2011年7月12日火曜日

今日の午後は、検察側から無期懲役の求刑がされたことについて、東京農大の研究室でテレビ朝日から感想をインタビューされていました。予想通りだったけど、ホッとしたというのが、多くの支援者に共通の感想ではないでしょうか。後は、裁判官と裁判員によるこれからの評議で、そのまま認めるのか、情状を酌量して有期刑が妥当と判断するのか、です。無期と有期の境は30年で、無期の場合はほとんどそのまま刑務所の中で死を迎えることになるようです。

昨日の生きる屍のような市橋君の姿を見て、反省して謝罪して衰弱しきった人間を、演技をしている・反省がないと言ってなお極刑を求めるという人たちは、武器を捨てた相手を切り殺せ、撃ち殺せと叫んでいるような気がしました。死者に鞭を打てと言っているような気がしました。日本の文化は元々そうではなかった筈だと思うのですが。

昨日の裁判で私が証言台に立ったこともあって、支援者、非支援者、反支援者などから大量のメールが届いています。反支援者からの明らかにやらせのメールを除いて、本当は一つ一つに返事を差し上げたいのですが、今は明後日木曜の鹿児島での講演の準備と、土曜の明治大学大学院での講義の準備で追われて時間がありません。失礼をお許し下さい。

初めての非支援者の方からは以下のメッセージをいただきました。私も多感な時期にこの本を貪り(むさぼり)読みました。私は英語版も持っていますので、時期がきましたら、弁護団を通して差し入れてもらおうと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
市橋さんには、ぜひドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読んで頂きたく思います。幾人もの登場人物達が織り成す総合小説ですが、主人公の一人は、淫蕩に手を染め、それがキッカケで殺人と関わりを持ち、シベリアに流刑される青年です。最終的に青年は、苦しみの中での贖罪という光を仄かに見出すのですが、しかし自分が、多くの人の憎悪、特に嘲笑を前にして、良き贖罪の精神を保ち続けられるのかどうか、葛藤を抱えていきます。  たぶん今の市橋さんなら誰よりもこの主人公の善き部分を理解できるのではないかと思います。市橋さんが更生出来るかどうかなど例えば私が判断を下すのは全く僭越なことだと思いますが、しかし、この小説の青年が誰にとっても、贖罪の道程で善き友となってくれるのは、たぶん間違いではないと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある支援者から届いた次のメッセージは、亡くなったリンゼイさんへの思いと過ちを犯した市橋君への思いと、矛盾した気持ちに揺れ動きながらも市橋君の更生を支援したいという多くの支援者の気持ちを表していると感じました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんにちは。今年の2月に初めて支援金(小額ですが・・・)を送りました、〇〇〇〇と申します。あれからは全く支援金を送れていませんが、毎日、本山先生のブログは拝見させていただき、裁判へ向けての状況や、支援者の皆様のメールをWeb上で読ませていただいておりました。

裁判の初公判から、毎日必ず公判を詳細に記載しているサイト
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/517596/ )でその場の様子を見ています。本当は是非傍聴したかったのですが、私は〇〇県に住んでおり、どうしても千葉まで行くには遠すぎる為に諦めるしかありませんでした。公判で明らかにされた、事件の色々な詳細を読み進めていくと、被害者であるリンゼイさんが、いかに怖い思いをしたか、いかに苦しかったか体験のしたことがない私が想像するよりも、もっともっと壮絶な物だったと思います。

あの日の朝、市橋君が寝坊しなければ・・・、財布にお金が入っていれば・・・
タクシーが少し待っていてくれれば・・・、リンゼイさんがマンションの外で待っていてくれれば・・・
もう過ぎてしまった事ですが、何かが違っていればこんな事件は起きなかったのに・・・
そんな風にどうしても考えてしまう自分が居ます。でも、もうそれは過ぎてしまった事、起きてしまった事なのですよね。

私は、市橋君に正当な裁判が行われるようにと支援する側の人間なので、公判の様子を記したサイトを読み進めていても、反省しているように伺えますが、リンゼイさんご家族からすれば、それは『わが子を殺した犯人が自分自身を守る為のショー』なのでしょう。私にも今年20歳になる息子がおりますが、もし息子が殺害された場合、犯人を許すことは絶対できないし、許されるのであれば、自分の手で戒めたい!と、思うと思います。

そんな風に思いながらも、本山先生が証人として出廷した日の公判内容を読んだ日は、 読みながら涙が止まりませんでした。本山先生のブログを読んでも涙が止まらず・・・。
本山先生のお気持ちと、事件を起こしてしまった市橋君への「どうして」という気持ちが私の中で錯綜して、どうしても残念でならないという思いばかりでした。本山先生のお言葉は、市橋君の心に必ず響いていると思います。

今日の公判の内容を、更新されている範囲(現時点で、午前中の物だけでした)で読み終えて少ししたら、テレビで「市橋被告:無期懲役求刑」というニュースが出ました。 【被害者が1人という事、前科が無いという事、殺意が無かったという事】その判断で、無期懲役が検察側から求刑されたそうです。それを見たとき、「死刑でなくて良かった・・・」と、思わず声が出ました。以前から私も家族と話を色々していましたが、「死刑には絶対ならないだろう」という意見に落ち着いていました。ですが、今回は被害者が外国人であった事、2年7ヶ月もの間逃亡していた事を考えると やっぱり、死刑という判決が出る可能性も、もしかしたらあるのかなと思っていました。

生きて死ぬまでリンゼイさんを思い、一生償って行く事が出来るんだ と思うと不謹慎かもしれませんが、「良かった」と・・・。まだ判決が出た訳ではありませんが、どうしても本山先生に気持ちを伝えたくなり、メールをしてしまいました。まったく整理されていない内容で読みにくいかと思いますが、申し訳ありません。
今年の2月に支援金を送金して以降、一度も支援しておりませんが、また必ず支援金を送らせていただきたいと思います。梅雨も明け、本格的な夏が始まったばかりです。今年初めてのセミの声を一昨日聞きました。本山先生も熱中症には充分に気をつけて、お体を大切にしてください。
(注:上記の[殺意がなかった]については、その後本人から間違いでしたと訂正のメールが届きました。)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある支援者からのメールの中に、「昨日の夕方のニュースで、本山教授の後ろでうなだれている市橋さんから涙が落ちてる法廷画を見ました。力なく座っていた市橋さんに本山教授の気持ちが届いてたんですね。」 という記述がありました。私にはすぐ後ろに位置していた市橋君の様子を見ることはできませんでしたが、昨日報道関係者から言われたことは本当だったのですね。卒業してから何年振りかですぐ近くの空気を吸っていた市橋君に、私の胸の中が通じたということは、大変うれしいことです。知らせて下さり、ありがとうございました。