2015年5月31日日曜日

市内のホームセンターに行ってコンクリートブロックを計30個買ってきて、昨日と今日の午前中にマツの苗を植えた圃場の囲いを作る作業をしましたが、2時間ぐらいで止めました。記録的な暑さということもありましたので、熱中症にならないように用心しました。

当間高原リゾートのブユ問題は、水路が清流だということと裏腹の関係ですから、どう解決するかは難問です。ポポラの自然観察教室では、動植物や微生物をできるだけ自然に保って多様性を維持したい一方で、ゴルフ場の利用者や森林や水辺の散策者がブユや蚊の刺咬被害に悩まされるのは防ぎたい、という矛盾した要求があるからです。
水路にコルゲート管を設置して水の一部を流してブユの幼虫の生息場所を少なくするというのは苦肉の策でしょうが、ブユは水路の残りの部分に産卵するでしょうから、成虫発生の抑制効果はあまりないような気がします。水路に蓋をして全部暗渠(あんきょ)にしてしまえば、ブユは生息できないかもしれませんが、他の水生生物も生息できなくなって自然ではなくなります。
やはり、水路にBTiやIGRを上手に投与して、他の水生生物にできるだけ影響がないようにブユや蚊の幼虫・蛹だけを防除するのが一番よい対策かもしれません。



 
 
 


 






 
 

2015年5月30日土曜日

500ha以上という広大な面積の当間(あてま)高原リゾートのブユ対策について、必要な情報を収集しながらずっと考えています。昔、畜舎におけるハエ類対策に長年関わってきた経験が役に立っています。10万羽以上飼養している高床式鶏舎の場合は、ウィンドレス(窓なし)でもオープン(窓あり)でも、床下には大量の鶏糞が堆積していて無限の発生源(ウィンドレスの場合はイエバエが主発生種、オープンの場合はヒメイエバエが主発生種)になりますので、いくら羽化してくる成虫を殺虫剤散布で防除しても、経済的に防除仕切れません。特にヒメイエバエの場合は、軒下や木立の間を群舞しながら移動分散していって、周辺地域の家屋内に浸入して大変不衛生な環境問題を起こします。薬剤散布は即効的に現存する成虫密度を落としますが、残効性がありませんので、毎日新たに羽化してくる新成虫に対しては無力です。従って、殺虫剤に砂糖を混ぜたベイト剤を壁に塗ったり、誘引効果のある色素やフェロモンを混ぜて粒状にして施用して持続的に防除効果を発揮させると同時に、発生源対策として堆積している鶏糞にIGR(Insect Growth Regulator 昆虫成長制御剤)を施用して、幼虫・蛹の段階での羽化阻害と組み合わせて防除します。IGRの施用も、鶏糞が大量に堆積してからでは手遅れになりますので、鶏舎の鶏を入れ替えた初期の段階でしっかり防除をすることが大量発生を防ぐポイントになります。

当間高原リゾートの場合は、リゾート内を流れている水路と、リゾートの敷地外を流れている水路から羽化したブユ成虫が飛来してきて広大な芝生や叢(くさむら)や藪(やぶ)に潜伏して、近くにきたヒトを刺咬しますので、成虫を目標に殺虫剤を散布して密度を下げるのは困難です。従って、発生源対策として水路に生息するブユの幼虫・蛹を羽化させないことが最も効率的な防除対策になる筈です。ブユは水質のきれいな清流に発生しますので、家庭排水のような汚水(洗剤を含む)を流せば発生を抑えられるかもしれませんが、清流をわざわざ汚すことは避けたいところです。
ブユというのは分類的にはDiptera ハエ目(双翅目)ですので、IGRとしては、キチン合成阻害剤のジフルベンズーロンやシロマジンの類と、ピリプロキシフェンのような幼若ホルモンの類があります。その他に、BT(Bacillus thuringiensis)という枯草菌の一種で昆虫病原性のバクテリアが殺虫剤として使われていますが、その中には、Lepidoptera ちょう目(鱗翅目)に対して活性の高いBTk(kurstaki)と、Coleoptera 甲虫目(鞘翅目)に対して活性の高いBTa(aizawai)と、Diptera ハエ目(双翅目)に対して活性の高いBTi(israelensis)という菌株(セロタイプ)がありますので、BTiはブユの幼虫対策に使える可能性があります。

