2016年1月23日土曜日

名古屋大学農学部/生命農学研究科で害虫制御学研究集会・新年の集いがありましたので、私も出席してきました。地下鉄東山線の本山駅で下車し、昔住んでいた借家(建て替えられてビルになっています)の前を通って、毎日通学していた道を歩いて農学部まで行きました。今日は次の5題の講演がありました。
〇齋藤哲夫(名古屋大学名誉教授)「害虫学の7不思議-天敵による害虫防除、侵入害虫の行方、害虫の神経生理学、害虫の単為生殖、農薬の複合汚染、究極の殺虫剤抵抗性対策、害虫の長距離移動」
〇土田浩治(岐阜大学教授)「伊藤さんがこだわったつつきの順位とは何か」
〇山本敦司(日本曹達株式会社磐梯フィールドリサーチステーショングループ長)「ケーススタディから殺ダニ剤抵抗性マネジメントを考える」
〇寺本時靖(神戸大学准教授)「研究マネジメントから見た近年の大学の動き」
〇横井 翔(農業生物資源研究所)「昆虫でインフォマティックスと生物実験が出来る人材を目指して(二刀流に挑む)」
〇害虫制御学専攻修士学生5名による研究紹介

いずれも素晴らしい内容で、大変勉強になりました。私が千葉大学を卒業して名古屋大学大学院の修士課程に進学したのは1966年4月ですから、ちょうど50年前になります。博士課程2年次の途中で、大学紛争(全共闘と呼ばれた今考えれば団塊の世代の学生集団の大学破壊活動)の真っ最中にぶつかってまともに勉強できる状態ではなくなりましたので、アメリカのノースカロライナ州立大学のPh.D課程に入り直しすることになりましたが、名古屋で過ごした3年半は私を育ててくれた充実した期間でした。
私の在学中助教授として指導して下さった齋藤哲夫先生は、92才になられて足が少し不自由になりましたが、あいかわらずお元気でよいお話をされました。講演者は全員研究室の卒業生ですが、神戸大学の学術推進機構に勤務して、大学のマネジマントに関わっている寺本准教授の現在の大学はいかに厳しい時代におかれているかという話や、教員一人当たりに支給される年間研究費は岐阜大学応用生物学部(農学部)では20万円、千葉大学園芸学部では10万円、名古屋大学農学部でも40万円で国立大学(今は国立大学法人という位置付け)は教員も学生も大変な状況だという話に対して、非常に憤慨し、自分の時代に比べて19才で徴兵されて戦地に送られて人を殺したり殺されたりしなくて済むことだけは今の学生の方が恵まれているとおっしゃっていました。私もその通りだと思いました。
私が名古屋大学大学院に在学していた50年前は、教授1、助教授1、助手2、文部技官1、文部事務官1というスタッフで、国から支給される研究費は年間300万円、その他に民間企業からの研究費が約300万円だったのが、今はスタッフは准教授1と助教1と非常勤の事務職員1だけで、研究費も教員一人当たり40万円という状態ですから、いくら寺本神戸大学准教授の説明で国が大学全体に使っている予算は増えていると言っても、制度としておかしいと思います。独善的な政治家と役人が結託した無責任政策による大学教育のひずみが何年か後に日本の科学技術の弱体化をもたらさないか、健全な社会の崩壊につながらないか心配です。