2015年11月6日金曜日

2日目の会議は8:30から開始の予定でしたが参加者の集まりが遅く、実際に始まったのは9:00頃からでした。これもベトナム式時間なのかもしれません。
最初にCrop Life AsiaのDr. Vasant Patilが簡単に昨日の議論のまとめをし、それから私が昨日時間切れでできなかった話と今日予定していた話を約1時間半の予定でしました。もう少しで終わって質疑応答の時間に入る前に、また昨日と同じ状況になり、通訳なしに植物防疫課長と会場の参加者間のベトナム語での討議になってしまい、私とベトナム語のできないCrop Life Asiaの人たちはツンボ桟敷に置かれ、いったいこのセッションはいつ終わるのかという状況になりました。

休憩後のパネルディスカッションは、当初予定していたVietnam Chemicals Agency(ベトナム化学物質管理局?)のGeneral DirectorのNguyen Van Thanh氏が欠席し、植物防疫課長のNguyen Xuan Hong博士と私とCrop Life VietnamのBui Van Kip氏の3人がパネリストで行われました。
会場の化学物質管理局の職員から私への質問がいくつかでましたが、その中の1つは、原体の毒性試験は個別の農薬について行われてそれに基づいて一日許容摂取量(ADI)や残留基準(Tolerance、MRI)や使用基準の中の収穫前日数(PHI)が設定されているとのことだが、実際には複数の残留農薬が同時に体内に取り込まれる筈で、その場合の毒性試験(つまり相乗効果の)は行われているのかというものでした。変異原性試験方法のエームステストを開発したカリフォルニア大学のエームス博士が昔発表した、「体内に摂取される毒素の99.99%は食品由来の天然物で、残留農薬は0.01%以下に過ぎない」という論文を紹介し、そんな微量な物質の相互作用は心配する必要はないと答えておきました。
農薬によっては体内で活性化されて親化合物よりも毒性が高くなるものがあるがその安全性はどうなのかという質問もあり、長期暴露試験をしてADIを設定する時は代謝物の毒性も含められていると答えておきました。
農薬の安全性は使用基準を遵守することで確保されていて、日本では農水省の農薬使用方法の調査(2013年)では不適正使用の割合はわずか0.15%で、99.85%は適正使用されていることと、厚労省の食品残留農薬調査(2006年)では残留農薬検出率はわずか0.28%で、99.72%は検出もされないということを紹介しました。それに対して植物防疫課長のHong博士はベトナムでは農薬の不適正使用の割合は26%で、農薬使用の約4分の1に相当するとコメントしていました。

私の講演では、使用基準を遵守することが最も重要ということを結論として強調しておきましたが、ベトナムではそれをどうやって農家に徹底できるかが問題のようです。また昔の日本と同じように、無登録農薬が外国(主に中国)から持ち込まれて農家の間に蔓延っているということも大きな問題だとのことでした。

会議終了後、私は一人でホテル周辺の道を約1時間歩いてみました。ハノイ市内は土地が不足しているのか、建物がひしめき合っている感じで、小さな区画の家が縦に積み木のように積み重なっています。1階は畳2畳か3畳くらいに見える狭い面積が商店になっていて、2階・3階(中には5階までも)は住居になっています。
一歩路地に入るといろいろなものが混在しています。行商の女性(日本でもお米が統制されていた時代によくいわゆるヤミゴメを担いで売り歩いている農家の女性を見かけました)が、オートバイの洪水の中を歩いたり自転車に乗ったりして行商をしています。
通りの途中にレリーフみたいな記念碑がありましたが、USAと書いてある飛行機が墜落している絵のように見えましたので、ベトナム戦争中に団結して米軍と戦ったことを示しているのかなと想像しました。

ホテルに戻ったらCrop Life AsiaのDr. Vasant Patilから夕食をどうするかと聞かれたのでホテルのレストランのバイキングで済ますつもりだと言ったら、町にいいインドレストランがあるので一緒に行かないかと誘われたので行くことにしました。同じホテルに宿泊しているCrop Life AsiaのSomang Yang氏(女性)も誘ったら一緒に行くということになりました。Somang(ソマン)さんは韓国人で、延世大学を卒業後、インドの大学、イギリスの大学で勉強した人で、専門は自然科学分野の出身ではありませんが英語がきわめて流ちょうで、昨日の会議では説得力のあるプレゼンテーションをしていました。