2012年4月14日土曜日

以下はある支援者から今日いただいた2通のお便りに対して私が差し上げた返信です。他にも同様な疑問をお持ちの支援者がおられるかもしれませんので、紹介しておきます。
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〇〇〇〇様
お便りありがとうございました。11日の裁判を傍聴できた支援者から、弁護団が提出した控訴の趣意書に対して裁判長が一つ一つ反論の説明をしたメモを送ってもらいました。市橋君が悔恨していないと判断した根拠の一つの「虚偽の弁解」(事実誤認)というのを、3分以上頸部を圧迫しなければ人は死なないとされているのに市橋君は1分以内しか圧迫していないと主張したことかと勝手に想像しましたが(本山:4月12日のブログ)、それだけではなかったようです。リンゼイさんの遺体には顔に殴打の痕がありましたが、市橋君はリンゼイさんを強姦後、バスタブに入れて監禁している時にタバコを買ってきてほしいと言われて逆上して2回殴った(そんなことで何故逆上するのか不思議ですが、普段から綺麗好きで、神経質で、潔癖症だった市橋君はタバコを極端に嫌っていたとのことです)と説明したのを虚偽の弁解と見なされたようです。リンゼイさんがマンションの4階まで一緒に昇ってきて、彼の個室の中に入った直後に彼女に抱きついて服を脱がせて強姦しようとしたら、途中から抵抗を止めた(することをさせてしまえば帰してもらえると思って)と説明をしたのに対して、強姦する前に殴って抵抗を止めさせたと考えるのが普通だということで、虚偽の弁解と見なしたようです。前回わたしが面会に行った時に市橋君が私に、「自分としては全て正直に話したつもりです」と言ったのはこのことも含めていたのでしょう。リンゼイさんはもう亡くなっているので、今となってはどちらが事実か証明するのは不可能です。
裁判と言うのは、本来事実を明らかにして罪に相当する罰を与える場なのでしょうが、現実には検察側と弁護側のかけひきに裁判官の人間的ファクター(例えば、遺族が提出した意見書に感情的に影響を受けて同情するなど)も加わってひとつのもっともらしいストーリーが描かれて、それに相当する罰が与えられるのでしょう。手記の印税を被害者遺族に弁償金として提供しようとしたことが、刑を軽くしようとする行為で、心から悔恨していない根拠のひとつと見なされたことも、市橋君にとっては心外なことで、私は事実に反すると思っています。実際には、出版社が商業的目的で弁護団に手記の出版の企画を持ち込み、弁護団がそれを市橋君に伝え、経済力のない市橋君が被害者遺族に弁償金を払える唯一の方法として合意して執筆したというのが事実だと思います。それを悔恨していない証拠と断じられたのでは、市橋君は何故自分の言うことを信じてもらえないのかという気持になると思います。
ただ、控訴をしても判決が変わる可能性は著しく低いか、ほとんどないというのも事実でしょうから、控訴をしてまた心が乱される時間を延長するのか、このまま覚悟を決めて受刑した方がいいのか、市橋君も迷うのではと思います。
月曜日16日に面会に行って、市橋君の気持を確かめてきます。本間 龍氏からの情報では、2週間以内に控訴の意思表示だけすれば、弁護士の選定や実際の控訴の手続きはその後でもよいとのことですので、時間的にはそれほど追われていないことは幸いです。私としては、市橋君には最後(三審)まで努力を尽くして、心残りのないような状態で刑に服してほしいと思っています。もし控訴をすることを希望すれば、山本弁護士に継続して依頼するのがいいか、私の友人の弁護士が紹介してくれる刑事裁判の経験豊富な弁護士に新たに依頼する方がいいのか、検討する必要があります。


〇〇〇〇様
学生時代の事件については知っていますが、報道されていることは正確ではありません。卒業後の彼の生活についても、〇〇様が報道から想像している彼の姿は正確ではありません。市橋君が千葉大学を卒業してから半年後くらいに出会って、その後事件当日まで1年半お付き合いしていた友人とは2回お会いして、当時市橋君がどういう生活をしていたか詳しく話を聞きました。外国留学を目指して、英語力をつけるために毎日独力で英語漬けのような勉強をしていたそうです。英語学校に通えば近道だったのでしょうが、契約金その他多額の費用がかかるので仕送りに頼ることはできず、自宅でひたすらテープを聴くという勉強法ではアメリカの大学院に受け入れてもらうのに必要なTOEFL(英語の試験)の点数が十分に上がらず、一方では友人との楽しい生活に耽り、そのジレンマに苦しむ生活だったようです。そのためにストレスでうつ病(今考えると、躁うつ病)に罹り、突然無口になって何もしゃべらなくなって友人に別れ話を持ち出すことを繰り返したうです。最後には、ご両親から3月一杯でマンションを出て、仕送りもストップするので自活するように言われて追い詰められた精神状態になっていました。それが偶然リンゼイさんに出会って、個人レッスンのアポイントメントがとれて大喜びして(今考えれば躁の状態)、あの事件が起こってしまいました。だからあのような行為が許されるということではありませんが、私は市橋君が躁うつ病だったかどうか精神鑑定を受けさせてはどうかと菅野弁護士に提案しましたが、当時精神科医に通っていたとか、どこかの薬局にでもうつ病薬を服用していたという記録が残っていない限り無理だと言われました。
悶々とした生活というのはある意味では当っているかもしれませんが、実際の市橋君は異常性格者ではないし、定職につけなかったのでもないし、将来が見えなかったのでもありません。むしろ逆で、将来に大きな夢を持っていて彼なりに必死にそれを実現させようと頑張っていたのだと思います。
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私は市橋君は何が起こったか正直に話したのだと思います。それが信じてもらえないのが悔しいのだと思います。しかし、今となってはもう裁判でそれを証明できないところが難しいところだと思います。彼が犯した罪は罪として認めなければなりませんが。月曜16日に面会に行って、控訴するかどうか彼の気持ちを確かめてきます。
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個人的な情報を含む上記の内容を私がブログに書いたことについて、支援者から批判的なお便りも届きました。しかし、新聞・雑誌やネット上に興味本位で流布されている情報に困惑している支援者に、私が把握している情報をお伝えして共有することは意味があると思って敢えて書きました。躁うつ病(双極性障害)については、もちろん私は精神科医ではありませんが、身の回りの何人かの躁うつ病の知人の行動を観察してきた経験から、もしかしたらと推察しました。ある支援者が躁うつ病について詳しく説明した資料を送って下さいました。http://square.umin.ac.jp/tadafumi/Living_with_bipolar.pdf#search='
精神的な病の診断は専門家でも難しい面があるのかもしれませんが、これからの長い服役生活のためにも、できたら市橋君は一度診察を受けておいた方がよいのではと思っています。