今日は東京永田町の海運クラブで全国農薬協同組合(農薬卸商の全国組織、通称「全農薬」)の第51回総会/全国農薬安全指導者協議会(通所「安全協」)第39回全国集会が開催され、私にも案内状が届きましたので出席しました。
安全協の事業報告の中で、今年滋賀県と静岡県で実施した消費者対象の農薬シンポジウムの詳しい報告があり、参加者のシンポジウム前と後で農薬に関する意識の変化のアンケート調査の結果も報告されました。両方の県とも、農薬の有用性や安全性に関する消費者の意識が大幅に変わったことを表すグラフが示されました。両方の県とも私が基調講演をしましたので、少しは貢献できたことに嬉しく思いました。
来年は、北海道、広島、宮崎、愛媛の4ケ所で農薬シンポジウムを開催する計画のようですので、楽しみです。宮崎県についてはすでに日程も確定し、私も講演を了承しました。
2人の著名人の講演が予定されていたせいか、海運クラブの大きな会場が満席で、壁側通路の立ち見席までありました。
一人は科学ジャーナリスト松永和紀さんで、「近年の農薬の安全性に関する話題-消費者とのコミュニケーションをどうする?」という演題で、難しい問題を独特の柔らかい口調で、しかし豊富な経験に裏打ちされた見解を展開されました。松永さんは京都大学の農芸化学科卒業で、確か毎日新聞記者を経て独立して食の問題について情報発信をされている女性です。現在は2011年に立ち上げた一般社団法人FOOD COMMUNICATION COMPSASS http://www.foocom.net/ を通して、消費者団体の立場で科学的根拠に基づく食情報を提供しておられます。私とは、私が農水省の農業資材審議会の農薬分科会長をしていた時に取材に来られた時以来のお付き合いです。
配布資料には印刷しませんでしたが、スライドだけで遠慮しがちに見せた「私見・提言」に、彼女の業界に対する批判と希望が含まれていると感じました。業界の方々はこの「私見・提言」をよく吟味して、これからの活動に生かすべきだと思います。
もう一人は衆議院議員3期目で、昨年(2015年)10月から自民党農林部会長に就任し、全農との対決がよく報道されている小泉進次郎氏で、「なぜ今、農業改革か」という演題で、若干35才とは思えない迫力と話術で、難しい問題に関する主張を展開しました。小泉氏の主張は先ず、「日本農業の持続性はすでに失われている」という悲観的な事実を確認した上で、日本農業を夢のある産業に変えていくには何が必要かという話につなげ、説得力がありました。取り組んでいる具体的な政策として、1. 人材力強化、2. 生産費低減、3. 流通・加工構造の改善、4. 輸出力増強、5. チェックオフ機能の強化(何のことか私にはよくわかりませんでした)、6. 原産地表示制度の推進、を挙げました。
報道されている全農との3つの対立点(①全農を株式会社化、②JA潰し、③資材費低減の要請)については、誤解があると述べました。目指しているのは、株式会社化やJA潰しではなく、真の協同組合に立ち返らせることであり、国内市場だけではなく、増加しつつある世界人口に食料を供給するための農業振興によって、若者に夢のある農業にし、農薬業界や肥料業界にとっても大きな発展の機会が生まれる、という主張でした。
わずか25分か30分の講演でしたが、アメリカ大統領選挙に勝ったドナルド・トランプにもちょっと似た感じのする、政治家というのは大したものだという印象を受けました。