2013年3月14日木曜日

午前中は農薬学会総会と学会賞授賞式と受賞講演2題が行われ、午後は受賞講演3題と特別講演2題が行われました。

嬉しかったことは、アメリカニューヨーク州のシラキューズ大学に長年勤務しておられた中津川 勉先生と会場でお会いしたことでした。中津川先生は私よりちょうど10年くらい年長で、東京大学農学部を卒業して農林水産省の農業技術研究所(今の農業環境技術研究所の前身)に短期間勤務の後、アメリカに留学され向こうで殺虫剤の研究をされ、昨年退職された方です。確か10年くらい前に北海道大学で農薬学会大会が開催された時に来日されていてお会いして以来の再会でした。1957年に東京大学農学部の害虫学研究室で卒業論文の研究をしていた時に、当時の研究室は貧乏で冷蔵庫すらなかったので、酵素実験をする時に調製した酵素を4℃で保存する時は、容器に入れて麻縄で縛って学内の池の底に沈めた(池の底の温度がちょうど4℃くらいだった)というお話には驚きました。とにかく日本は貧乏で、アメリカに留学する時はドルの持ち出しは200ドルまでだったので、現地の大学に着いて奨学金がもらえるまで最初の1ケ月の生活費がなくなって、大学から利子付きの借金をしてしのいだとのことです。当時海外に出て行った日本人がどれだけの覚悟と意欲で出て行ったか、今では想像もできないくらいです。私が1969年に留学した時でも、1ドルは360円で、ドルの持ち出しもまだ1000ドルまでという制限のある時代でした。中津川先生には、是非留学当時の経験を何かに残して日本の若者に伝えてほしいとお願いしました。

受賞講演も特別講演もいずれも素晴らしい内容でした。江面(えずら)浩先生(筑波大学・遺伝子実験センター)の「遺伝子組換え植物の開発利用の現状と今後」では、世界ではどんどん遺伝子組換え(GM)植物の栽培が進んでいて、食料を輸入している日本でもかなりの量が入ってきて私たちはすでにそれに依存しているという実態を指摘されました。