2015年9月10日木曜日

昨夜は鳥取駅前のホテルに宿泊しましたが、テレビのニュースを見たらむしろ北関東の方が台風18号の影響で大雨の被害がでていると報道していました。
「松枯れ防除実践講座」の初日は、JR鳥取大学前駅のすぐ前にある鳥取大学キャンパスの農学部大会議室で午後1時から開催されました。主催者の挨拶に続いて、鳥取県農林水産部森林・林業振興局森林づくり推進課の三島 昇氏の「鳥取県における松枯れ被害の現状と対策について」の報告、石川県農林総合研究センター林業試験場森林環境部の千木(せんぎ)容氏の「石川県における松枯れ対策と抵抗性マツについて」の特別報告がありました。
15分の休憩後、神戸大学(元森林総合研究所)の黒田恵子教授の「マツ枯れの現状と対策-関西地域の特徴について-」と題した講演、私の「松枯れのより完全な防除について」と題した講演、と交流会がありました。

いずれも大変興味深い内容でしたが、私にとっては特に三島氏の報告の中で紹介された、樹幹注入した殺線虫剤がマツノザイセンチュウが侵入する頭頂部付近に移動して最高濃度に達するのには約4ケ月かかるという試験結果は素晴らしいと思いました。従来はこの殺線虫剤の樹幹注入施工適期としては~2月末頃までとされていましたが、それでは6月にマツノマダラカミキリが羽化脱出して当年枝・1年枝の樹皮を食害してマツノザイセンチュウが侵入する時期に間に合わないということで、樹幹注入適期を1ケ月早めて、~1月末までに変更するように業者に助言をしたとのことです。

黒田先生の講演内容は長年の研究結果に裏付けされていて、特に病気の進行と枯死メカニズム、線虫の組織内の移動方法、マツノザイセンチュウ抵抗性種・品種は何故強いのか、など大変勉強になりました。また、「マツ枯れはマツノザイセンチュウが原因ではない」と非科学的な主張をいまだにする人たちがいて適切な防除を妨げていることに対しても、明確に否定されました。黒田先生のお話は、松くい虫防除に関わっている人たち全員に是非知ってほしい内容でした。
私の講演では、私たちが長年取り組んできた散布された薬剤の飛散調査と健康影響評価の紹介に加えて、三保の松原での調査で浮かび上がった根系癒合による感染拡大とその予防対策の必要性の指摘と、千葉県成田市の甚平衛の森での調査でクロカミキリが松枯れに関与している可能性についてこれから検証する予定についても言及しました。会場を提供した鳥取大学農学部造林学分野の山本福壽教授には、私たちの研究姿勢は徹底しているとのコメントをいただきました。
参加者には、国や県の森林管理部署の担当者、造園業者、松保護士会の会長・副会長・理事の他に、三保の松原の管理を担当している清水区役所の治山・林道課の担当者2人も含まれていて、特に清水区役所の担当者とは9月29日(火)に予定されている今年の枯死木の伐倒作業に私たちが立ち会うことを確認しました。