2015年3月26日木曜日

植松博士は昨夜遅く帰宅し、安部先生は同じホテルに宿泊しましたので、朝食を一緒にした後で私たちはマツノマダラカミキリの入っていない空の松の丸太を積んだトラックを運転して陶芸家の工房に向かいました。茂原ではなく、山武郡九十九里町田中荒生(あらお)414-56にある小暮(こぐれ)隆之という方でした。千葉県森林研究所があらかじめ私たちが訪ねることを連絡しておいてくれたので、学生も一緒かと思って昼食用に稲荷ずしを大皿に山盛り用意しておいてくれました。

無釉(ゆう)焼きしめ陶の、小暮焼きの月の庭窯という看板の工房で、松の丸太が多数庭に積んでありました。運んできた丸太を置く場所がちゃんと空けてあったので、すぐ全部トラックから降ろしました。
2ケ月に1回焼くとのことでしたが、窯の中がどうなっているか見せてくれました。家の中に入れてもらって、いろいろ話を伺うことができました。棚に味わい深いいろいろな作品が並べてあり、陶芸には全く素人で何の知識もない私でも素晴らしいなあと思いました。
松くい虫の被害木は松脂が無くなっているので火力が弱く、1200℃くらいにしか温度が上らないので、最後の仕上げでは松脂が残っている普通の松の丸太を買って1500℃ぐらいにするのだそうです。松の灰は途中でかき混ぜて舞いあがらせて陶器に付着させると、独特の緑がかった色が出せるとのことでしたので、松は燃料としてだけでなく、灰まで使えて、陶芸にとっては捨てるところがない大事なものだということがわかりました。

期待していたマツノマダラカミキリの入った松の丸太が入手できなかわった代わりに、陶芸家との新しい出会いがありました。また、私たちの滞在中に千葉県一宮市に在住の元自衛隊体育学校教官だった年配のM氏が訪ねて来られ、松くい虫の話になったら、子供の頃は一の宮海岸には見事な松林があって、その中の林道を歩いて海岸に行ったと話してくれました。当時は河口近くに白砂青松巡りをして見せる小型の遊覧船が運航していて、「白砂号」「青松号」という船名で、NPO法人が遊覧船を復活させたいという動きもあってまだ船は倉庫に保管してあるとのことでした。一度船を見に訪ねることで話が一致しました。これも予期しなかった幸運な出会いでした。

運転している途中でトラックのフロントガラスに突然小鳥がぶつかってきて跳ね飛ばされたので可哀想なことをしたと思って見たら、荷台の丸太の上に死体がありました。写真を撮って調べたらモズ(百舌鳥)の♂でした。