新潟県胎内市荒井浜森林公園における松くい虫被害木の調査結果が大体まとまりました。昨年11月に行った同様の調査結果と比較すると、薬剤無散布区のマツの枯死率は昨年が40.2%だったのに対して今年は38.8%で大差がありませんでした。激害発生地ですので、このままいくと無散布区の松林は数年で消滅してしまいます。
有人ヘリコプターと無人ヘリコプターでスミパインMCという有効成分は有機リン殺虫剤のフェニトロチオンを散布した林分では、明確に防除効果が確認されました。特に、国道113号沿いの林縁部は昨年は飛散を回避するために不十分な散布しか行われなかったために30.4%の被害が起こったのに対して、今年は殺線虫剤のGG・NEO(グリンガード・ネオ)(有効成分は酒石酸モランテル)を林縁部の幅約10mの範囲のマツに樹幹注入した結果、被害は3.3%に抑えられました。
本年2月に樹幹注入をしたにもかかわらず枯死したマツが僅かですが存在したということは、樹幹注入の施工技術に問題があったか、あるいはいわゆる年越し枯れのために、施工時には病徴は発現していなくてもマツノザイセンチュウがすでに樹体内に侵入していた可能性が考えられます。
一方、海岸の林道沿いの林分は樹幹注入は行われませんでしたので、昨年は9.1%だった枯死率は今年も10.8%と高く、ほとんど変わりませんでした。周辺環境への飛散の恐れから、ヘリコプターによる薬剤散布の落下付着量がどうしても不十分になりがちな林縁部の松くい虫対策をどうするかは難しい問題です。樹幹注入をすればよいのですが、経費(コスト)の問題から制約があります。
有人ヘリコプターと無人ヘリコプターによる薬剤散布区全体の被害は、昨年の9.9%から今年は3.1%と約1/3に減少していました。周辺が激害地で、発生源になる伐倒駆除されない枯死木が多数放置されている条件下にしては、顕著な防除効果だったと思います。1本1本樹幹注入するには大変なコストがかかりますし、枯死木の伐倒駆除にも大変なコストがかかります。松くい虫被害を抑える技術は存在しますが、どの防除方法を採用してどこまで防除を徹底するかは、コストパフォーマンスを考慮した経済的・政治的な判断が必要のようです。