2010年8月14日土曜日

 今日はアメリカからのお客さんを上野の東京国立博物館と国立西洋美術館にお連れしました。博物館では、「誕生!中国文明」という特別展もやっていましたが、常設の「日本文明」「韓国文明」「西アジア文明」の展示や、「法隆寺の宝物」の展示も見ごたえがありました。何時間も歩いたので足が棒のようになりましたが、せっかくの機会なので欲張って美術館にも足を運びました。ここでも、よくもまあこれだけ集められたと感心するほどヨーロッパの古い絵画が展示してあり、美術をやる人にはたまらないだろうなと思いました。

 それから新宿に移動し、新宿住友ビル48階にある平和祈念展示資料館に行きました。ここは私自身が行ってみたかったところですが、広島の原爆ドームの続きとしてアメリカ人にも是非見てもらいたかったところです。広島と違って、パンフレット以外は日本語の説明しかなかったのはちょっと残念でした。戦争中に徴兵されて家族に見送られて海外の戦地に送られた若者の写真や、満州や朝鮮や台湾からの引き揚げの様子の写真や、シベリア抑留の写真や、当時の衣服や、列車や収容所の模型などもあり、涙なしには見られませんでした。特に朝鮮からの引き揚げ者が、小さい子供を背負ってソ連兵に見つからないように山道を何日も歩いて南北を分断した38度線を必死に越える写真には、まるで自分自身の姿を見るようでした。1945年の終戦当時3才だった私は、齢の離れた長姉や親戚縁者に負ぶわれて脱出し、もう少しで残留孤児になるところだったと聞かされていましたので、親や家族がどんなに苦労して私を守り育ててくれたかを思うと、心の底から感謝の気持ちが湧いてきました。
 引き揚げ船の中で、日本に到着する前に病死して水葬された夫に別れを告げるために海をじっと見ている妻と小さい子供の写真には、運命の残酷さを感じました。

 日本人が戦争中に海外の人達にした残虐な行為も忘れてはいけませんし、日本に連行されて強制労働させられた海外の人達がその後も政治に翻弄されていまだに中途半端な立場に置かれている現実もあります。結局、戦争が、普段は理性のある普通の人間を非人間(動物)に変えてしまうのでしょう。

 平和祈念展示資料館で見たものは、アメリカ人のお客さんにも、今まで片方の側からだけ見てきた(アメリカ政府の説明でそう見させられてきた)ことには別の面があるということを気付かせた筈です。戦争に勝ったとか負けたとかではなく、犠牲者が何人とかではなく、その一人一人に大切な家族がいたということ。