2014年9月8日月曜日

埼玉県農産物安全技術専門委員会(私が委員長)が浦和の埼玉教育会館で午後2時~4時に開催されましたので、出席してきました。埼玉県農業総合研究所が取り組んでいる、農産物の安全性に関わる4つの研究課題について進捗状況の報告と見当が行われました。4つの研究課題というのは、①野菜類のカドミウム吸収に及ぼす土壌化学・物理性の影響解明と吸収抑制技術の確立、②ヒ素とカドミウムのトレードオフ考慮した水稲のヒ素、カドミウム同時吸収抑制技術の開発、③土壌及び農産物における放射性物質の実態把握、④殺線虫剤の土壌残留とその防除効果の関係解明、です。

①については、ホウレンソウのカドミウム吸収はpHの低い土壌では、国際的な基準値の引き下げに伴って国内基準値も見直される可能性があることから、石灰の施用で土壌 pHを高めることと堆肥の施用の組み合わせで十分抑制効果が得られることが確かめられました。
②については、水田では湛水管理によって水稲の玄米のヒ素濃度が高くなる代わりに、逆にカドミウム吸収量が多くなるといういわゆるトレードオフの関係があります。農水省がイオンビーム照射で作出したカドミウム低吸収コシヒカリを栽培して湛水管理をすることで、両方の重金属の吸収を抑制できることが確認されました。
③については、福島原発事故以来、埼玉県でも土壌の放射性物質汚染による農作物への影響を評価するために、埼玉県全域における農地の上層部と下層部の放射性セシウム濃度を測定したところ、上層部の方が下層部よりも濃度が高いことがわかったけれども、安全性が問題になるレベルではありませんでした。また実際に放射性セシウムを含む土壌と地元の土壌とを混合して水稲とコマツナをカリウム添加と無添加で栽培したところ、カリウム添加で稲ワラノ放射性セシウム濃度は減少傾向を示し、玄米では検出限界値未満という結果でした。コマツナについても基準値(100Bq/kg)に比べて低濃度で問題はありませんでした。
④については、施設栽培キュウリの土壌中のネコブセンチュウ防除のために殺線虫剤ホスチアゼート(製剤名ネマトリン)を施用した場合の土壌中の残留濃度とネコブセンチュウ生息密度、根コブ形成程度、キュウリの生育・収穫量との関係が調査されていました。

埼玉県民の食の安全だけでなく、埼玉県産の農産物を食べる国民の食の安全を確保するために、こういう地道な研究が行われていることはあまり知られていないかもしれませんが、大変ありがたいことだと思いました。