2011年10月28日金曜日

宿泊している部屋は3人ずつ相部屋でしたが、携帯電話で朝5時に目覚ましを設定し、そっと寝床を抜け出して大浴場でお風呂にはいり、その後運動着に着替えて三河湾の海岸にジョギングに出かけました。ゆっくり景色を眺めながら、朝食前に約1時間20分(多分4Km?くらい)走ってきました。これで累積は86Km/12日です。途中で、昨日講演した環境省の西嶋英樹室長と出会いました。彼は明日どこかのフルマラソン大会に出場するらしく、今朝は15Kmほど走ったようでした。

研究会2日目は、福岡県南広域水道企業団の井上 剛博士による「農薬の水田からの流出と水道における管理方法」、関東学院大学の鎌田素之准教授による「水道水源における農薬の検出実態と課題」、名古屋大学大学院田中利治教授による「寄生バチと農薬の苦しい関係」という講演がありました。今日も内容の濃い講演ばかりで勉強になりました。水道水中の農薬の安全性の判断は、「総農薬方式」と呼ばれる方法が使われていて、各農薬の検出値割る目標値の総和が1未満であれば問題ないとされているようです。原水(浄化処理前の河川の水)の分析をすると常に比較的高い濃度で検出される農薬がいくつかあり、浄水(浄化処理後の水)でも高頻度で検出される農薬があるという実態を紹介し、水質管理上注意を払うことが必要とのことでした。しかし、検出されること自体ではなく、濃度が問題で、現在のところ「総農薬方式」で評価して問題はないということのようです。

もうひとつ面白かったのは、ある種の殺虫剤は現在一般に使われている浄化処理方法、すなわち凝集・沈殿、ろ過、塩素処理、活性炭処理で処理しても除去できないという結果でした。フロアから、イオン交換樹脂を使ったら除去できるのかという質問がありましたが、技術的には可能でも、経済的に合わないとのこと。その他にオゾン処理もあるのでしょうが、全ての浄化施設がそういう設備をを備えているとは限らないとのことです。しかし、この殺虫剤も、今のところ検出されている濃度自体は著しく低いので、健康上の問題はないようです。

この点は、島根大学の井藤(いとう)和人教授が座長をした総合討論でも指摘され、農薬はどんなに低濃度で実質的に何の影響もないとは言え、本来人の口に入るべきものではないので、N.D.(検出限界以下)にすることが望ましいが、そのためにかかるコストを考えると果たしてそうすることに価値があるかどうかという悩ましい問題提起になるということです。つまり、飲料水や食品に含まれる超微量の残留農薬によるリスクよりも食品自体に元々含まれる天然物質によるリスクの方がはるかに大きい場合に、残留農薬をゼロにすることにどんな意味があるのか、そのために莫大なコストを負担することに価値があるのかという判断が問われています。

研究会は昼で終わり、午後はチャーターしたバスで、エクスカーションで渥美半島に行きました。トイレ休憩を兼ねてカモメリアという展望台に寄ってから、田原(たはら)市低炭素施設園芸モデルハウスと、イシグロ農芸(有)くくむ農園を見学しました。くくむというのは、命を育む(はぐくむ)からつけた名前だとのことでした。いずれもこれぞ最先端というりっぱな施設で、日本農業もこれからこういう風に企業化していくのかなと想像させました。植物工場のキャッチフレーズは、「安全・安心、安定生産」だそうです。しかし、昨日の特別講演で明らかにされたように、約7割は失敗に終わっているとのことですから、経営的にはそう簡単ではなさそうだなという印象を受けました。

植物工場でも病害虫は発生するので、キクの方は1週間に1回くらいの頻度で農薬を自動散布(人が施設内に入らずに自走式の機械で)し、くくむ農園のトマトの方は特にコナジラミが媒介する黄化萎凋病が怖いので2週間に1回くらいの頻度で農薬の散布(ロボット式の散布機を人がトマトの間の通路を移動させながら)をしているとのことでした。

帰りは豊橋までバスで送ってもらい、豊橋から東海道新幹線で東京に戻ってきました。