2013年5月22日水曜日

農薬工業会の設立60周年記念祝賀会が日本橋の鉄鋼会館というところで催され、私も招待されたので出席しました。農水省農林水産技術会議会長の三輪睿太郎博士(この3月で農大総合研究所教授を定年退職)の「日本農業の行方と農薬の役割」と題した講演に続いて、小宴と称した参加者数百名の大宴会がありました。名古屋大学時代の恩師(88才)も来ておられ、久し振りに懐かしい方々ともお目にかかれました。

三輪博士の講演はさすが農水省の研究プロジェクトの審査をする元締めだけあって、日本の農業のおかれた現状について示唆に富む内容がたくさんありました。あらためて再認識したことのひとつは、稲作経営規模が4ha(町歩)未満の経営体数(農家戸数)は約155万に対して4ha以上は約13万ですが、耕地面積では前者が約162万haに対して後者は約200万haを占めている、つまり水田農家の規模拡大が行われていて、僅か8%の農家が55%の稲作経営を担っているということです。

よく視野を広く持つことの教えとして「木を見て森を見ず」と言われますが、三輪博士は逆に「森を見ず木を見ろ」ということの重要性を指摘していました。つまり、全体としては経営規模の小さい兼業農家が圧倒的に多く競争力のある産業としては疲弊しているように見える日本農業も、個々の経営体(農家)を見るとすでに規模も拡大して先進的農業を実現している少数の専業農家が生産の大部分を担っているということです。