2010年7月21日水曜日

 私は大学1年生だった49年前の教養課程の必修科目として「法学」の単位を履修したこと以外、日本の司法制度や裁判についてはほとんど何も知りませんが、市橋達也君の適正な裁判を支援する会を立ち上げて募金活動を始めてからは、裁判に関するニュースや新聞記事は気になるようになりました。今朝の朝日新聞の社会面に載っていた「映像別人」無罪求めるという記事も気になりました。盗難キャッシュカードを使ってコンビニの現金自動出入機で現金を引き出したとして、窃盗罪に問われた被告が、別人との鑑定結果が出たことなどを理由に、検察側が起訴した被告に無罪判決を求めたというものでした。

 検察官も弁護士も裁判官も皆難しい司法試験に合格して、さらに研修を受けた上で就任し、立場は違っても、事実を明らかにするという共通の使命感で頑張っていると信じていますが、時々、先日言及した足利事件のように冤罪が明らかになったり、今回のように自白を強要させて無実の人を犯人にしてしまうというような事件が実際にあると、検察官にも人間的ファクターがあって、思い込みで構築した自分たちの主張を無理やり通そうとする場合もあるということを認識させられます。もちろん、ほとんどの検察官はそうではなくて、証拠を一つ一つ綿密に検討して事件がどのように起こったかを再現するシナリオを組み立てて主張していくのでしょうが、それでも、人間ですから間違うことはあり得るということです。同じことは、弁護士にも裁判官にも言えるのかもしれませんが。

 市橋君の事件についても、検察側の主張と市橋君の証言に基づく弁護側の主張との間には開きがあるようですので、検察側も弁護側も面子を保つことよりも事実を明らかにするという基本を忘れずに整理手続に臨んでいただきたいと思っています。

 6月22日に農薬について取材に来られた大阪の朝日放送株式会社(ABCテレビ)から連絡があり、当初7月15日か22に放送予定だったニュース特報は諸般の事情により8月以降に延期になったとのことです。以前、輸入冷凍餃子の毒物混入事件についてTBSテレビの「みのもんた朝ズバ」という番組のスダジオ出演を依頼された時は、TBSのハイヤーが朝6時頃松戸に迎えに来てくれました。途中交通渋滞に巻き込まれて出演予定時間に間に合うかどうかヒヤヒヤしましたが、運転手さんに大きな事件がある度にこんなに朝早くからゲストを迎えに行くのは大変ですねと話しかけたら、スタジオでは大きな事件がない時の方がどうやって時間を埋めようかで大変なんですよと答えていました。

 輸入冷凍餃子事件といえば、日本法中毒学会第29年会が今週23日~24日に日本医科大学で開催されますが、千葉県警察本部科学捜査研究所の金子 毅化学科長が「中国製冷凍餃子からの毒性物質の検出(犯罪捜査における化学鑑定の役割)」という演題で招待講演をされることになっています。千葉大学医学部で私がこの問題について講義をした時に出席されて、以来協力関係にある方ですので、私はこの学会の会員ではありませんが、聴講にいくつもりです。農業関係でもそうですが、行政の研究機関の研究発表には政治的な検閲で制約(行政の方針に反するようなことは言えない)がありますが、科捜研の研究でその後どういうことが明らかになったか興味があります。