2016年9月30日金曜日

樹木医会茨城県支部の人たちを中心に、取手市高源寺境内にある地蔵ケヤキの樹勢診断をするために朝10時に集まりました。http://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/bunkazai/ken/tennen/14-9/14-9.html
講師の元静岡大学教授の伊藤忠夫先生(森林立地学)と国立研究開発法人森林総合研究所森林昆虫研究領域チーム長の北島 博博士(広葉樹害虫担当)と、見学のために参加した私を含めて11人が午後4時まで土壌の固さ調査や、地層断面の土性や根の分布調査をしました。
このケヤキは樹齢約1,600年(聖徳大使の前)と言われ、高源寺はそれから約500年後に創建された禅寺とのことでした。境内には千葉県の自然文化遺産に指定されている地蔵ケヤキの他に、取手市の保存樹として指定されているカヤの大木やスダジイの大木などもありました。境内にある供養塔もちょっと見ると寛文5年(1666年)建立とか安永5年(1776年)建立と刻んでありますので、相当古い由緒あるお寺のようです。

普通ケヤキの樹形は太い幹が空に向かって堂々と立っている印象を持っていましたが、地蔵ケヤキの幹の地面に近い部位は癭(こぶ)にようにゴツゴツしていて、大きな洞になっていました。案内板によると、主幹部は大火の時に焼けたとありますので、その後根株から発生した萌芽が癒合して今のような樹形になったのかもしれません。
一見して異常だったのは葉の大きさが小さいということと、今の時期にしては枯葉が多いということでした。これは、北島博士の診断で、葉は最近あちこちで大発生して問題になているヤノナミガタチビタマムシという害虫の成虫による食害(葉縁部が食べられて欠落している)と幼虫による食害(葉肉内に潜って食べるので褐色部分として残っている)が起こっているということでした。実際に、本堂の裏にある比較的健全なケヤキの大木の葉にも同様な食害痕があり、幹の樹皮下には越冬準備中と思われる成虫が多数存在しました。

枝先には害虫による食害痕のない枯葉も多数存在し、これは根からの水分吸収が不十分なための萎凋の可能性があるというのが伊藤先生の診断でした。伊藤先生は、東京都の影向(ようごう)の松が衰弱した時に対策チームを指導して見事に樹勢回復に成功した実績を持っている方です。伊藤先生の指導で、地蔵ケヤキの周りの地面の固さを測定し、固い所と柔らかい所(以前、土壌改良材としてバーク堆肥と牛糞堆肥を入れたところ)の2ケ所を掘って地層断面の観察調査をしました。
地蔵ケヤキの周囲は今は垣根で囲って立ち入り禁止にしていますが、以前は参拝者自由に歩いたり駐車場にしたりしていたそうで、固い所の地層は地下50cmまで土壌が固化していて、酸素不足が推察され、根の分布も非常に僅かでした。一方土壌改良剤を入れて所は1m地下まで柔らかく、多数の根が分布していました。
また、根自体も固い所に分布している根は細根が少なく、切り出した一部の根には菌類が侵入して腐朽が見られました。それに対して、柔らかい所に分布している根は細根が多く、健全な状態でした。

これらの調査結果から、今後この地蔵ケヤキの樹勢を回復するには、周囲の固い地層の土を掘って土壌改良剤(ピートモスと木炭粉と緩効性堆肥など)を入れることと、できたらヤノナミガタチビタマムシの防除が有効だろうということになりました。一つの問題は、ケヤキのヤノナミガタチビタマムシに対して農薬登録のある殺虫剤がないということです。防除効果のある殺虫剤はたくさんある筈ですが、農薬取締法の一部改正以来、無登録農薬の使用は禁止になりましたので、地蔵ケヤキのような県の自然文化遺産に指定されている銘木に無登録農薬を散布することはできないということです。法律改正は、海外から直輸入された無登録農薬を食用作物に使用することを禁止するのが主眼だった筈ですが、ケヤキ以外の樹木の害虫防除に登録があってもケヤキに登録がなければ法律違反になるという硬直化した解釈がされていることが問題です。この点については、一度農薬取締法を所管している農林水産省に問題提起をする必要がありそうです。





























