2013年1月6日日曜日

昨日お知らせしたオランダ在住37年のK氏から、私のメールに対する返信が届きましたが、想像した通り現地の女性と結婚して大学生の年齢の息子さんと娘さんがおられるとのことでした。空手を教えるために若い時代に日本を離れてここまでくるのにはいろいろ紆余曲折(うよきょくせつ)もあったのでしょうが、その行動力は素晴らしいなと思いました。私の方が10年くらい年長のようですが、いつかお会いする機会があれば、お互いの経験を語り合いたいものです。
ブラジルに渡ってポルトガル人と結婚した私の兄にしても、アメリカ人と結婚したカリフォルニア在住の私の娘もそうですが、遠い昔に地球上を移動・分散・隔離して人種や民族に分かれた人類は、近年の交通手段の急速な発達とともに再会し、一つに融合しつつあるような気がします。

テレビ朝日で夜9時からやっていた「聨合艦隊司令長官山本五十六-太平洋戦争70年目の真実-」という2時間半近い映画を見ました。歴史ですからストーリーはある程度わかっていましたが、豪華キャストの割には話がきれい過ぎて、戦争の残酷さ・悲惨さ・非人間性が描き切れていないなと感じました。それでも、政治家や軍人やそれに迎合したマスコミによって社会全体に愛国主義やナショナリズム、戦争推進の大きな流れができてしまうと、それに反することを言ったり、個人で止めようとしても止まらなくなってしまうという怖さがほんの少しだけ伝わりました。

以下は、昨日パソコンに保存されている古いドキュメントの中から見つけた5年前に千葉大学園芸学部同窓会報に依頼されて書いた定年退職の挨拶文です。
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退任にあたって-大学における民主主義の復権を!

生態制御化学教授 本山直樹
 
 約10年間勤務した前任地(米国ノースカロライナ州立大学)から千葉大園芸学部に助手として着任したのは1978年で36歳の時だったから、私は千葉大で今日までかれこれ30年過ごしたことになる。1966年に当時の園芸学科の応用昆虫学研究室を卒業後、名大大学院に進学し、大学紛争の真最中に米国に留学、帰国した時には研究室は環境緑地学科の環境生物学に変わっていた。その後学部改組で1991年には生物生産科学科ができ、応用動物昆虫学から分離・新設された生態制御化学研究室を教授として一人で(途中サンチェス・バヨ博士が時限の助手として3年間加わったのを除いて)17年間担当してきた。大学院生時代から一貫して殺虫剤の作用機構を研究の柱としてきたが、千葉大着任後は時代の流れに沿って研究テーマを多様化した。そのことが外部研究費の獲得だけでなく、研究室を専攻してくれる学生の確保にもつながった。最近は、偽装有機農業用資材の分析や、農薬の環境動態・生態影響・健康影響に関する研究が中心になり、農水省の農業資材審議会委員や講演会など社会活動にもかなりの時間とエネルギーを使ってきた。振り返ってみると大学の悪いところは、(1)教員は補助職もなく一人で全て(教育・研究・管理)をやらなければならない、(2)雑用が多い、(3)研究設備も予算も貧弱、(4)学生は常にゼロからのスタート、(5)学生の中には精神的・社会的に問題のある者もいる、ということだろう。反対によいところは、(1)研究テーマの選択の自由がある、(2)外部研究費は努力である程度は取ってこれる、(3)社会から科学的・客観的な存在として見てもらえる、(4)学生の頭は柔軟で新鮮、(5)指導した学生が育っていくのは最大の楽しみ、ということだろうか。退任の時期になってちょっと心配なことは、この1~2年の間に「競争原理重視」という文部科学省の誘導の下に、大学の民主主義が急速に失われつつあるということ。大学全体では学長を中心とした理事会、学部にあっては学部長を中心とした役員会に権力が集中し、戦後確立した学部の自治も教授会の自治もなくなった。学長や学部長のところに巨額の予算を留保し、昨今問題視されている官庁の随意契約と似たような使い方をしている一方で、教員がバラバラにされて研究室組織もなくなり、研究費も教員一人当たり僅か年25万円(出張旅費、図書費、コピー代、消耗品費を含んで)。大学には本来外部研究費のとれる分野だけでなく、流行らなくても継承し、学生に教育していかなければならない学問分野がある筈なのに。このところ急に若手教員の元気がなくなったと感じるのは気のせいか。いつか再び自由な発想と自主的な意志に基づいて、教員一人一人が生き生きと教育研究に従事できる日がくることを期待したい。この機会に、これまで私を陰に陽に支えてくれた現および旧教職員、卒業生、課外活動の空手部員、ならびに私の研究室を専攻してくれた学生諸君に厚くお礼申し上げる。
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