2015年6月27日土曜日

昨日(金)のTBSのテレビ番組「ひるおび」では、中国産スイカから泡が噴出する問題を取り上げて、取材した何人かの人の原因に関するコメントを紹介していました。農薬の専門家ということで私にも直前(一日前)に電話取材がありましたが、もし農薬が原因だったらという前提で、果実を肥大させたり生長を促進するような植物成長調整剤(植物ホルモン)が無茶苦茶な使われ方をしたら、もしかしたら泡吹きの原因になるかもしれませんと、全く実証データのない想像のコメントをしておきました。

その後、この3月まで千葉県の農業事務所長をしていた長年の知人のW氏から情報が入り、10年以上前に千葉県のスイカでも同様な泡吹き現象が起こって、当時の千葉県農業総合研究センターで原因解明の研究が実施されたということがわかりました。研究成果は、きちんと以下の論文として報告されていました。
伊藤実佐子・横山とも子・竹内妙子(2003)スイカ果実に発生した腐敗症状 関東東山病害虫研究会報第50集:33-35

写真も掲載されていますが、テレビで報道された中国産のスイカの症状とそっくりです。原因は、腸内細菌がスイカに感染して果肉の腐敗を生じたということのようです。スイカ産地の風評被害を回避する配慮か、腸内細菌は家畜由来の堆肥(厩肥)に含まれていたと思われますが、そこのところは記述されていません。分離・検出された腸内細菌のゲノムDNAの塩基配列解析で菌の同定もされ、接種による発病確認試験も実施されています。掲載誌が比較的ローカルな研究会誌で英文要旨もなかったことから、この論文は今まで国内でもあまり注目されなかったようですが、ましてや今回問題になった中国の行政関係者や研究者の目にも留まらなかったのではと思います。
有機農業ブームということもあって、植物性堆肥の供給が間に合わなかったり、家畜糞の循環も含めた循環型農業で、完熟していない家畜糞が半生(なま)の状態で畑に施用されると、家畜の腸内細菌が作物を汚染してスイカの果肉の腐敗を促進したり、スイカに限らずいろいろな作物を通して人の口に入る可能性も考えられます。

この論文は簡単な内容ですが、中国の関係者にも紹介してあげれば、泡吹きスイカの原因解明に大変貴重な情報提供になりますし、日本でも有機農業や循環型農業のリスク(人への安全性)についてあらためて警鐘を鳴らしていると言えます。私が電話取材を受けた「ひるおび」番組の担当者には、PDF化した上記論文をメールに添付して送信するとともに千葉県農林総合研究センターの研究マネージメント室を通して、再度当時行われた研究について取材をすることを勧めておきました。