2015年1月15日木曜日

日本植物病理学会の第25回殺菌剤耐性菌研究会シンポジウムが東京農業大学のグリーンアカデミーホールで開催され、私も聴講してきました。

今回は殺菌剤耐性菌の現場での発生状況を把握することが主要目的として企画されたらしく、石原産業株式会社が開発した新規SDHI(Succinate Dehydrogenase Inhibitors ミトコンドリア電子伝達系コハク酸脱水素酵素阻害剤)のIsofetamid(イソフェタミド)(商品名ケンジャ)に関する詳しい紹介以外は、長野県、青森県、滋賀県、岐阜県、三重県、栃木県、奈良県における殺菌剤耐性菌の検定方法と発生状況の報告がありました。
病原菌はイネ苗立枯病、イネイモチ病、ニンニク白斑葉枯病と葉枯病、イチゴ炭疽病、萎黄病、灰色かび病、うどんこ病、などが対象でした。
生物の薬剤に対する感受性が低下することを、昆虫の場合は殺虫剤抵抗性と呼び、微生物の場合は殺菌剤耐性と呼びますが、殺虫剤にしても殺菌剤にしても農薬として開発するには莫大な年月とコストがかかりますので、耐性・抵抗性の発達を回避・抑制・遅延することは植物保護上重要な課題です。
植物保護で病害虫に対抗する薬剤がない(耐性・抵抗性の発達のために防除ができない)状況の不安や危険性は、人間に例えればエボラ出血熱(エボラウィルス病)に対しては感染・回復した元患者の血液や血清を投与する以外にないという状況を想像すれば、容易に実感できる筈です。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9C%E3%83%A9%E5%87%BA%E8%A1%80%E7%86%B1#.E7.97.87.E7.8A.B6.E3.81.A8.E6.B2.BB.E7.99.82 

殺虫剤抵抗性の場合と同様に、殺菌剤耐性についても耐性機構については分子生物学レベルで詳細な解明がされているのでしょうが、実際の農業現場でのモニタリング(実態把握)や対策については遅れていて相変らず試行錯誤の段階かなという印象を受けました。耐性菌検定法についても、最近は県の農業試験場レベルでもPCR-RFLP法を用いた遺伝子診断が普及してきているようですが、それは耐性遺伝子が特定されている場合には有効だとしても、複数のメカニズムが関与していたり多剤耐性(昆虫の場合は複合抵抗性と言う)が発達しているような場合には、やはり昔ながらの薬剤を処理して発病予防効果や治療効果を正確に検定するという丁寧な対応が必要となります。

千葉大学走友会の仲間からは、松戸市七草マラソンを走ってきたとか、谷川ハーフを走ってきたとかの報告メールが届いています。私はこのところまた運動する時間がとれずに、悔しい思いをしています。