2010年12月11日土曜日

昨日は東京農業大学のグリーンアカデミーホールという施設で、総合研究所研究会農薬部会の第80回セミナーが開催され、2題の講演がありました。元三共株式会社農業科学研究所長の城島輝臣博士の「第12回国際農薬化学会議に参加して」と、日本獣医生命科学大学名誉教授の鈴木勝士先生の「農薬のリスクアセスメントをめぐる最近の話題」

鈴木先生は内閣府食品安全委員会農薬専門委員会座長を3期も務めて最近退任された方で、200以上の農薬の一日摂取許容量(ADI=Acceptable Daily Intake)の設定に携わった方です。農薬のリスクアセスメントの法的根拠、理念、方法論、係争・懸案事項など、長年直接携わった人でなければできない素晴らしい講義をされました。

いずれも大変興味深い内容で、本当は大学の講義と同じように15回くらいシリーズでやっていただきたいと思ったくらいですが、私自身も過去に関わったことがある問題で特に興味深い話題がいくつかありました。一つは、先生がダイオキシンパラドックスと表現した問題。ダイオキシンは地球上で人類に対する最強の毒と思われ、学校でのゴミ焼却も禁止され、我国の風物詩だった落葉での焼き芋もできなくなりましたが、実はそれは間違いだということ。

本ブログの12月4日の記事で言及しました日米科学協力事業セミナーの後、私はアメリカの疫学者Dr. David F. Goldsmithが再来日した機会に、日本の疫学者(当時、国立がんセンター研究所がん情報部長)Y博士もお呼びして、千葉大学で”農薬の発がん性および内分泌かく乱(環境ホルモン)活性に関する疫学的リスク評価”という公開ワークショップ(1998年)を企画・実施しました。その時にY博士が送ってこられた演題「弱いポテンシーの発がん物質を疫学的にどう評価するか:ダイオキシンを例として」を見てびっくりしました。ダイオキシンの発がんリスクは、一般国民の思い込みと違って、タバコを1日1本吸う人が15年後に肺がんになるリスクと同程度に低いということ。ベトナム戦争当時ジャングルを枯らすために散布された除草剤に含まれていたダイオキシンでベトちゃん・ドクちゃんに代表される奇形児が生まれたというのも間違いで、実はこの地方の風土病だったということ。ある国の工場で多くの人が高濃度のダイオキシンに被曝する事故があった場合も、その後の調査で発がん率の異常増加はみとめられていないということ。当時の私にはショックだったのを記憶しています。

昨日の講演会で別の専門家から偶然同じ話とその科学的根拠をお聞きして、納得すると同時に、メディアや一部の学者やジャーナリストや、それに動かされる政府に、私たちがいかに簡単に間違ったことを信じ込まされるかということを再認識しました。当時厚生省所管の国立がんセンター研究所の専門家でありながら、何故ダイオキシン騒動は間違いだと国民に発言しないのかという私の質問に対して、Y博士は「嵐が吹いている時は誰も聴く耳をもっていないので、何を言っても無駄だ」と答えられました。

ダイオキシンは危ないと騒ぐことで、視聴率を稼いだり、研究費を獲得したり、財務省から予算を配分されたり、ビジネスが繁盛したり、社会正義をしていると思い込んで自己満足したりする人がいることも、間違った認識がいつまでも是正されない理由のひとつでしょう。、そのために、国民の税金から無駄な予算が支出され続けるとしたら、それは国民の利益を損なっている反社会的行為ではないでしょうか。農薬についても、本当は安全性に問題はないのに、危険だ危険だと虚偽の宣伝をして自己利益(お金儲けや、自分たちの活動の正当化など)に結び付けている人たちが多数いるのも、似たような状況だなと思いました。