当間高原リゾート内の水路には2系統があって、1つ目は当間山を水源として流れてきた水を溜める上流に位置する調整池と下流に位置する調整池とを結んでゴルフ場の中を流れている水路で、下流の調整池の出口ではヤシガラ炭を吸着剤とした農薬除去装置が設置してあり、そこを通して地域水田の用水として使われています。出口の水は年に2回環境監視委員会の立ち会いの下にサンプリングして水質検査が行われていますが、農薬濃度はほとんどが検出限界未満か、検出されても基準値よりはるかに低い濃度です。2つ目は井戸水を汲みあげて水源として流してホタルを発生させている水路です。1つ目の水路では、IGRとBTiの両方が使えますが、2つ目の水路はホタルの幼虫とその餌になるカワニナという貝に影響のないものに限られますので、BTiの非標的水生生物に対する影響に関する情報が必要です。

WHOのEnvironmental Health Criteria 217の「Microbial Pest Control Agent BACILLUS THURINGIENSIS」という報告書(1999)
http://www.who.int/ipcs/publications/ehc/en/EHC217.PDF の中に、BTiはColeoptera(甲虫目)には影響がないと記載されていて、その根拠として Mulla (1988)の論文が引用されています。ホタルは、分類的にはColeopteraに属します。
Mulla の論文は、Activity, Field Efficacy, and Use of Bacillus thuringiensis israelensis against Mosquitoes というタイトルで、 Rutgers大学が出版した単行本の中の1章ですが、http://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-94-011-5967-8_9 を通して、電子版を購入できました。これを見ると、実際の試験で使った甲虫目というのは、Diving beetles ゲンゴロウのようです。同じ甲虫目と言っても、ゲンゴロウとホタルでBTi感受性が同じ程度かどうかちょっと気になります。

もう1つの総説 Lacey and Merritt (2003):The safety of bacterial microbial agents used for black fly and mosquito control in aquatic environments. Progress in Biological Control (1):151-168 http://link.springer.com/chapter/10.1007/978-94-017-1441-9_8 も電子版が購入できますが、BTiは防除対象の蚊やブユ以外の各種水生生物(魚類を含む)に対して影響がないと述べられています。ちょっと気になったのは、南アフリカでブユ防除でBTiとテメフォス(有機リン殺虫剤)を繰り返し投入したところ、マキガイの一種 Burnupia sp. の密度が減少したという少数事例が紹介されていたことです。ホタルの幼虫の餌はカワニナという貝ですから、もしBTiによってカワニナの密度が減少すれば、ホタルの発生数も影響を受ける可能性があるかもしれません。投与されたBTiの濃度や回数や間隔など、詳しい条件をみなければ何とも言えません。

いずれにしても、できるだけ情報を収集し、実際に水槽内試験なり小規模現地試験なりを実施した上で、しっかりした総合的なブヨ対策を提案したいと思っています。

2015年5月29日金曜日

今日も午前中に2時間ほどマツの苗を植えた圃場の草取りをしました。これで一通りは終わりましたので、近いうちに境界の木の枠がなくなったところにコンクリートのブロックを並べて、周りから葛(くず)が入り込まないようにするつもりです。
6月10日頃に松くい虫防除で使われる6種類の殺虫剤製剤を散布しようと思っていますが、その内の5種類を販売している会社の担当者に試験計画書を添付して試験薬剤として提供してもらえないか打診のメールを打ったら、すぐOKの返事が届きました。残り1種類の殺虫剤製剤は別の会社が販売していますので、そちらにも試験薬剤として提供してもらえないか打診してみようと思っています。

新潟県十日町市の当間(あてま)高原リゾートのブユ防除方法について、東京電力の担当者に私の試験計画について提案書をメールで送りました。うまくいけば、地域全体のブユ対策としても役に立つ筈です。場合によっては、樹木医のA氏と私で試験を実施するために再度何回か訪問することになるかもしれません。

当間高原リゾートは500ha以上という広大な面積ですので、実にいろいろな植物があり、いくつかにはポポラのスタッフが付けたラベルがあるので名前を覚えるのに便利です。









2015年5月28日木曜日

マツ苗を植えた圃場の草取りをしましたが、約2時間作業をしたら汗びっしょりで疲れてしまいましたので、残りは明日することにしました。体がなまっているのか、年齢のせいか、体力がこんなにもなくなって情けない限りです。

当間高原リゾートのブユが発生する水路に投入したいBTiの非標的生物に対する影響について問い合わせておいたら、早速WHOの文献が届きました。
http://www.who.int/ipcs/publications/ehc/en/EHC217.PDF
51ページの表12に、BTiはColeoptera(甲虫目)には影響がないとする根拠の一つとして、Mulla MS(1988)の研究が引用されていました。タイトルを見ると、mosquitoes(蚊類)とblackflies(ブユ類)のバクテリヤによる防除となっていますので、是非
この文献を何とか取り寄せてチェックしてみたいものです。
ホタルの発生する水路がブユの発生源にもなっているとすれば、ホタルの幼虫とその餌のカワニナに影響のない防除方法を考えなければなりません。

