2019年2月28日木曜日

千葉大学園芸学部では毎年定年退職する教授は2月の卒論・修論発表会が終わった時期に最終講義をするならわしですが、今年は千葉大学時代に私が教授をしていた生態制御化学研究室の後任として着任した中牟田 潔教授の最終講義があるという連絡がありましたので、私も聴講してきました。研究室の名前は化学生態学と変更になり、着任前に勤務していた森林総合研究所時代から取り組んでいたフェロモンに関する研究に従事したとのことでした。
森林総研時代に取り組んだスギを加害するスギノアカトラカミキリを雄が放出するフェロモンで雌を誘殺したところ、ほとんどが既交尾だったので防除には役に立たないことがわかったという話は、フェロモンによる害虫防除の難しさを示唆しました。
ヤナギやポプラを加害するヒメボクトウというチョウ目(鱗翅目)害虫のフェロモンについても研究していた時に、同じ害虫による被害がナシやリンゴのような果樹でも問題になったが、果樹には果樹研究所があるので森林総研では一切手が出せなかったという話は、典型的な縦割り行政の弊害の事例として面白いなと思いました。その点、大学に来てからは森林と果樹に共通の害虫については自由に研究できたのはよかったとのことでした。
大学での最終講義らしく、自分の研究業績の紹介だけでなく、フェロモンに関する基礎的な説明があったのは多分野の参加者にとってはよい勉強になりました。
最後にフェロモンによる害虫密度低減効果を実証した事例として徳島県のナシ園で実施した試験例の結果を紹介しました。
フェロモンによる害虫防除(管理)は、効果発現までに時間がかかることやコストが高いということや、日本の消費者は高品質の生産物を要求するという問題がありますので、普及するには相当な努力が必要だなという気がしました。
私は以前、フェロモンのディスペンサー(プラスチックのようなものにフェロモンを封入して枝に巻きつける)の環境汚染(ディスペンサーがいつまでも分解しないで環境中に残る)問題に関する農水省の研究プロジェクト(補助金)の評価委員をしたことがありますが、生分解性の材質のディスペンサーの試験が行われていました。確か、生分解性と有効成分の長期徐放性のバランスを適度に調節する試行錯誤が行われていたような記憶があります。










 

2019年2月27日水曜日

昨日の東京農業大学におけるシンポジウムの後の懇親会で顏を合わせた千葉大学園芸学部卒業生の篠原 卓(たかし)君と一緒に彼のスマホで撮った写真を送ってきてくれました。東京農業大学は教員・研究情報 http://dbs.nodai.ac.jp/html/141_ja.html を公表していますが、千葉大学園芸学部時代には作物学研究室を専攻して修士号を取得し、その後タイのカセツアート大学大学院熱帯農業研究科に留学して博士号を取得しています。千葉大学時代に修士課程に在籍して私の研究室を専攻していた謝 静さんという中国からの留学生の女性と結婚しました。彼女は現在東芝エレベーターという会社に勤務し、東芝若手NEXTという会長直轄のプロジェクトチームに抜擢されて活躍しているという嬉しいニュースも書いてありました。自分が指導に関わった元学生が社会で活躍するのは、教員冥利(みょうり)です。
篠原君自身も現在は東京農業大学国際食料情報学部国際食料農学科熱帯生物学分野の准教授として、エチオピアやジプチの農業に関わる研究に取り組んでいるようです。昨日のシンポジウムも総合研究所研究会沙漠緑化研究部会のメンバーとして主催者の一員だったようです。日本の研究者がこうしてアフリカの貧しい国々の食料生産問題を解決するために貢献しているのは、嬉しいことです。

 
午後からはいつものように江戸川堤防に行ってウォーキング/ジョギングを2時間ぐらいしてきました。園芸学部の生協前広場には第45回就職ガイダンスの看板が立っていました。
堤防下に建設中だったマンションはほぼ完成して入居者募集の受付を始めていました。
昨夜降雨があったせいか江戸川の水位が高くなって、いままで露出していた中州が水面に覆われて見えなくなっていました。
上葛飾橋の下のお花畑は、春にはレンゲ、秋にはコスモスが植栽されていましたが、レンゲは連作障害が起こったのでポピーに置き換えたけど、一部では試験的にレンゲの種を播種してあると掲示してありました。