2016年9月29日木曜日

今日(2016.9.29)の朝日新聞朝刊に、私の胸を打つ記事が載っていました。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12582394.html?_requesturl=articles%2FDA3S12582394.html&rm=150
「責めるより寄り添う 遺族 受刑者らに語る会」という見出しでした。3人の女性(いずれも身内を殺された被害者遺族)が、加害者の身内との出会いを通して、実は加害者にも誰か話しかけたり寄り添う人がいれば犯罪に追い込まれなくてすんだかもしれないという思いに至ったようです。「人の痛みを感じる人間になってほしい」という思いが、「遺族 受刑者らに語る会」の立ち上げにつながったようです。
被害者(特に大切な身内を殺された)にとっては、加害者は仕返しに殺したいぐらい憎たらしい相手の筈ですが、逆に寄り添うことで「人の痛みを感じる人間」に変えようという活動は、まるでキリストや親鸞聖人のような宗教者のようです。

第3回世界若者農業サミット(2017年10月9~13日にベルギーのブリュッセルで開催)の案内がインターネットで公表されました。
http://www.bayer.jp/newsfile/news/news-410_j.html
第2回は2015年8月24~28日にオーストラリアのキャンベラで開催されましたが、私は日本の代表2名の選考会に委員の一人として参加しました。選ばれた2名(永澤拓也君と高尾育穂さん)は貴重な経験をすることができ、一生の財産になった筈です。
今回も多くの若者が奮って応募することを期待しています。応募期間は2017年1月13日までのようですが、与えられた課題について英語の小論文の提出が求められています。
この催しはバイエル社クロップサイエンス部門(農薬部門)の企画ですが、1企業の利害を越えて、世界から選ばれる100人の若者(18~25才)に旅費と滞在費を支給して、世界の食糧問題について意見を出し合い、交流する機会を与える素晴らしい企画です。

午後からウォーキング/ジョギングで水元公園Cブロックに行って1時間20分運動してきましたが、ジョギングの時間を少し長くして負荷を増やしました。

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【第3回世界若者農業サミットの募集要項】
◇開催日程:2017年10月9日から13日(5日間)
◇場 所:ベルギー ブリュッセル市
◇費 用:旅費および滞在費はバイエル が負担
◇応募資格:① 農業、食糧安全保障、環境スチュワードシップ、世界飢餓、バイオテクノロジー、農業経営、畜産に関心を持つ18歳から25歳までの若者
② 2013年、2015年の世界若者農業サミットに参加していないこと
③ 以下の国に居住していること
・アイルランド、イギリス、イタリア、ウクライナ、エストニア、オランダ、スウェーデン、スペイン、デンマーク、トルコ、ドイツ、ハンガリー、フランス、ベルギー、ポーランド、ラトビア、リトアニア、ロシア
・エチオピア、ガーナ、ケニア、ザンビア、ジンバブエ、ナイジェリア
・アメリカ、カナダ
・アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、パラグアイ、ブラジル、ボリビア、メキシコ、
・インド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、タイ、中華人民共和国、日本、フィリピン、ベトナム、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド
◇英語小論文 テーマ:① “Feeding a Hungry Planet”(地球レベルでの食糧安定供給について)というテーマで、自身の国(または都市、町、村落、地域社会など)に触れながら、「国連の持続可能な開発目標(UN Sustainable Development Goals:SDGs)」のどの目標が今後1~5年のうちに若者が最も影響を与えられるかについて、地域および世界規模という両視点から言及してください
② その目標に取り組みながら、100億人への食糧供給をサポートし、持続可能な国内および国際社会を築くためには、農業システムやフードチェーン、もしくは個人や地域社会の行動にどのような変化をもたらすべきか説明してください
◇書 式:英文で1500語(word)以内。以下の構成要素を加えること
① 冒頭に150語(word)程度で、選んだ地域および英語小論文の要旨を記載
② 食糧の安全保障に関するSDGsに与えられる影響
③ その問題が、より広く、グローバル社会に与える影響
④ 問題解決のためのソリューション
⑤ 世界若者農業サミットでどのようなことを話し合いたいか
◇応募方法:ポータルサイト(www.youthagsummit.com)の応募フォームから、必要事項を記入の上、プロフィール写真データと共に英語小論文をアップロードして提出してください
◇応募期限:2017年1月13日 23時59分(標準時間GMT)※日本時間1月14日(8時59分)
◇選考方法:書類選考後、バイエル クロップサイエンス株式会社にて英語によるプレゼンテーション・面接による最終選考会を経て日本代表2名を決定(遠隔地・海外の場合はスカイプによる参加も可)
◇結果発表:選考通過者への通知は、2017年3月31日に行われます
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2016年9月28日水曜日

