2014年8月28日木曜日

房総半島の南端に位置する平砂浦で、松くい虫により壊滅的被害を受けた松の木を伐倒・伐根した跡地の砂浜に昨年10月に植樹したマツ苗が今年の2月までに大量枯死しました。原因を解明する研究の一環として、想定される要因をマツ苗を植えた鉢に添加する発病試験をしてきましたが、途中経過を写真に撮って研究者仲間に送りました。

(1)は無処理区、(2)はポジティブコントロールでマツノザイセンチュウKa-4株を幹の形成層を剥離して接種した区、(3)は大量枯死が起こった現地の砂を篩(ふる)って採取した植物根の断片(DNA診断でマツノザイセンチュウではないと判断された線虫が寄生)を砂に埋めた区、(4)は平砂浦で枯死したマツ苗の上部を除去して幹と根の部分を苗と抱き合わせに植えた区、(5)はマツノザイセンチュウしまばら株(Ka-4よりは少し毒性が弱いとされている)を培地ごと埋めた区、です。
結果は明白で、(1)の無処理区のマツ苗は全部生存、(2)のポジティブコントロール区は6鉢(反復)全部が枯死、(3)区と(4)区は全部生存、(5)区は全部枯死または枯死進行中でした。従って、現地の砂の中から採取した植物根に寄生していたマツノザイセンチュウ以外の線虫は発病の原因ではないということと、現地の砂に土壌伝染性でマツに病原性のある未知の病原菌が存在することはないということがわかりました。(5)の培地ごとマツノザイセンチュウを砂に埋めた区では6鉢(反復)全部が発病したということから、マツノザイセンチュウが土壌(砂)中を移動してマツ苗の根系から侵入・感染・枯死をしたと推察されました。この推察を確認するために、今から枯死したマツ苗の根、幹、針葉からマツノザイセンチュウの分離とDNA診断による同定を行う予定です。
この仮説の再現性が確認されれば、マツ苗をマツノザイセンチュウ汚染砂浜に植樹する前に土壌処理の登録がある殺線虫剤に浸漬処理することで、植樹されたマツ苗の活着率(生存率)を大幅に改善できる可能性があります。