2015年8月13日木曜日

研修会2日目の今日は、有機JAS適合資材(特殊肥料)として判定されて販売されていた資材の中で、その後実際には化学肥料が混入されていて不適合だということが明らかにされたいくつかの資材を例に、何故間違った判定がされたかの検証と、今後間違いを防ぐためにはどうしたらいいかということについて議論がされました。今まで有機農業で農薬の代替資材として使われる防除資材の偽物については、私たちが、当時自然派ネットワークと称したグループ(代表:塚田 猛氏)が販売していた「夢草」(むそう)には合成ピレスロイド剤のシペルメトリンが混入されていることを1994年4月の日本農薬学会大会で初めて明らかにして以来 https://sites.google.com/site/naokimotoyama/old/2009/20091229 数多く見てきましたが、有機農業で使われる肥料についても同じようなことが行われていることは知りませんでしたので、驚きました。

研修会ではいくつかの事例について具体的な検証が行われましたが、最近の事例として宮城県にあるゴールド興産株式会社 http://www.goldkousan.co.jp/ という会社が販売していたバッチリ米キングと核アミノ10という資材には、業者が公表している原材料と製造工程ではあり得ないほどの肥料成分が含まれていました。
(農水省)http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/150612.html 
(宮城県)http://www.pref.miyagi.jp/release/ho20150612-4.html
有機JAS適合資材の認証機関(民間)は分析ができる自前の研究所を持っているわけではなく、業者から提出された申請書類の審査で適合か不適合かを判定せざるを得ません。特殊肥料が本物か化学肥料を混入した偽物かを見分けるには、堆肥の原材料(鶏糞灰、草木灰、米ぬか、大豆粕、その他)に含まれる窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)の含有量はすでに公表されているデータがありますので、申請者が提出した特殊肥料の原材料の配合割合から肥料設計をしてみれば、あり得ないほどの肥料成分が含まれているかどうか判断できます。疑念が残る場合は、有料の分析機関に分析してもらうこともあるようですが、業者からの有機JAS資材の認定申請料金はわずか3万円だそうですから分析料金の方がはるかに高くなってしまいます。

業者が有機農業生産者に売り込むために作ったパンフレットの窒素、リン酸、カリの濃度と、検査のために収去した資材を分析した結果が合わない(宣伝パンフレットの方が含量が多い)場合もありました。防除資材の時にも同様の事例があり、実際に販売している資材(購入した有機農業生産者が防除効果が実感できるように農薬を混入)と、検査のために収去される資材(分析で見つからないように農薬成分が抜いてある)が、容器とラベルは同じでも中身が異なる場合がありました。

有機JAS資材認証機関(民間)の方々は、FAMIC(Food and Agricultural Materials Inspection Center  独立行政法人農林水産消費安全技術センター) http://www.famic.go.jp/ に代わって大変な作業を請け負っているということがよくわかりました。万が一、適合と判定した資材が後で不適合なことが明らかになった場合は、それを使った農家の生産物は有機の認定を取り消されますので、経済的な損害の責任を負わされる可能性があります。保険にも入っているそうですが、それだけ真剣に認定作業をしなければならないということです。私が参加した研修会を主催した有機JAS資材評価協議会では、現地視察をする検査員、書類審査をする判定員、総合判定をする理事会と三段階で念には念を押して判定をしていました。

私自身は、終戦直後の有機農業しかできなくて食糧難でひもじい時代を経験してきましたので有機農業が日本農業の将来目指すべきモデルだとは全く思いませんが、選択肢として有機農業をやる人がいても構わないと思っています。ただ、現状では有機農業の本来の姿とは別に、生産者にとっても、防除資材・肥料資材の販売業者にとっても、おいしい金儲けのビジネスに堕している面があるようです。そのために、化学農薬や化学肥料を混入する偽装資材が横行したり、慣行栽培された農産物を健康にも環境にも危険と虚偽の宣伝をするというのは、明らかに国民に対する詐欺行為です。

もう一つ研修会で勉強になったことは、偽装防除資材の時もそうでしたが、偽装肥料資材の業者が確信犯で繰り返し犯だということが明らかになっても、農水省は資材の回収は命じても、ただの一度も罰則規定を適用して罰金や懲役を課したことはないということです。担当役所にどういう理由があるのかわかりませんが、農薬取締法にも肥料取締法にも罰則規定があるにもかかわらず、罰則を適用せずに詐欺行為の繰り返しを許しているということは、私には不作為の責任があるように思えます。