2015年7月13日月曜日

今日は猛暑でしたので、熱中症になるのを避けて、道場で1時間空手の稽古をしました。

7月3日に三保の松原の松枯れ状況の視察・調査に行ってきて以来、資料の整理・解析をしてきました。伐倒駆除された株から採取してきた材片からベールマン法で線虫を分離する作業も一部データが出ましたので、それらをまとめて今日清水区役所の担当者にメールに添付して送りました。
採取してきた材片の残りからの線虫の分離と、分離・検出された線虫がマツノザイセンチュウかどうかをDNA診断で確認する作業はこれからです。

静岡市から提供された資料によると、三保の松原には殺虫剤散布をして、殺線虫剤の樹幹注入もして、なお枯れたマツが209本中に21本ありましたが、現地を歩いて伐倒駆除した後の株の位置を調べてみると、根が伸びて重なり合っている範囲内のものがたくさんありましたので、根系の癒合によるマツノザイセンチュウの根系感染の可能性があります。もしそうだとすると、薬剤散布と樹幹注入だけでは不十分で、根系の癒合による隣接木へのマツノザイセンチュウの移動・感染を防除するために、追加の対策(例えば、浸透移行性殺線虫剤を隣接木の株の回りに土壌灌注するなど)が必要ということになります。
すでに伐倒駆除されて残っている株だけから根系感染の有無を確認するのは難しい問題ですが、幸か不幸か三保海水浴場北側(三保グランドゴルフ場の周囲)で枯れ進行中の木3本と衰弱木1本を見つけましたので、秋頃枯死した後で伐倒駆除する筈ですから、その時に立ち会って樹冠部にマツノマダラカミキリ成虫による後食(こうしょく)痕があるかどうか観察調査しようと思っています。もし後食痕がなければ、根系感染の可能性が高まります。これらの隣接した株を丁寧に抜根して根系が癒合しているかどうか確認できれば、根系感染のさらなる証明になりますが、それには三保の松原の管理を所管している清水区役所と作業を受託する造園業者の了解と協力が必要です。

従来は、羽化脱出したマツノマダラカミキリ成虫が樹冠部の当年枝と1年枝の樹皮を後食する時にマツノザイセンチュウが虫体を離脱して樹体に侵入・感染することだけが注目を集めて、対策としては殺虫剤散布によるマツノマダラカミキリ防除と殺線虫剤の樹幹注入による侵入線虫の防除と、次世代の発生源になる被害木の伐倒駆除だけが行われてきましたが、根系感染が予想外に広まっているとしたら、今後はその対策も追加することが必要だということになります。
根系の癒合や根系感染については、ネットで検索すると10年以上も前からすでにかなりの研究がされ、明らかにされています。以下はその一部です。何故今まで、これが対策に生かされてこなかったのか、ちょっと不思議な気がします。

〇田中一二三・玉泉幸一郎「マツの根を経由したマツ材線虫病への感染の可能性」九州森林研究No.56:216-317 (2003) http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/kfs/kfr/56/bin090526113459009.pdf#search='%E3%83%9E%E3%83%84%E3%81%AE%E6%A0%B9%E7%B3%BB%E7%99%92%E5%90%88%E3%81%A8%E6%A0%B9%E7%B3%BB%E6%84%9F%E6%9F%93'
〇田中一二三・玉泉幸一郎・保坂武宣「クロマツ小集団におけるマツ材線虫病の発生経過と根系癒合」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/123/0/123_0_G12/_pdf
〇田中一二三・玉泉幸一郎・保坂武宣「根系癒合によるマツ材線虫病被害木の拡大」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/119/0/119_0_119/_pdf
〇田中一二三・田島瑠美・玉泉幸一郎「マツ材線虫病で枯死した松根系におけるマツノザイセンチュウの生存期間」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/116/0/116_0_629/_pdf
〇森田 茂・梅原欣二「殺線虫剤の移動を利用したマツ根系癒合の立証」九州森林研究No.58:239-240 (2005)http://ffpsc.agr.kyushu-u.ac.jp/jfs-q/kyushu_forest_research/58/58pr013.PDF
〇田中一二三・玉泉幸一郎「クロマツ根系における癒合形態とマツノザイセンチュウの移動との関係」日本森林学会大会(2011)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/122/0/122_0_128/_pdf


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