2019年2月26日火曜日

東京農業大学世田谷キャンパスの横井講堂で「沙漠×ソーター、太陽・水・土の共生」というテーマのシンポジウムが開催され、私も聴講してきました。このシンポジウムは次の4組織の共催でした-総合研究所研究会の中の沙漠緑化部会とグローナル情報研究部会(GIA)、日本沙漠学会沙漠工学分科会、沙漠を緑にする会。
プログラムは:
・GIA部会長の立岩(たていわ)寿一教授による開会の挨拶
・講演1「ジプチの沙漠に緑を-SATREPSプロジェクトによる持続可能アグロパストラルシステムの実装-」島田沢彦(東京農業大学地域環境部生産環境工学科広域環境情報学研究室教授)
・講演2「モンゴルの過放牧による生態系と家畜への影響」吉原 佑(ゆう)(三重大学農学部資源循環科国際資源利用学研究室准教授)
・講演3「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の現状」鎌田知也(ともや)(農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室長)
・総合討論
・閉会の挨拶
・情報交換会

島田先生の講演は、私を含めてジプチというのはアフリカ大陸のどこにあるのかイメージできない参加者のために、先ずジプチというのはどこにあってどういう国なのかという説明から始めました。










吉原 佑准教授は生態学/畜産草地学が専門で、モンゴルでは1993年を境に社会主義から資本主義に変わったのを機会に市場経済に移行し、それが家畜の過放牧(主に山羊と羊)をもたらしたことを紹介しました。過放牧は植生への悪影響をもたらし、沙漠化のプロセスが始まったとのことでした。










鎌田知也室長は農水省の行政官で、所管している再生可能エネルギーの一環としてソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について夢のある講演をしました。植物には光飽和点というのがあって、植物によって異なるので、不必要な太陽光は発電に使うというアイデアです。従来は休耕地その他の地面にべた置きだったパネルを、栽培している作物の上の空間に一定の間隔を置いて設置することで、太陽光を栽培と発電の両方で使うという仕組みのようです。初期投資に1,000万~1,500万円ぐらいかかるようですが、全国各地で実施されている事例を紹介しました。









総合討論、閉会の挨拶に続いて懇親会がありましたので、私も顔を出しました。酒杯を交わしながら名刺交換をしたお一人の特定非営利活動法人世界環境改善連合の副理事長礒部則立氏は私より4才年長でしたが、埼玉県熊谷市在住で、孫二人が現在浦和高校生だということで急に親しくなりました。礒部氏自身は大学卒業後アサヒガラスに長年勤務してフッ素化学の分野で大きな貢献をされた方のようでした。今は、世界の環境改善のボランティア活動をされているようでした。こういう思わぬ出会いがあることが懇親会に顔を出すことの楽しみです。

 

帰りは小田急線の経堂駅までハートフル農大通りを歩きましたが、両側にびっしり商店が並んでいて、通る度にどこかの店が変わっています。



2019年2月25日月曜日

ノースカロライナ州立大学時代の恩師だった故W.C. Dauterman 教授 は63才で亡くなりましたが、その後奥様のBarbara さん、長男のWalter Jr.君(弁護士)も亡くなり、今は次男のJohn 君(医師)とその家族だけが残りました。John 君の奥さんのBonnieさん は聡明な女性で、時々家族の写真をFacebook にupします。今日は3人の息子たちを含めた家族全員が雪の中で写っている写真をupしました。John 君が産まれて間もない赤ん坊だった頃から知っていますので、こうして恩師の息子の家族の写真を見るのは楽しみです。John 君も多分50才ぐらいになった筈ですが、何となく目元の辺りが父親のDauterman 先生に似てきたような気がします。家族でスキーにでも行ったのでしょうか・・。


午後から今日も江戸川堤防を上流に向かって右岸を約2時間ウォーキング/ジョギングしてきました。江戸川の水位はまだ低くて、浅瀬でカラスが水浴びしていました。堤防から河川敷に下りる100mぐらいのスロープを5往復ジョグで上り下りしようと思っていましたが、わずか2往復で息が切れてしまい、それ以上続けると吐きそうな気がしたので止めました。情けない状態です。







町会の掲示板に松戸市が配布した老人の虐待防止のポスターが貼ってありました。最近は千葉県野田市の10才の女の子が父親の虐待を受けて、柏児童相談所が無責任な対応をして子供の命を守ってやれなかったことが大きな話題になりました。環境省が配布した動物の虐待は犯罪ですというポスターも見たことがあります。結局、弱い立場の者が虐待の対象になるということなのでしょう。人間の性(さが)は情けない限りです。


我が家の台所に妻がイトーヨーカドーの食料品売り場で買ってきたエノキダケの袋がありました。顔が見える商品として生産者の似顔絵とバーコードが印刷されていました。普通は、小さな農家が道の駅などで生産物を消費者に直接売る時に商品価値を高めるのに顔が見えることを利用してきたのでしょうが、イトーヨーカドーのような全国展開の巨大な流通会社も同じことをし始めたようです。ビジネスの競争ですから仕方がないのでしょうが、そんなことをしたら小さな農家はどうやって自分の生産物の差別化をして消費者に訴えたらいいのでしょうか。