「市橋達也君の更生を支援する会」の幹事のお一人からメールがあり、本日午後9:00からの日本テレビで市橋達也君の逃亡の様子が放送されると、知らせてくれました。新聞に載っている番組表を見たら、「衝撃ニュースを大追跡 調べてみたら驚いた!」という2時間の番組で、「整形・逃走2年半・・・市橋受刑者の足跡追う」という見出しが載っていました。
多分新しい情報はないだろうと想像しましたが、どういう取り上げ方がされるか興味がありましたので、9時にテレビをつけて待っていたら、10時近くになって市橋君の事件がでてきました。想像通り新しい情報はなかったと思いますが、一部で市橋君の心境を本の中の文章から想像してナレーションが構成されていました。
市橋君を、事件当時のメディアの扱いのように、「とんでもない犯罪を犯して反省もなく逃げ回っている医者の甘やかされて育った我儘息子」という決めつけ方はしていないように感じました。

千葉大学学生時代は前途有望ないい若者だった市橋君が、卒業後何故理性を失ったあんな馬鹿げた事件を起こしたのかということと、事件後何故正気を取り戻さずに2年半以上も逃げ回っていたのかということは、結局想像する以外誰にもいまだにわかっていないのだと思います。
本当はそこのところを深く掘り下げた番組ができれば、若者が将来同じ間違いを起こすことを少しでも減らすのに役に立つのでしょうが、番組プロデューサーも追加の情報がないのでどうしようもないのでしょう。

ある世界的な農薬企業の広報担当者(以前からの知人)から、ドイツで行われたあるミーティング(報道イベント)に参加するために乗ったバスの中で偶然私の事を知っている人と隣席になって、会話が弾んで私と一緒に写っている写真(多分スマホで)を見せられたとのお便りをいただきました。Crop Life Asia(アジア農薬工業会)の依頼で今年の8月にタイとインドネシアでジャーナリストを主対象の農薬ワークショップで私が講演をした時に、参加していたもう一人の外国人講演者だったDr. David Zarukのことだと思って当時の写真とスライドのタイトルページをメールに添付して返信しましたら、やはりそうでした。こんな偶然の出会いがあるのですから、世界は広いようで狭いなと感じました。

今日は散髪に行った後で、江戸川堤防右岸を上流に向かって2時間ウォーキング/ジョギングをしてきました。昨日、1月の館山若潮マラソンに参加申し込みをしましたので、今日から心を入れ替えてトレーニングの開始です。

 




2016年9月27日火曜日

第37回館山若潮マラソンは2017年1月29日(日)に、房総半島の南端に位置する館山市の市民運動場を出発点として海沿いの道(菜の花街道)を走ります。折り返し点からは風の影響を受けない山の中の道ですが、高低差がある道を帰ってくるコースです。http://www.tateyama-wakasio.jp/outline/
どうしようか迷いましたが、千葉大学走友会の仲間の私より2才年長のO先生からハーフマラソンを2時間ちょっとで走ってきて、さらに10月と11月にはフルマラソンにエントリーしているという報告が届きましたので、それに刺激されて42.195Km/70才以上の部にインターネットで参加申し込みをしました。参加費5,000円も払い込みましたので、もう後戻りできません。まだ3ケ月ちょっとありますので、今から真面目にトレーニングして、大会当日までには制限時間の6時間以内に完走できる体調にするつもりです。

