2010年11月19日金曜日

11月16日に振り込まれた5回目の方ともう一人の方の支援金が届きました。これで支援金の現在高は87,000円、延べ187人からの合計額は2,363,565円になりました。ありがとうございました。お一人からはメッセージも手書きされていました。「私は82才です。市橋君と同じ年の孫がいます。ただ普通の生活をしていた青年が、リンゼイさんが来たために人生が狂ってしまいました。・・・・、気の毒でなりません。少しでも軽い刑を願います。」

市橋君の人生が狂ってしまったのは事実ですが、何故そういうことになってしまったのか、いろいろな想像は可能ですが、第3者には事件の真相はいまだに不明のままではないでしょうか。裁判でどこまで真相が明らかにされるかわかりませんが、強姦が行われたということと(市橋君自身がそれを認めているようですので)リンゼイさんが亡くなったということは事実ですから、市橋君がその責任を問われるのは当然ではないでしょうか。元教師として、私も元学生の市橋君に更生の機会が与えられることを強く願っていますが、人生の夢が途中で絶たれたリンゼイさんとそのご家族の無念を思えば、真相が明らかにされて正当な判決が下されるべきだと思います。

イギリスの新聞 The Independent の東京支局長 Dr. David McNeill は、約束通り正確に午後1時に来られ、テープレコーダーで録音しながら30分くらいの予定で取材を始めましたが、手短に答えて下さいと言われたのを私が誤解のないように英語で長々と話しましたので、結局1時間半くらいかかってしまいました。McNeill 博士は日本滞在約10年で上智大学で講義もしておられるとのことで、日本語の会話・読み書きも堪能な方でした。昔松濤館流の空手を修行していたが、兎飛びをやらされて膝を痛めたので、今は私と同じように時々ジョギングをやっているとのことでした。

支援をする会の設立の趣旨や、どういう方が支援者かということや、支援金の最低額と最高額や、千葉大学時代の市橋君の様子などを先ず訊ねられました。私が驚いたことは、正確な情報がないからでしょうが、ネット上でやりとりされている情報が真偽の確認がされないまま、あたかも事実であるかのように報道され、イギリス国民にも伝わっているという印象を受けたことです。

例えば、リンゼイさんは市橋君のマンション(イギリス英語ではアパートメントと言います)の個室に巧妙に騙されて誘い入れられた、と信じていました。タクシーの運転手を数分待っててくれと言って待たせたことでリンゼイさんを信用させた、というのが理由のようでした。私は、その日の朝1回英語のレッスンをしただけの関係の独身男性の個室に二人だけで入ること自体が大人の女性としての配慮に欠けるし(たいがいの若い男性は、女性は自分に好意があると誤解してしまうので)、何故マンションの1階なり部屋のドアの外で待っていて授業料を受け取ろうとしなかったのか、ということを指摘しておきました。また、英語のレッスンの日程調整はメールのやりとりでしたと言われていますので、二人の間に好意の感情があったかどうかも、警察が市橋君の部屋から押収したパソコンに残っている通信記録などからいずれ明らかになるでしょうが、それまでは何が真相かわからないので私は責任のあるコメントはできないと伝えました。

市橋君は空手の黒帯(有段者)だったという流言についても、大学以前にバスケットや陸上をしてきたので運動神経は抜群(英語ではFitと言います)だったけど、空手の実力は千葉大学園芸学部の空手同好会で私の指導の下に週に1回か2回昼休み1時間弱だけの練習を1年以内しかしていないので、白帯(初心者)レベルだったと訂正しておきました。市橋君は過去にも女性を何回も襲ったことがあるという流言についても、何を根拠にそんなことが言えるのか、少なくとも私の知っている大学時代の市橋君はそんな人間ではなかったと伝えました。

もうひとつ驚いたのは、どこかのクラブかキャバクラで働いている白人女性のホステスに取材した情報で、市橋君が白人女性に対して異常な憧れ(コンプレックスの逆)を持っていたのではないかというRacism(人種差別的要素)が根底にあったとイギリス国民に伝えられているということでした。そんな情報がどこまで信用できるのか疑問ですが、少なくとも私が知っている学生時代の市橋君にはそんなことはなかったと伝えました。また、それでは何故相手がリンゼイさんだったのかという質問には、市橋君にとってリンゼイさんという女性が美しくてFriendly(親切)で魅力的だったからではないですかという私の想像を伝えました。

ネット上で流れているらしいこんな誤った情報がイギリスに伝えられて、イギリス国民やリンゼイさんのご両親の怒りを増幅しているのだとしたら、残念なことです。市橋君がリンゼイさんのご両親宛に書いた謝罪の手紙が、ご両親の代理人に受け取りを拒絶されてから、市橋君と弁護団の了解を得てイギリスの新聞に公表され、日英両国のメディアに裁判を有利にする手段と批判されたことも、そうではなく市橋君が本当にご両親に謝罪の気持を伝えたかった筈だという私の感想を伝えました。

6人の弁護団の中で3人はベテランで3人は新人だという話の中で、私が最初に法律事務所をお訪ねして菅野弁護士とお会いした時に同席していた山本宏行弁護士は、ベテラン弁護士の一人で、市橋君が身柄を拘束された当初絶食して死のうと考えていたのを説得して止めさせた方です。山本弁護士が何故市橋君がこういう馬鹿なことをして人生を棒に振ってしまったのか解明したいと思っているということに関して、市橋君と同年代の息子を持っているから同情しているからかと訊かれました。そうではなく、市橋君のようなごく普通の前途有望だった青年が何故こんなことをしたのか解明して、日本中に大勢いる青年たちが将来同じような間違いを犯すことを防ぎたいからだと、山本弁護士の真意を伝えました。

私が市橋君のご両親から以前いただいたお手紙の内容に話が及んだ時に、それを見せてくれないかと言われましたが、それは私宛の個人的な親書で、社会に公表することは想定されていない筈ですので、とお断りしました。ただし、何か書いてあったか大意だけは説明しました。

いずれ判決が出た時点で、娘を失ったリンゼイさんのご両親と息子を失ったのと同然の市橋君のご両親が会って、お互いに不幸を乗り越えるために助け合える関係になってほしいし、私がリンゼイさんのご両親が来日した時の弁護団や市橋君との対話の通訳をしてもよいと思っていることを伝えました。支局長はリンゼイさんのご両親に取材したことがあるそうですが、私には先ず冷静な判断のできるお母さんのJulia(?)さんから先に会った方がよいとアドバイスをしてくれました。

現在はリンゼイさんのご両親も取材は受け付けないし、菅野弁護士の方もメディアの取材を受け付けないということのようですし、市橋君のご両親も取材を受け付けない筈ですので、今の段階でイギリスの新聞にどういう記事が書けるのかわかりませんが、少なくともイギリス国民に誤解を与えるような真偽が確認されないネット上の流言飛語を流すのだけは改めてほしいと思いました。