2014年8月29日金曜日

昨日のブログで紹介したマツ苗の発病試験の再現性を確認するために、再度同じ試験を実施する準備をしています。接種するマツノザイセンチュウはいつも千葉県森林研究所で培養したものを分譲していただいていますが、今回の再現試験でも供給していただけることになりました。

従来、現場ではマツノザイセンチュウは土壌中では生存できなくて、根系に侵入・感染・発病させる可能性は小さいと考えられてきたようですが、それには次の論文が大きく貢献したようです。
Y. Mamiya and T. Shoji (1989) Capability of Bursaphelenchus xylophilus to inhabit soil and to cause wilt of pine seedlings.  日本線虫研究会誌18:1-5
真宮先生は松枯れを起こす線虫を日本で最初に同定し、その後も発病機構の研究などに長年取り組まれた、文字通り日本の松くい虫研究の第一人者です。こんな詳細な研究がすでに25年も前に行われていたというのは驚きです。ただ、この論文を読んでみると、私たちが今回行った発病試験と方法に若干違いがあります。上記論文では、研究所の圃場の土を使って、苗の主根部分に傷を付けて線虫懸濁液をすぐ側に注入すると線虫の侵入・感染・発病が起こるが、根が無傷の場合や、線虫懸濁液を苗から少し離して注入すると線虫の侵入・感染・枯死は起こらないと記載されています。

一方私たちの試験では、平砂浦で採取した砂を使って、マツノザイセンチュウは培地のまま苗から少し離れた位置で砂に埋めました。苗は5月16日に植えて試験は約2ケ月後の7月20日に開始しましたが、意図的な傷はつけてありません。水は上からの灌水ではなく、鉢を置いたトレイに張って、鉢の底から常時吸い上げさせましたので、鉢の中の砂には常に十分の水分がありました。培地のまま砂に埋めたということと、十分な水分があったということで、線虫の土壌(砂)中での生存率が高まり、水を介して苗の根系へ移動し、侵入・感染・枯死が可能になったのではないかと想像しています。
平砂浦でも、松枯れ木を伐倒・伐根した後にマツノザイセンチュウが寄生した根の残渣が砂の中に埋設された状態で残った可能性がありますし、陸地から海に向かって流れる地下水の上方移行や降雨などで植樹された砂浜には十分な水分も存在した可能性があり得ます。
先ずは、発病試験の再現性の確認と、枯死したマツ苗の根・幹・針葉にマツノザイセンチュウが本当に侵入しているかどうかを確認することが必要です。

明日は朝6時15分発の電車に乗って茨城県の結城(ゆうき)に出かけます。天気予報はあまりよくありませんが、松枯れ木の伐倒作業が予定通り行われて私たちの調査が実施できることを期待しています。