実験に使うマツ苗を入手するために、自分で車を運転して茨城県那珂市の大森種苗園に行ってきました。往路はカーナビが国道6号(松戸と柏の市街地を通る)から16号を経由して常磐自動車道に乗せたために2時間半かかりましたが、復路は常磐自動車道から東京外環道を経由して松戸で降りましたので1時間半ですみました。
大森種苗園の社長は、長年の緑化事業への貢献が認められて山田正彦農水大臣(当時)に表彰されたり、管 直人総理大臣(当時)に表彰された方です。昨年会った時には若干アルツハイマー様の症状が出ていましたが、その後症状が悪化して入院していました。まだ60代後半の若さで歩行不能、認知不能になり、精密検査をしても原因不明だそうです。奥様が人に手伝ってもらって仕事を引き継いでいましたが、つらそうでした。
幸い、クロマツとアカマツと合わせて130本の苗を圃場から掘り起こしておいてくれました。苗代をいくら請求したらよいかもわからないようでしたので、苗の大きさにしては少し高めに1本50円で6,500円でどうですかと提案したら、おまけで6,000円にしてくれました。社長が奇跡的に回復しない限り、もう松かさから採種して新しい苗を育てることはできないかもしれませんので、今圃場にある苗がなくなれば種苗園を閉鎖することになるかもしれません。
貴重な苗ですので、明日の朝、台風6号が関東地方に接近する前に、アルバイトの学生2名と一緒に圃場に植える予定です。
一昨日5月9日(土)の館山市における環境フォーラムで、二井一禎先生が講演で使った最後のスライドの写真をブログに紹介しましたが、少し見難いので、ワードで打ち直して再掲します。当日、会場には千葉県南部林業事務所長が参加していましたので、二井先生は、行政の方がおられるところでちょっと言い難いのですがと前置きして、「防除を失敗させた原因」の中の行政の責任のところを説明しました。
この中の「c. 徹底利用できない方法に依存し過ぎた間違い(空散)」について、時間に追われていましたので詳しい説明はされませんでしたが、私が質疑応答の時間に新潟県胎内市における私たちの調査研究結果を紹介して補足しておきました。荒井浜森林公園では有人ヘリコプターでスミパインMC(有効成分フェニトロチオン)が散布されましたが、林縁部におけるマツの枯死率が高かったのは、パイロットが林外への飛散を恐れて不十分な散布しかしなかったために、樹冠部への薬剤の落下付着量が不十分だったことが原因だということが証明されました。そういう知見に基づいて、新潟県庁と胎内市は次年度は林縁部のマツには殺線虫剤の樹幹注入を併用し、枯死率は顕著に低下しました。
多くの行政機関は、そういうことに無頓着に、薬剤散布を実施したから防除はしたとして済ませてしまうところが問題だという指摘です。
「e. 防除事業を委託しっぱなしで、失敗に責任をとらない」についても、私が質疑応答の時間に追加情報を提供して説明を補足しておきました。下の表にあるように、千葉県ではスミパインMCの有人ヘリコプターによる空中散布を年に1回実施していた2007年までの4年間と、知事の政治的方針でそれを中止して、年1回の残効性の短い殺虫剤の地上散布に置き換えた2008年からの4年間の比較をしてみれば、防除事業費が倍に増えたにもかかわらず松くい虫被害量は倍に増えたことが明らかです。いくら行政は政治家のトップダウン指示に従わざるを得ない立場だとしても、きちんと事業評価がされていれば、県民の税金がこんな無駄な使われ方をしたことの責任が問題にされる筈です。
二井先生の講演スライドは、こういうことをきちんと指摘し、問題提起がされていたということです。