演の原稿の催促でした。すっかり忘れてしまっていました。アメリカ滞在中でこちらは真夜中なので、メールで連絡し直して下さいとお願いしました。








2014年10月29日水曜日

Goldsboroという車で1時間半ぐらいの距離のところにあるNorth Carolina Forest Serviceというのは、North Carolina Department of Agriculture and Consumer Servicesという州政府の中の出先機関で、Hardwood(樫など)とSoftwood(松など)の苗生産をして、販売をしているところです。電話で午後1時半頃行くと予約しましたので、早めにモーテルに来てくれたMargieさんとお寿司屋の「すしつね」に寄って昼食を食べてから出かけました。

松を担当しているBobby W. Smith, II氏が待っていてくれて、Margieさんが車の中で時間を過ごしてくれている間、敷地内のいろいろな施設や圃場を案内して見せてくれました。業者に委託して松かさを採取して搬入してもらう他に、松かさを生産する松の成木の圃場(花を咲かせて実を採るので果樹園と呼ぶのだそうです)がありました。近親交配を避けるためか、20ファミリー(株?、系統?)以上の松の木が植えてあるそうです。十分に花を咲かせるには、少なくとも3サイド(方向)を開けて太陽が当たるようにする必要があるのだそうです。

松かさから振動によって種子を落として篩い分けして採取する装置や、それをさらに夾雑物を選別除去して種子だけにし、種子から羽の部分を除去する装置など、ほとんどの工程が機械化されていました。プロセシングと呼んでいましたが、松の種類によって発根・発芽を促進させる温度・湿度処理条件などが違うらしく、それぞれに適した処理をして苗生産をしていました。種子を採取した後の松かさを入れるダンボール箱もたくさん置いてありました。松かさをどうするのかと訊いたら、デコレーション用に売るのだそうです。大きな松かさは飾りになるし、松のいい匂いがするので室内でほのかな松林の匂いを楽しむために置く人もいるのだそうです。
松の苗だけで年間約800万本生産・有料配布しているそうで、しかもそういう施設が州内に複数あるとのことで、規模の大きさに驚きました。それだけ州政府が森林の造成・維持に力を入れているということでしょう。日本では松の苗の生産は林野庁が担っているのか、都道府県が担っているのか、民間が担っているのか私にはわかりませんが、アメリカの行政の力の入れ方はすごいという印象を受けました。
日本では松の苗の値段はどれくらいかと訊かれたので、小さい苗だと1本15セント(=15円)くらいかなと言ったら、アメリカの3倍くらい高いと言っていましたので、こちらでは1本5セント(=5円)くらいなのかもしれません。

私が日本の松枯れの状況を説明し、マツノザイセンチュウに抵抗性の松の種子を小規模試験目的で購入したいと伝えたら、とりあえず4種類をそれぞれ数百粒ずつ無料で分けてくれました。松の種子の日本への持ち込みは植物検疫が不必要とのことですので、日本に帰国したらこれらの種子から苗を育て、マツノザイセンチュウを接種して抵抗性かどうか確認し、それから海岸の砂や山の土で試験的に育ててみて日本の環境でよく生育できるかどうかを確認してみたいと思っています。いいものが見つかれば、千葉県の平砂浦のように松くい虫被害で消滅した砂防林をアメリカの松で再生できればと考えています。外来種を植えることに対していろいろな意見があるでしょうが、松くい虫防除のための殺虫剤散布から永久に解放されるとしたら大きなメリットがあると思うのですが・・。
マツノザイセンチュウの原産地であるアメリカにおける松くい虫の被害状況を少しだけですが調査できたことと、松の種子を入手できたことは今回のアメリカ滞在の大きな収穫だったと思っています。これでもう先日Lake Johnsonの大きな松の木の下で拾ってきたコップ一杯の松の種子は必要がなくなったので捨てることができます。

N.C. Forest Serviceは周りを森に囲まれているので、苗木を鹿に食害されないように電気柵で守っているとのことでした。敷地内をBobbyさんの車で回っていたら、目の前を大きなリスか小さなキツネくらいの大きさの動物が横切りました。Fox Squirrel(キツネリス?)といって、普通のリスはこちらではそこら中でよく見かけますが、1日に1回くらいしか見かけない珍しいリスの一種だそうです。