ここには樹齢約300年のクロマツの老大木がまだ8本残っていますが、公園の縁(へり)の道路に接した部分の草が枯れているのがちょっと気になりました。市の委託で公園の管理をしている業者が除草剤を散布しているかもしれないからです。マツの老大木の株元の草もしっかり枯れていましたので、除草剤の種類によってはマツにも影響がでるかもしれませんので、今度市役所に確認してみようということになりました。
昨年6月に地元の造園業者がスミパイン乳剤を3回散布する作業を視察した結果、樹高約25mの樹幹部に薬液が届いていないことがわかりましたので、今年は散布方法を改善することが必要ということになり、吉岡君が1本の老大木に登ってスプリンクラーを2台設置してくれていました。試しに動力ポンプとホースを接続して水を散布してみたところ、1台は動きましたが、もう1台の方は動きませんでした。約25mの高さに水を送るには水圧で水漏れをしないようにホースの接続部分のウォッシャーを変える必要性など、いくつか問題があることがわかりました。それと、樹冠部の新梢には薬液がかかっても、下枝の新梢には十分量かからないという別の問題もあることがわかりました。
私は15mの高所作業車の作業箱に乗せてもらいましたが、風が強かったせいか作業箱自体がゆらゆら揺れて、多少足がすくみました。
今日の2番目の作業は、道路と反対側の縁に植栽してある樹齢20年の若いマツ2本(NO.18とNO.19)の枯死原因を調査することでした。伐採して、後食痕や、産卵口、フラス、穿入孔の有無などを丁寧に調べました。
昨年の9月に衰弱が見られて11月には枯死したNO.18には後食痕と産卵口とフラスが観察され、実際に多数のマツノマダラカミキリの蛹と幼虫が存在しましたが、今年の2月頃枯死したNO.19からはこれらは観察されませんでした。両方ともすでにDNA診断でマツノザイセンチュウ陽性であることは確認されています。従って、NO.18は近隣の枯死マツから羽化脱出して飛来したマツノマダラカミキリが後食して感染したことが推察されるのに対して、NO.19はいわゆる「年越し枯れ」で衰弱枯死した時にはマツノマダラカミキリはいない時期だったか、あるいはNO.18と隣接しているので根系癒合でマツノザイセンチュウが移動してきた可能性が推察されます。この点については、次回の調査でNO.18とNO.19の根系をエアースコップで掘って露出してみれば判断できるかもしれません。
なお、NO.18の樹皮を剥いでいる時に、マツノマダラカミキリの蛹室と思われる場所に真っ赤で毒々しいボクトウガの幼虫が見つかりました。マツノマダラカミキリの幼虫や蛹を捕食しているのかもしれません。
今日の3番目の作業として、枯死伐採したマツの根株の近くにシロアリトラップを設置し、さらにクロマツの苗木を2本植樹しました。枯死伐採したマツの根株はシロアリの餌になりますが、元気のよい生きているクロマツの苗木の根もシロアリの食害を受けるかどうか確認するためです。
さらに、4番目の作業として、甚兵衛の森の土壌の状態をチェックする方法の1つとして、2mの深さまで鉄パイプを打ち込んで土壌サンプルを深度別に採取しました。ジビリジル反応で酸素欠乏を示す還元状態になっているかどうかを簡易検定してみることが目的です。
http://www.hamc.or.jp/TOPTEST/06_dojodanmen.pdf#search=%27%E3%82%B8%E3%83%93%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%AB%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%9C%9F%E5%A3%8C%E8%A8%BA%E6%96%AD%27
甚兵衛の森のある場所は、ある時期は印旛沼の一部だった筈ですし、もっと前には海の底だった時代もある筈ですので、それぞれ色も組成も臭いも異なるサンプルが得られました。
今日の作業の5番目は、吉岡君の自宅の庭に設置した網室に昨年クロマツの大苗2鉢を設置し、クロカミキリ成虫を各120頭ずつ放飼しましたので、その影響を観察して確認することでした。DNA診断で苗Aはマツノザイセンチュウ陽性、苗Bは陰性だったことがわかっています。クロカミキリ成虫放飼前は両方とも陰性でした。
苗Aの新葉は緑色でしたが、あきらかに衰弱していて新梢も出ていませんでした。一方苗Bの新葉は褐色ですでに枯死状態でした。わずか2例で、次回の調査で根系の調査をしてみないと確かなことはわかりませんが、少なくともマツノマダラカミキリのいない状況下で、クロカミキリ成虫の放飼でマツ苗が衰弱・枯死し、その中の1本はマツノザイセンチュウ陽性になったということは事実ですので、クロカミキリ成虫がマツノザイセンチュウ感染を媒介したり、幼虫による根の食害が枯死に関与している可能性が推察されます。
次回は本当は5月に一度集まれればよかったのですが、皆の都合を合わせた結果、6月24日(土)か25日(日)に集まって調査をすることになりました。