妻の小麦粉を使ったワラビのあく抜きはうまくいって、細切りのニンジンと油揚げとワラビと一緒の煮物を料理してくれました。ワラビの苦みは全く残っていませんでした。先日柏の農家を訪ねた時に根芋(サトイモの白い茎)をたくさんいただいたので、酢の物にして夕食に付けてくれています。タラの芽やワラビや根芋や、日本には面白い食文化が残っています。

2015年5月27日水曜日

新潟県の当間高原リゾート施設の水路に発生する吸血性ブユの幼虫対策として、衛生害虫防除の専門家から私の知らなかった情報提供がありました。幼虫対策剤のピリプロキシフェンは元々昆虫体内で脱皮変態が起こる時に発現する幼若ホルモンと類似の作用をする物質ですから、いわゆる殺虫剤とは違いますが、ブユ以外の水生昆虫にも影響する可能性があります。それに対して、ブユを含めたハエ類に特異的に高い活性を示すBT菌(Bacillus thuringiensis israelensis)が製剤化されて、市販されているということがわかりました。ネットで調べてみたら、BT菌だけを含む製剤も、BT菌とピリプロキシフェンの両方を含む混合剤も、ピリプロキシフェンだけを含む製剤もありました。BT菌はおそらくホタルの幼虫にはほとんど影響しないのではと想像されますが、今から水槽内や野外での試験事例がないか情報収集した上で、現地試験に使えないか考えてみようと思っています。

まだ昨日、一昨日の旅行の疲れが少し残っていましたので、今日は軽く1時間ほどウォーキングして運動してきました。
昨日朝どりのアスパラガスと、自生していたタラの芽とワラビをおみやげにもらってきましたが、妻が早速アスパラガスとタラの芽を料理してくれました。ワラビはあく抜きするのに灰がないので、重曹を使ってみましたが強い苦みが残ったままでうまくいかなかったようです。

2015年5月26日火曜日

朝7時にホテル内のレストランで朝食後、再度昨日見れきれなかった場所を回って現地視察しました。
ここのリゾートにはポポラ http://www.belnatio.com/nature/ という名称の自然観察教室が併設されていて、森のホールの他に水辺のホールという有名な建築家の安藤忠雄氏設計の施設が野外ビオトープの横に設置されています。この建物内にはビオトープ観察室や野鳥観察窓があって、子供たち(大人も)にとっては貴重な勉強のできる場所です。水のホールの外廊下にきれいな小鳥が落ちていました。ガラス窓に激突して死んだキビタキ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD のようでした。こういう豊かな自然に囲まれた場所に建てる施設には、紫外線カットのフィルムや塗料を窓ガラスに処理することが効果があるかどうかわかりませんが、野鳥が窓ガラスを空と勘違いして激突死するのを防ぐ工夫がほしいものです。

帰りは予定より少し早めに越後湯沢駅まで送ってもらいましたので、ロープウェイに乗って山頂に行き、周辺全体の景色を眺めました。山頂にはまだ雪が残っていました。山頂に足湯の施設があったのは、何もここまできて足湯に浸からなくてもという気がしましたし、街中のマクドナルドハンバーガーレストランにあるのと同じような派手な色彩の子供の遊具があるのも場違いな感じがしましたが、多様な観光客を集めるための手段なのでしょう。
私にとっては雄大な周りの景色を眺めて、新鮮な空気を吸うだけで、十分満足でした。山頂にはりっぱなブナの大木も保存してありました。










 









