2010年10月3日日曜日

午前中に昔の空手の弟子のJohn and Maureen Burgess 夫妻を訪ねて、時間の経つのも忘れて2時間以上も旧交を温めてきました。夫婦とも59才で、ある時期に私の道場に通って空手の稽古をしていました。今は夫のJohn 君が前立腺がんの抗がん剤治療を受けていて、頭髪が一本もなく、痩せこけて見えましたが、強い精神力で今でも毎日稽古をして空手の型の試合に出ていると言っていました。奥さんのMaureen さんは素敵な女性で、州政府の環境関係の部署に勤務して生活を支えています。John 君はお母さん(井上みやこ、1928年9月22日生まれ)が日本人でお父さんはアメリカ人のハーフです。終戦後間もない時期に名古屋出身の当時17才だったお母さんとやはり17才でアメリカ軍兵士だったお父さんが恋愛、親(井上そういち・あさ)の反対を押し切って結婚し、John 君は1951年に生まれたとのこと。ちょっと前までは敵国だったアメリカ軍の兵士と結婚した娘は親(というよりも祖父)に勘当されたも同然で、John 君が2才の時にアメリカに帰還して以来、両親(すでに亡くなった)とも結局その後一度も日本を訪ねることはできなかったようです。今は外国人との間に生まれた子供はハーフと呼ばれますが、当時は「合いの子」と呼ばれて社会から冷たい目で見られていました。アメリカ領事館が発行した英語の出生証明書のコピーをもらいましたが、名古屋の住所が英語で書いてありますので、帰国したら探してみようと思っています。お母さんには兄弟姉妹が何人かいたとのことなので、もしかした従兄弟が見つかるかもしれません。

午後にはWashington D.C. のEPA(Environmental Protection Agency)勤務の友人Dr. P.V. Shah (インド出身)がモーテルに訪ねてきてくれました。明日からRTP (Research Triangle Park ) のEPA で2日間にわたって開かれる会議に出席するついでに寄ってくれました。Shah 博士とはノースカロライナ州立大学時代に机を並べていた研究者仲間ですが、今は農薬の毒性評価をするBranch Head をしています。EPA が約10年かけて作り上げた内分泌かく乱活性(いわゆる環境ホルモン活性)の試験方法について、CLA (Crop Life of Amarica) という農薬会社の協会との間で質疑応答の協議をする会議だそうです。
http://www.epa.gov/endo/
今から2年以内にEPA が要求している試験を実施してデータを出さなければ、リストアップされている農薬の有効成分や製剤に含まれるその他の成分は登録が取り消されるので、農薬会社の方も真剣です。一つの農薬についてだけでも要求されている試験をするのに何十億円もの費用がかかります。アメリカの良いところは、行政が決めた規則を一方的に押し付けるのではなく、企業との間で徹底的に協議をして、新たな試験をする必要がないという科学的な根拠を提出してそれが妥当と判断されれば、試験が免除されることもあり得るということです。つまり、全員問答無用で必要のない試験をさせるような無駄なことはしないということです。

夕方には、Shah 博士と、昔千葉大学園芸学部の古在豊樹教授の研究室に滞在していたことのあるインド出身のDr. Subhas Mohapatra (10年前にノースカロライナ州立大学を早期退職し、今は3.5エーカー(4千3百坪=1.42ヘクタール)の研究農場で土を使わない農業の実証研究をしている)と3人で、インド料理店に行きました。スパイスがたっぷり効いたマトン肉のカレーをライスと混ぜたり、ナン(パン)に付けたりして食べました。スパイスが効いて顔がほてりましたが、インドの人達はこんなにおいしいものを食べているのかと思いました。
Mohapatra博士の言う「土なし農業(Soil-less Agriculture) 」というのは、日本で言う水耕栽培とは違って、プラスチックシートの上に砂の層を作り、その上に枯れ枝や枯葉をチップにしたもの(無料で入手できる産業廃棄物)を重ね、栄養液をドリップ潅水するという栽培方法です。しばらくすると、ミミズが入ってきてチップを堆肥化するとのこと。背が低い野菜や花だけでなく、根が水平に広く張るので高さ3mくらいの木でも自らを支えられるという方法です。毎年インドに3ケ月くらい出かけてこの農法を指導・普及しているそうですが、土なしで食料生産ができるので、途上国の飢餓問題解決に貢献するのだと、熱っぽく語っていました。