2015年6月5日金曜日

ブユに対する防除対策の効果を評価するために、成虫を捕獲して対策実施前後の密度の変化を調査するトラップを自作しようと思って、市内のホームセンターやドラッグストア3ケ所を回ってみましたが、探していた必要な材料は見つかりませんでした。
当初は、発泡スチロール製のアイスボックスにドライアイスを入れて炭酸ガスを発生させ、アイスボックスの蓋に小さな穴を開けて市販の「コバエがホイホイ」の底と接続して、コバエに対する誘引物質の角切りセリーに動物の血液製剤を追加してブユ成虫を捕獲するというアイデアでした。蚊やブユは血液製剤の血漿画分と血球画分のどちらに誘引されるのか、千葉大学時代の私の研究室を卒業して国立感染症研究所に勤務しているK博士に問い合わせの電話をかけたところ、蚊の誘引には炭酸ガスだけで十分で、血液製剤は必要ないとのことでした。むしろ、K博士は炭酸ガスで誘引して容器に入ってきたブユ成虫を殺虫剤(ネオニコチノイド剤のジノテフラン)入りのベートを摂食させて致死させて捕獲するのではなく、粘着シートで捕獲してはどうかと提案してくれました。
グッドアイデアなので、早速大学出入りの業者に連絡して発泡スチロール製のアイスボックスを届けてもらうことにしました。月曜には、不快害虫やハエ類防除用に市販されている粘着シートを発注しなければなりません。この時期には大学構内の研究圃場でもやぶ蚊が発生していますので、試しに藪の中に設置してみてうまくいけば、新潟県のリゾートでブユ成虫に対して試してみようと思っています。

K博士は日本熱帯医学会雑誌の昭和57年6月15日発行の第10巻第1号に掲載されている大分医科大学の高岡宏行先生の総説「中米グァテマラにおけるオンコセルカ症伝搬ブユ-その研究のあゆみと最近の知見-」https://dl.dropboxusercontent.com/u/9190169/blackfly1982.pdf を送ってくれました。古い文献ですが、オンコセルカ症(河川盲目症)というのは、ブユが媒介する回旋糸状虫と呼ばれる回虫で起こる感染症で、盲目になることもある怖い風土病のようです。http://merckmanuals.jp/home/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E5%AF%84%E7%94%9F%E8%99%AB%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%AB%E7%97%87.html 日本でもオンコセルカ症がまだ存在するのかどうか、私にはわかりません。(K博士に問い合わせたら、アフリカや中南米の風土病で、日本やアジアにはない筈だとのことでした)

K博士はより最近の文献(2011年3月)として、鹿児島大学の野田伸一先生の南太平洋海域調査研究報告「トカラ列島の中之島におけるブユ対策」 http://hdl.handle.net/10232/12800 も送ってくれました。発生源の水路に有機リン殺虫剤のテメフォス(アベイト5%水和剤)を投入することで、ブユの刺咬被害が明確に軽減されることを報告しています。残念ながらこの殺虫剤は輸入が中止になり、現在は値段の高いキチン合成阻害タイプのIGRのジフルベンズロン(デミリン水和剤25%)がブユ防除に水路に投入されているが、値段が高いという問題があるとのことです。