2015年9月16日水曜日

公益社団法人報農会主催の第30回報農会シンポジウム「植物保護ハイビジョン-2015」-シンポジウム第30回の節目に立ってみる"過去・現在・未来"-が、東京都北区にある「北とぴあ」で開催されました。報農会というのは、現在のバイエルクロップサイエンス株式会社の前身の日本特殊農薬株式会社の時代にドイツのバイエル社からパラチオンという殺虫剤を導入して得た巨額の利益を社会に還元するために設立した法人で、植物保護関係の大学生・大学院生に奨学金を支給したり、教員が国際会議等で海外出張する時の旅費の一部を援助したりする活動をしてきました。私自身も名古屋大学大学院生で日本育英会の奨学金がもらえなかった時に、月額1万円(当時は大金、今なら10万円ぐらいの感覚)の奨学金を支給されて大変助かりました。
現在は金利が安くなったので支給できる奨学金の額にも制約があるようですが、年に1回のシンポジウム開催と、その機会に植物保護分野の現場で多大の功績があった方々の表彰をしています。

会長の田付(たつき)貞洋元東京大学教授の開会の挨拶に続いて、以下の5題の講演と総合討論がありました。
1. 「機構変動が水稲生産に与える影響とその対策」農研機構・中央農業総合研究センター中川博視博士
2. 「外来雑草の侵入実態」農研機構・中央農業総合研究センター黒川俊二博士
3. 「長距離移動性イネウンカ類の薬剤抵抗性の発達の現状と今後の課題」農研機構・九州沖縄農業研究センター松村正哉博士
4. 「病原菌の発生生態に基づく土壌病害の防除」群馬県農業技術センター池田健太郎博士
5. 「都市型市民農園の開発と運営-つくば市中心部での一事例-」株式会社谷口企画谷口米二氏

いずれも興味深い内容で、私には大変勉強になりました。最後の谷口米二氏は異色の人物で、秋葉原に本店のある大型電気店での勤務を経て、定年後の人生第二のチャレンジとして大規模な市民農園を運営管理しておられます。市民農園は今後も都市近郊で益々需要が高まるという予測から、この事業を始めたとのことでした。どういう苦労があったかの経験に加えて、公務員は親方日の丸で「やってやる」という態度が一般的だが、自分は商人上がりだから「どうやってお客さんにサービスをして商品を買っていただくか」というのが基本的姿勢だという言葉が印象に残りました。