2017年4月22日土曜日

一昨日20日(木)の朝日新聞朝刊にバイエル薬品という薬品会社が、同社が開発販売しているイグザレルトという血栓症の治療薬について不適切な行為をしたという主旨の大きな記事が載っていました。その後ネットで検索したら、下記の朝日新聞デジタル版を含めてたくさん引用されていました。恐らく、内部告発したバイエル薬品の元社員とその代理人弁護士が報道陣に対してニュースリリースしたのでしょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170420-00000003-asahi-soci
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/57414/Default.aspx
指摘された点は2点で、(1)宮崎県のある診療所でこの薬を処方された患者約200人のカルテをバイエル薬品の社員が閲覧したことと、(2)それに基づいて会社が論文を代筆して医師の名前で医学誌に発表したことのようです。
カルテの閲覧については、当然医師の了解のもとで行われた筈ですが、医師は口頭で患者の了解を得たと述べたようですが、個人情報が含まれるので正式には患者一人一人の書面での合意確認が必要とのこと。
発表した2報の論文については、会社が原稿を書いて医師が一部手を加えて発表し(その後取り下げた)、会社が同薬品の販売促進に利用したというものです。
バイエル薬品の担当社員が内部告発したことでメディアに大きく取り上げられることになったようですが、医師の代理人弁護士は、「製薬会社と協力して論文を作るのはこの業界では当たり前、医師は内容はきちんと確認している」と説明したと書いてありました。確かに、医師がある医薬品の治験効果について学会発表をする時に、薬品会社の社員に原稿とスライドを作成させるという話はよく聞きます。特に、臨床の医師の場合、患者の診察や治療に追われる中で、関連分野の世界中の論文を集めて読んだり、学会発表用の論文原稿を執筆したりスライドを作成する時間を工面するのは難しいという事情があるのかもしれません。

農薬の場合もかっては似たような状況があったと聞きました。県の農業試験場等で医薬品の治験に相当する薬効・薬害の圃場試験を実施してもらい、よい結果が得られた場合はその県が農家に推薦する病害虫・雑草の防除暦に載せてもらうことが販売につながりますので、農薬会社の営業担当者は試験場の研究者と良好な関係を作るために接待(居酒屋やカラオケで)をするのも仕事の一つだったようです。そこに、医薬品の場合のMR(Medical Representative 医薬品情報担当者)と医師の不適切な関係と同様の、甘えやたかりの構造が生じる危険性があるのでしょう。

医薬品にしても農薬にしても、営業担当者にすれば「先月に比べて今月の売り上げは?」「前年度に比べて今年度の売り上げは?」が業績評価になりますので、売り上げに関係する医師や試験場研究者と接触し、良好な関係を築こうとするのは当然の営業活動の範囲ということは理解できます。今回記事で指摘された問題点(1)の患者のカルテをMRが勝手に盗み見した場合は犯罪行為でしょうが、論文を書くために医師の承認の下に閲覧した場合は判断が分かれるのではないでしょうか。その場合に担当医師以外の人(MRに限らず、論文を共同執筆する可能性がある他の医師や大学の指導教授なども含めて)が当該患者の書面による了解なしにカルテを閲覧したことが医療倫理に反するかどうかが問われているのでしょう。問題点(2)については、すでに当該医師の代理人弁護士が釈明しているように、多忙を極める臨床の医師が生データをアシスタントに渡して(共有して)論文の下書きをさせ、必要な訂正をした上で医師の名前で医学誌に発表するということが日常的に行われているとしたら、今回の事例が特に倫理違反というわけではないのかもしれません。もちろん、データを捏造(ねつぞう)したり、意図的に会社に都合の良いデータだけを抽出して論文を書いていれば、論外ですが。
内部告発をしたMRは2015年7月に会社から退職勧奨を受け、同年10月から給与の支払いを停止されて休職扱いになっているとのことです。本人は同じ会社への復職や、同業他社へのMRとしての転職を望んでいるとしても、内部告発をしたという経歴から難しいのかもしれないと想像します。そういう事態を解決したいという思いが今回のニュースリリースの動機につながったのでしょう。

昼休みに道場で空手の稽古と筋力トレーニングを1時間してから江戸川に出かけ、坂道トレーニング6往復とウォーキング/ジョギングを2時間25分してきました。昨日よりも少しはしっかり走れた気がしました。5月3日の横浜駅伝まで残り10日ですので、もっと走り込みが必要です。
堤防の斜面ではタンポポが一面に咲いている場所がありました。