2013年2月18日月曜日

東京農業大学の山本 出(いずる)名誉教授からお借りしてきた大学院生小崎敏雄氏の博士論文「松枯れの化学生態学的研究-枯損原因解明の新しいアプローチ-」(1987年)を、何回も目を通しています。当時理化学研究所におられた辰野高司博士は、糸状菌接種によってマツが枯れることから松枯れの原因は糸状菌と提案しておられたのに対して、林野庁林業試験場(現在の森林総合研究所)におられた真宮靖治博士はマツ枯損木から発見されたマツノザイセンチュウにはマツに対する病原性があって、マツに接種するとマツが枯れることから松枯れの原因はマツノマダラカミキリという昆虫が伝搬するセンチュウであると説明しておられました。
山本先生の研究室では、糸状菌を接種してマツが枯れる時に発生する揮発性成分(テルペン類)のパターンと、センチュウを接種してマツが枯れる時に発生する揮発性成分(テルペン類)のパターンが異なることを室内実験で確認し、野外のマツが松枯れで枯れる時に発生する揮発性成分(テルペン類)のパターンと比較するというアプローチを採用しました。その結果、野外の松枯れはセンチュウ接種で起こる松枯れと一致するということから、松枯れの原因はセンチュウであると推定しました。実験的にはマツが枯れる原因が複数ある時に、実際にはどれが野外での松枯れの原因かを特定した大変興味深い研究です。
この研究は当時学会誌に公表されなかったらしく、あまり社会に認知されていないのは残念なことです。そんなこともあって、今でも松枯れの原因はマツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウであるという科学的事実を否定して、大気汚染や酸性雨などの環境要因が関わっているかのような主張に固執して、松くい虫防除に反対する方がおられるのは遺憾なことです。

昼頃小雨が降っていましたが、今日も私は江戸川堤防に行って、小雨がポツポツ落ちてくる中を12Km 走ったり歩いたりしてきて気分爽快でした。