千葉大学時代の私の研究室を卒業した水野耕一郎君は、卒業後しばらくはByQ便で働いていましたが、今は長野県下伊那郡松川町の実家でリンゴとナシを栽培する果樹園をやっています。http://www.mizunofarm.jp/
このところ毎年リンゴとナシを注文しますが、今日ナシの南水が届きました。こんな大きなナシがいくつもなったら枝が折れるのではないかと思われるほどりっぱなナシで、早速妻と一緒に1つ食べてみたら、歯ごたえもよく最高においしいナシでした。
サンふじというリンゴは収穫がもう少し後になるようですが、日本の果物の生産技術の高さはたいしたものです。
東京在住の姉(リンゴ)と息子と山梨県在住の義姉にも、お中元とお歳暮を兼ねて注文して贈っています。

2016年9月26日月曜日

上野駅9:14発の新幹線はやぶさに乗って、八戸駅には12:01に着きました。車窓から見た東北地方の水田はまだ稲刈りの途中でした。八戸駅構内の通路には、女子レスリングでオリンピック4連覇をした伊調 馨(かおる)選手の偉業を称える展示がありました。

駅前でレンタカーを借りて白浜漁港に向かいました。枯死進行中のマツの木があったのは、遊歩道に深久保漁港まで250m、白浜漁港まで250mという道理標識があった近くでしたので、白浜漁港から歩けば近いと思いました。実際には駐車をするのに適当な場所を見つけるのにウロウロして、結局目的の枯死進行中のマツの木の場所までたどり着けたのは午後2時過ぎでした。青森県が先に材片採取した跡が幹の1mより上方に複数ありました。
私は、手斧で軽く粗皮を剥いでから、地上約1mの高さの幹の周りから3ケ所、地際の地上3cmの幹の周りから3ケ所、土を除去して地面の下約3cmの幹の周りから2ケ所、1.5cm巾の歯をつけた電動ドリルで穴を開けて材片を採取しました。根からも材片を採取したいと思って、スコップを持っていかなかったので手斧で少し地面を掘ってみたのですが、このマツの木(胸高幹周り102cm、樹高10~15m)は元々斜面に立っていて幹は相当の深さが砂に埋まっていて、根まで到達できなかったので諦めました。また、枝は10mぐらいの高所にしかなく、手が届きませんでした。
従って、幹からだけ高さ別に3検体採取することで良しとしました。
これを一緒に研究をしている樹木医の阿部 豊氏に送って、ベールマン法で生きている線虫を分離し、線虫を検体としてDNA診断をしてマツノザイセンチュウが含まれているかどうか調べてもらうつもりです。

八戸市の白浜海岸には親子ずれで遊びに来たり、若いカップルが遊びにきたりしていました。海岸の岩山の上には漁港を見下ろすように何か石の像が立っていました。字は彫ってありませんでしたが、漁師の安全を祈願して建てた観音様のような印象を受けました。漁港の近くの畑にきれいな薄紫色の花が植えてあったので、ちょうど畑仕事をしていた奥さんに訊いてみたら、サフランという植物で、春には葉だけが出て(光合成をして球根を太らせる?)、秋には花だけが咲くのだそうです。

日帰りの短い旅行で、自宅に着いたのは午後9時頃になりましたが、気になっていた青森県の枯死進行中のマツの材片が採取できたので大満足でした。八戸駅で帰りの新幹線を待っている間に構内の本屋に立ち寄ってみたら、鈴木士郎・佐藤圭亮(編)「これでいいのか青森県-津軽 vs 南部で青森県は真っ二つ!?」(株式会社マイクロマガジン社、2014年発行)という本が目に入り、ページをめくってみたら面白そうでしたので1冊買いました。