2012年7月31日火曜日

約束通り、千葉県森林研究所の福原氏が、培養したマツノザイセンチュウのKa-4 isolate(毒性最強)を持参してくれました。福原氏らは、この時期は野外で一日に2000~3000本の松苗に接種する作業をしているそうですが、今日は、千葉県松林復活プロジェクトに参加している千葉大学大学院博士課程の大学院生小林君を指導してもらってポット植えの松苗に接種しました。松苗の幹の粗皮をナイフで丁寧に剥離し、露出した形成層をのこぎりで傷をつけ(マツノマダラカミキリ成虫が当年枝を後食するのを模して)、培養したマツノザイセンチュウ懸濁液を1本当り約3000頭ずつ接種しました。このような接種作業は日中の気温の高い時に行うと、剥離した粗皮と形成層の間に滴下した懸濁液が短時間に吸収されて、センチュウの樹体内への侵入を促進するとのことです。

松枯れの発現症状を見ながら、松苗をポットから引き抜いて、センチュウ無接種区の松苗の白根(吸水根)とセンチュウを接種した影響で褐色化した白根を採取し、菌根菌の共生を妨害する二次代謝物質が生成しているかどうかを調べる予定です。仮説が正しければ、次のステップとして二次代謝物質の分離同定に進みますが、うまくいけばいずれ小林君の博士論文の一部になる筈です。
炎天下で汗をびっしょりかきながらの体力を消耗する作業でしたが、仮説通りの素晴らしい結果が得られることを想像しながらの楽しい作業でした。