2012年11月2日金曜日

刑事裁判の通訳も多くこなしているというスペイン語通訳をしておられる方からメールが届き、市橋君の公判時に法廷通訳によって法廷でのやり取りが被害者両親に通訳されたことに関して質問に回答してもらえるかという打診でした。「日本における司法通訳翻訳の現状と課題について」という研究テーマの博士論文作成上の資料にしたいとのことでした。元教師としての本能で、できるだけ協力したいという気持ちになり、すぐ了承しました。しかし、送られてきた質問票を見ますと、内容的には裁判所が回答すべき内容の質問がほとんどで(例えば、法廷通訳の選出方法とか、支払われた報酬の負担人は誰かとか)、弁護側証人として1回出廷しただけの私が回答できる立場ではないということがわかりました。

私の記憶も薄れていますので、あらためて当時のブログをチェックしてみましたら、私は2011年7月11日に出廷して証言をしていました。当日裁判員の一人から、「私自身は支援する会にいくら振り込んだのか」という、市橋君の犯した罪の判断には何の関係もない、単なる好奇心本位の質問に不愉快な思いをしたことを思い出しました。2011年7月26日のブログでは、担当した通訳が私の専門の農薬毒性学(Pesticide Toxicology)の農薬(Pesticide)を肥料(Fertilizer)と誤訳したことや、2011年7月21日付けの英字新聞 The Japan Times にその他にも誤訳が具体的に指摘されていると書いてありました。また、2011年7月31日のブログでは、支援者から寄せられた通訳の問題点に関する詳しい情報を紹介してありました。

加害者や被害者が外国人の場合、通訳の仕方によっては裁判員の判断に不適切な影響を及ぼす可能性もありますので、法廷通訳が一人だけでいいのか(市橋君の裁判の時は、裁判所が登録されている英語通訳の中から選出し、複数必要ではないのかという弁護団の指摘に対して、通訳本人が自分一人で十分できると主張して一人になったという経緯のようですが)、という問題も含めて制度的に考えてみる必要があるのかもしれません。