 
当間高原リゾートのブユの発生源は、リゾートの上端にある見晴らしの池(当間山とその下に広がるブナ林が水源)から何か所かに設置してあるゴルフ場の調整池を結ぶ人工の水路(クリーク)のようでした。これらの水路は最下端の調整池に入り、そこから下に位置する周辺地域の水田の用水として利用されています。
その他に、井戸水を汲みあげて水源とした別系統の水路でゲンジボタルとヘイケボタルを発生させているビオトープもありました。
ゴルフ場の中を流れる水路は調整池と調整池の間の水路ですから自然の清流とは違いますが、水質がきれいになったせいかブユの発生源になっていて、水中の小石をひっくり返すと水生昆虫の幼虫と思われる幼虫がびっしり付着していました。もしかしたらブユではないかもしれませんので、今写真を専門家に送って同定してもらっています(返事のメールが届き、やはりブユの幼虫だとのことでした)。水中にはトウキョウダルマガエルと模様の似たカエルや、サンショウウオと思われるコイル状の卵塊 http://xto.be/life/egg.htm も見られました。以前の私たちの助言に従って、水路の周囲には殺虫剤を練りこんだ1mの高さのネット(タフガード) http://www.sumika-env-sci.jp/products/env/env-insecticide/net/117614.html が設置してありました。羽化してきたブユの成虫がここに留まった時に防除できないかという発想です。このネットには合成ピレスロイドのパーメスリンが練りこんであって、留まった害虫の手足が接触することで防除できる筈です。何種類かの昆虫が留まっていましたが、野外では中毒・致死した昆虫は風で飛ばされてしまいますので、ブユの成虫の防除に効果があったかどうかは判断できませんでした。
リゾートの管理者は自主的にモスキートマグネット http://www.yanase-sanki.co.jp/mosquito/usage/ と呼ばれるアメリカの会社が製造した蚊の捕集装置を、ネットを設置した近くに設置してありました。プロパンガスボンベを接続して装置の中で燃焼させることで炭酸ガス(吸血性昆虫に対して誘因効果あり)を発生させ、さらにオクテノール(これも昆虫に誘因効果あり)を徐放性にしたスティックを設置して、蚊やブユを装置の中のネットに誘因捕獲する原理のようです。ネットの中には多数の蚊類、ハエ類の微小昆虫が捕獲されていましたが、ブユ類がどれだけ入っているかは詳しく調べてみないとわかりませんでした。
結局、調整池の水質がきれいになったので、その間の水路が自然の清流のようになってブユの発生源になってリゾートを訪れるヒトに刺咬被害をもたらせているのですから、(1)羽化してきた成虫を殺虫剤散布で密度を低下させるか、(2)タフガードのようなネットで水路を全部カバーして(降雪時期には撤去する)羽化した成虫が空間に出てくるのを防ぐか、(3)幼若ホルモン様物質(例えばピリプロキシフェン)やキチン合成阻害剤(例えばジフルベンズーロン)を水路に投入して幼虫を防除するか、あるいは(4)上流の調整池に泥水や家庭排水(洗剤を含む)のような汚水を投下して水質をわざと悪くして清流を好むブユが水路に発生しないようにするかしかないような気がします。あるいは、(5)コウモリやトンボを多数発生させてブユの成虫を捕食させることも一案ですが、行動時間が一致しないと効果は低い可能性があります。(6)ブユの成虫がどの波長の光に誘因されるか知られていれば、電撃殺虫器か粘着シートと組み合わせて密度を減少させる方法も考えられます。(7)大規模養鶏場などでヒメイエバエや吸血性のニワトリヌカカの防除に使われている大型で長期間持続型の液体蚊取りを水路から発生したブユの成虫が潜みそうな叢(くさむら)や藪(やぶ)の中に設置して、成虫密度を低げることも考えられます。
(1)の方法は、リゾート内のブユが発生して成虫が潜む可能性がある場所は広範囲にわたっているので作業が大変だということと、ブユの発生は春から秋にかけて長期間にわたるので刺咬被害を防ぐには頻繁な散布を行わなければならないという問題があります。(2)の方法は一番クリーンで環境にやさしいように見えますが、水路を利用する他の生物も水路に近づけなくするという問題があります。(3)の方法は、これらのIGR(Insect Growth Regukator)(昆虫成長制御剤)は、水路のブユ以外の生物にも影響する可能性があるという問題が考えられます。(4)の方法は、一番手っ取り早く、殺虫剤を使わないので環境監視委員会(リゾート建設時に地元住民との間で設置が合意され義務化された)の中の農薬使用に否定的な委員に批判されないかもしれませんが、清流をわざわざ汚染することが果たしてよいことかいう疑問が残ります。(5)の方法はコウモリは主に夜活動し、トンボは主に昼活動するのに対して、ブユの成虫はその時間帯には叢(くさむら)に潜んでいて、薄暗い時間帯に一番活動するようですので、どれくらい効果があるか不明です。(6)の方法は、ブユに走光性があるかどうか調べてみないと使えるかどうかわかりません。(7)の方法は、野外の広範囲な水路沿いに電源があるかどうかと、雨天の場合の対策が必要なことと、オープンな野外空間でブユ成虫に対して致死濃度が得られるかどうかという問題があります。
どの方法が最も防除効果が高く、安全で、経済的で、かつ環境監視委員会の了承が得られて実行可能かどうかは、現地でブユの密度(幼虫、成虫とも)をモニタリングしなから試験をしてみなければ判断できないような気がします。
もう一つの問題は、リゾートに近接した区域外にも水路があって、そこも発生源になってリゾート内での刺咬被害の原因になっている可能性がありますが、成虫が飛来・移動する距離がどれくらいか、ブユの行動習性を研究している人に確かめる必要があります。車で通過する道路沿いの林で作業をしている人たちは、皆頭からすっぽり被る防虫ネットを着用していましたので、ブユの被害は地域全体の一種の風土病のような問題なのかもしれません。