2012年4月16日月曜日

綾瀬駅から、もう覚えてしまった道をゆっくり歩いて東京拘置所に向かいました。少し早目に着いたので待合室で15分くらい待っていたら、面会の申し込み窓口が開いたので申請書を書いて身分証明書代わりの運転免許証と一緒に出して、さらに30分くらい待ったら電光板に私の番号が掲示されました。いつものように、1階のロッカーに鞄と薄手のジャンパーと携帯電話と小銭入れ兼キーホルダーを入れ、ノートとボールペンと手帳だけを持って金属探知ゲートをくぐって、さらに身体チェックを受けて、10階にエレベーターで昇りました。許可証を窓口に見せて、指示された面会室に入りました。

透明の仕切り板の向こう側に市橋君が刑務官と一緒に入ってきました。一見して、市橋君は前回よりも明るい雰囲気だったので、前回より顔色がいいな、元気だったかと声をかけたら、はいと答えました。向こうから何か話しかけてくるかと思ってしばらく黙っていてから、どうだ控訴するかどうか考えて決めたかと訊いたら、またしばらく沈黙の後で、小さい声でボソボソと控訴しませんと言いました。そうか、でもまだ時間があるから2週間ギリギリ(来週水曜)まで考えて結論をだすようにと伝えました。市橋君は首を少し前後に振ってわかりましたという表情をしました。控訴をして主張が認められても、30年以上の無期懲役が少し短い25年~30年くらいになるだけかもしれないけど、納得いかないままで刑に服するのは君も面白くないだろう。これから君は長い期間刑務所の中で暮らすのだから、悔いが残らないようによく考えて、もし君が正直に話したことが信用できない虚偽の弁解と言われたのだったら、最後のチャンスまで主張をした方がいいと思うよと言ってやりました。支援者の人達も君に控訴をしてほしいと言っているし、本間 龍さんからの情報では2週間以内に一言控訴しますと書いて出せば、弁護士の選任や実際の控訴の手続きはその後で時間をかけてやればいいということだから時間はあるからと説明してやりました。また、一度控訴の意思表示をしておけば、後で考えが変わって控訴を取り下げることもできるという情報も伝えました。弁護士は山本弁護士に依頼してもいいし、私の友人の弁護士に紹介してもらう新しい弁護士に頼むこともできるし、弁護士料は募金で手当てするから心配いらないからと言ってやりました。市橋君はただ黙って聞いていました。

綾瀬の駅からここまで歩いてくる途中には15階建てのマンションがたくさん建っているけど、屋上の運動場から見えるかと訊いたら、屋上からは空は見えるけど回りの景色は一切見えませんと言いました。それじゃ、君の入っている部屋からは見えるのかと訊いたら、部屋からは窓側の狭いスリットから外は昼か夜かがかすかにわかる程度で景色は何も見えませんと言いました。園芸学部の君が入っていたA棟の研究室の横に桜の老木があっったのを覚えているかと訊いたら、はい覚えていますと言ったので、今は春になったので今年はいつもより少し遅かったけど桜が満開だよと教えてやりました。時々あの前に立つと、君があの部屋にいたんだなあと思い出すんだよと言ってやりました。
綾瀬駅からここまで歩いてくる途中のマンションに沿った道には、黄色の花のレンギョウと白い小さな花が一杯つくユキヤナギの花が咲き誇っていて綺麗だったよと教えて、こういう施設でも季節の植物が見えれば季節感があっていいのになと言ったら、ここでは季節感は全くありませんと答えました。植物や景色が見えると、受刑者の心理に悪影響があるので見えないようにしているんだろうかと言ったら、わかりませんと答えました。それから、支援者が差し入れて下さったお花でまだ生きているのがありますと言いました。先週12日に〇〇さんが差し入れて下さったお花でしょうか。

市橋君は白い丸首の下着のシャツ(私には何のことかわかりませんが、ヒートテック?の何とかと言っていました)とその上に黒の襟の立ったカーディガンみたいな恰好の上着を前を開いて着ていましたので、それも誰かが差し入れてくれたものかと訊いたら、今日は少し暖かいのでこれを着ています、両方ともユニクロ製で先生がパジャマの代りにと支援者に依頼してくれた時に差し入れされたものですと答えました。下は、いかにも楽そうな灰色のトレーナーを着ていましたので、気温に応じて選べる衣類があってよかったなと言ってやりました。何か差し入れてほしいものがあるかと訊いたら、何もありませんと答えました。

食事は毎日同じメニューか、ご飯とかパンとか麺類とかたまには違ったものが食べられるのかと訊いたら、毎日変わりますと答えたので、そうか、栄養学的な計算だけでなく、飽きがこないようにちゃんと考えてくれているんだなと話しました。

支援者から手紙が届いているだろうが、支援者の中にはいろいろな人がいるから気を付けるようにと注意しました。始めの頃は君のファンクラブみたいなものがあったらしく、君と獄中結婚したいとか、君の子供を産みたいと信じられないようなことを言った若い女性もいたようだけど、今君を支援してくれている人のほとんどは君のお母さんみたいな人たちで、君を自分の子供のような気持ちで支援してくれていることを伝えました。支援者の振りをしている人もいて、例えば大阪の〇〇さんのように一人で何人もの名前を使って複数の人間に成りすましていた人もいたので、手紙も変な内容のものは刑務官の検閲で君のところまでは届かないだろうが、十分気を付けるようにと助言しておきました。

ここでも運動の時間はあるのか、ちゃんと運動をしているかと訊いたら、この頃は外(屋上)には出ていませんと答えました。これから長い期間君はこういうところで生活するのだから、ちゃんと運動をして健康を保たなければ駄目だぞと言ったら、自分の部屋でラジオに合わせてやっていますと答えました。ラジオ体操の音楽が流れるのか、腕を挙げてとか首を回してとか号令がかかるのかと訊いたら、違います、ラジオが鳴る時間にそれに合わせて腹筋運動や腕立て伏せやまた割などの運動や空手の突き蹴りなどをやっていますと答えました。

今日の刑務官も親切で、私と市橋君の会話を目を合わさないようにしてすぐ隣で心配そうに聞いていましたが、千葉刑務所のように目覚まし時計のようなけたたましいベルを鳴らさずに、そっと身振りで時間ですよと伝えてくれました。私は市橋君に来週また来るから、控訴するかどうかもう一度しっかり考えておくように、君の心の問題として不満が残ったまま服役するのはよくないのでともう一度伝えました。市橋君は立ち上がって深くお辞儀をして、申し訳ありません、ありがとうございましたとお礼を言ってくれました。
帰りは同じ道をブラブラ歩いて綾瀬駅まで行きましたが、今日の市橋君が比較的落ち着いた表情をしていたのは、刑を受ける覚悟を固めつつあるのかなという気がしました。

決して催促しているのではありませんが、もしこれから来週の水曜までの間に差し入れに行く方がおられたら、今の季節が感じられるお花や木の小枝を選べれば、少しでも市橋君の心を和ませるかもしれません。

早速支援者の一人から、「先程、ブログ拝見致しました。今週の4/19(木)か20(金)に東京拘置所に伺い、お花の差し入れ出来ます。(他の支援者の状況にもよりますが…)」というメールが届きました。