東京農業大学総合研究所研究会農薬部会(私が山本 出先生の後任として現在の部会長)第112回セミナーが世田谷キャンパス1号館で開催されました。
いつものように地下鉄千代田線の代々木上原駅で小田急線に乗り換えて経堂駅まで行きました。経堂駅の構内に掲示してある貸菜園のポスターに目が留まりました。新規会員募集中で、成城学園駅西口から徒歩1分の農地で、何と月額7,400円とのこと! 何坪(1坪?2坪?)の農地かはわかりませんが、ちょっとした野菜を作るのに月額7,400円というのは非常に高いという気がしましたので、募集主の貸菜園アグリス成城というのをネットで検索してみたら、「利用者20,000人突破!!」「有機・無農薬栽培」「現場サポート付き」「手ぶらでOK」「共同利用可能」というキャッチフレーズを書いた勧誘の写真が出てきました。専業や兼業のプロの農家が経営的に苦労している中で、こういう商売もあるのかと思いました。月額7,400円(年額にすると7,400×12ケ月=88,800円)の中、何%が地主の農家の手に渡るのでしょうか・・。
農大通りの商店街は、2ケ月に1回の割合で通る度に新しい店が開店していますが、農大の学生を対象にしていると思われる、「ライス無料、お替り自由」とか、「学割、麺の大盛り・味卵1個どちらか無料」とか、「プレミアム牛めし、無添加」という宣伝がありました。
「有機・無農薬栽培」とか「無添加」という文句が、無意識のうちに農薬や化学調味料は危険という事実とは異なる印象を消費者に植え付けているような気がします。
講演の1題目は、石原産業(株)中央研究所の伏木田(ふしぎだ)地(くに)氏による「殺菌剤の研究開発動向」と題した講演でした。伏木田氏は元々は京都大学理学部の大学院出身で、石原産業(株)入社後は医薬研究室でトランスフェクションキット GenomONE の研究開発に従事して、現在は生物科学研究室で殺菌剤の探索研究に従事している方です。農業超大国アメリカにおける遺伝子組換え(GM)作物の栽培面積が、除草剤(グリホサート)耐性作物と害虫抵抗性(Bt)作物を例に、圧倒的に普及しているのに対して、病害耐性GM作物は普及していないということと、最近疫病耐性GMバレイショが認可になったことを紹介しました。しかしGM作物と言えども、病害虫や雑草の抵抗性、耐性発達の問題からは逃れられないことはよく認識されています。新規殺菌剤開発が必要な理由として、耐性菌問題、既存農薬の登録(維持)のコスト問題、新規病害の出現、の3つを挙げました。
それぞれの代表的な例として、同じゲノタイプのDMI剤耐性菌が医療分野と農業分野で見つかったこと、農薬の登録維持のコストが1995年の1.52億ドル(約152億円)から2010-2014年には2.86億ドル(約286億円)と増大していること、南米で発生したコムギいもち病がインドに侵入して対策が問題になていること、を紹介しました。
(スライドはクリックすると拡大できます)
講演の2題目は、長年の千葉県の農業改良普及課勤務を経て千葉農業事務所長を定年退職後、現在は(株)クボタアグリソリューション推進部技術顧問をしている渡邉善保氏による「生産現場から見た日本の農業の現状と課題」と題した講演でした。渡邉氏と私とは、彼が千葉県の普及員で畜産と野菜担当だった時代からの長年のお付き合いですので、今回の講演も快く引き受けてくれました。
クボタの紹介に続いて、政治家の言葉を借りて日本の農業が直面している問題を指摘しました。平成28年度の家計支出ではパンが米を上回ったという日本の食生活の変化に対応して、クボタのような農業機械メーカーも変化していかなければならないという認識はもっともだと思いました。
私にとって一番興味深かったのは、耕運作業、田植え作業、収穫作業、除草作業、病害虫防除作業の機械化による進歩を示した古い写真でした。牛馬による耕運、手植えによる田植え、手刈りによる収穫、手抜きによる除草、手獲りによるイナゴ防除など、全部終戦後の私の子供時代に経験したことですから、機械化がどれだけ農業に貢献してきたかがわかります。現在は第4世代でスマート農業を目指しているとのこと。
多くの農家が経営的に苦労している中で、右肩上がりの成長をしている元気のよい産地もあるということで、一例として(株)関東地区昔がえりの会を紹介しました。何故成功しているかの考察も説得力がありました。
最後のスライドは、農薬部会セミナーの会員の多くは農薬メーカーだということを意識して、登録農薬の適用拡大への協力要請でした。