2012年7月11日水曜日

朝8時に松戸を出発し、私の車を運転して樹木医と一緒に房総半島の富津岬の松林の状況を見に行きました。岬の先端部分の松林は前回視察した時に比べて若干松枯れが進行したかなと感じる程度でしたが、前回被害が大きかった漁港の向かいの松林は枯れた松を伐倒駆除したらしく、疎林になって空間が大きくなっていましたが、枯れた松は除去されていました。

その後、館山自動車道に戻って房総半島先端に位置する平砂浦に行きました。昨年の松枯れで激害が発生したところですが、今年はすでに殺虫剤(ネオニコチノイド剤)の2回散布が行われた筈ですので、マツノマダラカミキリがどういう状態か観察するのが目的でした。松枯れは前回の視察時よりもさらに悪化しており、場所によっては枯損木の伐倒駆除で、松林が消滅して空き地になっていました。伐倒木をチップ化して林内に敷きつめているところもありました。

伐倒されなかった生きているマツには、マツノマダラカミキリ成虫が集中していて、ある1本の小さいマツの木には5頭も寄生して後食(こうしょく)していました。今まで30年間松枯れの研究をしてきた樹木医も初めての経験と言っていましたが、野外の自然状態(飼育している網室内とは違う)で交尾している成虫を2組も目撃できました。同じ枝にマツノマダラカミキリ成虫とマツケムシ(マツカレハ幼虫)が寄生している珍しい状況も観察されました。また、マツノマダラカミキリは見られなくても、ほとんど全てのチェックした生きているマツの枝には後食痕がありましたので、これらのマツにもすでにマツノザイセンチュウが侵入している筈ですので、今秋には枯れてしまう筈です。

今年は2回薬剤散布をしたのでしたら、本来成虫はいない筈なのに、これだけ多数存在していたということは、防除方法に何らかの問題(散布時期、カミキリが後食する部位への薬剤の付着量、薬剤の残効性など)があったということを示しています。今後、県の担当者にどういう薬剤の散布方法を採ったのか確かめてみるつもりです。今日は残念ながら時間が足らなくなって、予定していた鴨川と九十九里浜の松枯れ状況視察まではできませんでした。

スミパインMC(有機リン殺虫剤)をヘリコプターで散布していた時はしっかり守られていた広大な松林が、散布中止に追い込まれてわずか3~4年でこういう無残な状況になったことの責任は誰がとるのでしょうか。宗教的な農薬反対活動をして、まるで中世ヨーロッパの魔女狩りのようにマスコミを煽って散布を中止に追い込んだ人たちは、どれだけ国民の利益を損なっているか自覚すべきだと思います。