2011年10月10日月曜日

シカゴのオヘア空港の本屋で買ったSteve Olson 著のMapping Human History- Genes, Race, and our Common Origines (ヒトの歴史をひも解く-遺伝子、人種、そして私たちの共通の起源)という本を少しずつ読んでいます。生物としての人間に人種は存在しないというのが現在の科学的な常識ですが、普段私たちの頭の中には白人(コーカソイド)、黒人(ネグロイド)、アジア人(モンゴロイド)、ポリネシア人(ポリネシアン)、・・などの区別が存在します。
この本によれば、こういう人種の概念は植物の分類で有名なスエーデン人の植物学者Carolus Linnaeus (Carl von Linne カール・フォン・リンネ)が1758年にヒトの学名をHomo sapiens として、それをさらに次の4つのカテゴリーに分類したことに始まるとのこと-red Americans(赤いアメリカインディアン)Homo sapiense americanus、yellow Asians (黄色いアジア人)Homo sapiense asiaticus、black Africans (黒いアフリカ人)Homo sapiens afer、white Europeans (白いヨーロッパ人) Homo sapiens europaeus. 
リンネはこれらの人種の特徴を述べていますが、白いヨーロッパ人についてだけは、active(活発), very smart(賢い), inventive (創意に富む)などとよいことばかりが書かれてあり、その他の人種については、ill-tempered (悪い性格) とか、haughty (傲慢)とか、crafty (悪賢い)とか書かれていて、明らかに人種差別的な発想です。1700年代のヨーロッパ自体がそうだったのでしょうが、リンネ大先生ですらRacism (人種差別主義)と呼ばれそうなそんな考えをしていたということは驚きでした。

近年の分子遺伝学の進歩は目覚ましく、植物や動物も昔のように形態学的特徴に基く分類だけでなく、遺伝子(DNA)構成の違いに基く分類がされるようになっています。遺伝子の変異の割合は、上記のいわゆる人種の間よりも、人種内の方が大きいということからも、いわゆる人種といわれているグループは生物学的/遺伝学的なグループではなく、地理的隔離で生じた民族的(Ethnic)(言語や習慣や身体的特徴の異なる)グループと見なされるようです。遺伝子の変異が起こる頻度から計算すると、現在の地球上の人類の起源は約15万年前のエチオピアの辺りからスタートし、そこから世界中に移動分散し、それぞれの環境に適応して進化してきたということのようです。つまり、私達は白人でも黒人でもアジア人でもポリネシア人でもアメリカインディアンでも、共通の先祖から枝分かれした兄弟姉妹だということのようです。