2014年10月29日水曜日

Goldsboroという車で1時間半ぐらいの距離のところにあるNorth Carolina Forest Serviceというのは、North Carolina Department of Agriculture and Consumer Servicesという州政府の中の出先機関で、Hardwood(樫など)とSoftwood(松など)の苗生産をして、販売をしているところです。電話で午後1時半頃行くと予約しましたので、早めにモーテルに来てくれたMargieさんとお寿司屋の「すしつね」に寄って昼食を食べてから出かけました。

松を担当しているBobby W. Smith, II氏が待っていてくれて、Margieさんが車の中で時間を過ごしてくれている間、敷地内のいろいろな施設や圃場を案内して見せてくれました。業者に委託して松かさを採取して搬入してもらう他に、松かさを生産する松の成木の圃場(花を咲かせて実を採るので果樹園と呼ぶのだそうです)がありました。近親交配を避けるためか、20ファミリー(株?、系統?)以上の松の木が植えてあるそうです。十分に花を咲かせるには、少なくとも3サイド(方向)を開けて太陽が当たるようにする必要があるのだそうです。

松かさから振動によって種子を落として篩い分けして採取する装置や、それをさらに夾雑物を選別除去して種子だけにし、種子から羽の部分を除去する装置など、ほとんどの工程が機械化されていました。プロセシングと呼んでいましたが、松の種類によって発根・発芽を促進させる温度・湿度処理条件などが違うらしく、それぞれに適した処理をして苗生産をしていました。種子を採取した後の松かさを入れるダンボール箱もたくさん置いてありました。松かさをどうするのかと訊いたら、デコレーション用に売るのだそうです。大きな松かさは飾りになるし、松のいい匂いがするので室内でほのかな松林の匂いを楽しむために置く人もいるのだそうです。
松の苗だけで年間約800万本生産・有料配布しているそうで、しかもそういう施設が州内に複数あるとのことで、規模の大きさに驚きました。それだけ州政府が森林の造成・維持に力を入れているということでしょう。日本では松の苗の生産は林野庁が担っているのか、都道府県が担っているのか、民間が担っているのか私にはわかりませんが、アメリカの行政の力の入れ方はすごいという印象を受けました。
日本では松の苗の値段はどれくらいかと訊かれたので、小さい苗だと1本15セント(=15円)くらいかなと言ったら、アメリカの3倍くらい高いと言っていましたので、こちらでは1本5セント(=5円)くらいなのかもしれません。

私が日本の松枯れの状況を説明し、マツノザイセンチュウに抵抗性の松の種子を小規模試験目的で購入したいと伝えたら、とりあえず4種類をそれぞれ数百粒ずつ無料で分けてくれました。松の種子の日本への持ち込みは植物検疫が不必要とのことですので、日本に帰国したらこれらの種子から苗を育て、マツノザイセンチュウを接種して抵抗性かどうか確認し、それから海岸の砂や山の土で試験的に育ててみて日本の環境でよく生育できるかどうかを確認してみたいと思っています。いいものが見つかれば、千葉県の平砂浦のように松くい虫被害で消滅した砂防林をアメリカの松で再生できればと考えています。外来種を植えることに対していろいろな意見があるでしょうが、松くい虫防除のための殺虫剤散布から永久に解放されるとしたら大きなメリットがあると思うのですが・・。
マツノザイセンチュウの原産地であるアメリカにおける松くい虫の被害状況を少しだけですが調査できたことと、松の種子を入手できたことは今回のアメリカ滞在の大きな収穫だったと思っています。これでもう先日Lake Johnsonの大きな松の木の下で拾ってきたコップ一杯の松の種子は必要がなくなったので捨てることができます。

N.C. Forest Serviceは周りを森に囲まれているので、苗木を鹿に食害されないように電気柵で守っているとのことでした。敷地内をBobbyさんの車で回っていたら、目の前を大きなリスか小さなキツネくらいの大きさの動物が横切りました。Fox Squirrel(キツネリス?)といって、普通のリスはこちらではそこら中でよく見かけますが、1日に1回くらいしか見かけない珍しいリスの一種だそうです。