2011年5月3日火曜日

4月末が締め切りだった「林業と薬剤」という雑誌に依頼された原稿が今夜やっと書きあがりましたので、さっき二人の共著者にメールに添付して送りました。訂正・加筆していただいて、連休明けの5月6日に発送できれば、多分6月号の印刷に間に合うのではと思っています。

「松くい虫防除で散布された薬剤の飛散と健康影響(2)-秋田県における事例-」という題目の解説記事です。2006年6月に秋田県潟上市天王浜山地区の海岸の松林(夕日の松原と言います)に、松くい虫防除目的で無人ハリコプターでスミパインMC(有効成分はフェニトロチオン)という殺虫剤を散布した時に、学生たちと一緒に泊りがけで周辺環境への薬剤の飛散実態を調査に出かけました。結果としては、吸入毒性に関わる気中濃度も、経皮毒性に関わる落下量も、各々の安全とされる基準値以下で、周辺住民への健康影響の心配は全くないということを明らかにできました。

当初は、散布される松林から水平方向に距離別に薬剤濃度を測定するだけでなく、垂直方向に高さ別(15m、8m、1.5m)にも濃度を測定して、立体的に薬剤がどう拡散するか予測するシミュレーションモデルを作成するつもりでした。そのために、農水省中央農業研究センターの気象の専門家の協力も得て、松林上空の詳細な気象データも測定してもらいました。ところが高さ別の大気を捕集する小型ポンプをヘリウムガスを充填したゴム製のバルーン(気球)のロープで吊るしたのが大失敗で、風に流されて一定の高さの維持もできず、松の針葉に触れたバルーンは全部パンクしてしまい、結局平面的なデータしか収集できませんでした。

無人ヘリによる薬剤散布
ポンプを吊るしたバルーンは風で流された

それでも、散布直後の松林内の道路上で、薬剤の効果で中毒して落下したマツノマダラカミキリ成虫が大きなアリの群れに攻撃されているところを女子学生が偶然発見してくれたのは大収穫でした。マツノマダラカミキリは広い松林の中で元々生息密度が低いということと、林床部に落下してもたちまちいろいろな天敵が持って行ってしまうので、普通はなかなかその姿を見ることができないからです。お蔭で貴重な写真を撮ることができました。

落下してアリに攻撃されているマツノマダラカミキリ