2016年1月9日土曜日

府中刑務所で服役中のA氏から大学の住所宛に送った年賀状が転送されてきました。自宅住所は知らせていませんので。水戸刑務所(土浦支所)に拘置されていた時に弁護士に受刑者に理解があるとして紹介された私に仮保釈の身元引受人になってほしいのだと思います。しかし、窃盗を何回も繰り返してきたとのことでしたので、裁判で下された判決に従うのは当然だという気もしますし、何故私が彼が満期より早く仮保釈されるように身元引受人になる必要性があるのか、自分自身を説得できません。
A氏に私を紹介した弁護士がきちんと特別な理由なり背景なりを説明してくれればいいのですが・・。

秋田県立大学システム科学技術学部(由利本荘キャンパス)の川島洋人先生から、年賀状に添えて論文別刷りが2報送ってきました。1つは、安定同位体比による発生源解析に関する解説記事で、もう1つは、今から7年前の中国から輸入された冷凍餃子による食中毒事件に関連して、混入されていた殺虫剤メタミドホスの同位体比を測定した原著論文です。

〇川島洋人(2014)同位体環境科学-第2講 安定同位体比による発生源解析-. 大気環境学会誌 49(4):A47-A57 
〇H. Kawashima(2015) The measurement of stable carbon isotope ratios of eight metamidophos samples. J. Forensic Sci. doi:10.1111/1556-4029.12825 (available on line at: onlinelibrary.wiley.com)

2007年12月から2008年1月にかけてに事件が起こった時に、メディアが私の研究室に取材に来て、中国政府は日本に輸入後に混入されたと主張し、中国国内で販売していたメタミドホス製剤の国外持ち出しを禁止し、日本政府も日中友好関係を重視する外交的配慮から原因追及を中止する超法規的措置をとりました。あるテレビ番組制作会社が、中国から唯一合法的にペルーに輸出されたメタミドホス製剤を入手し、日本の農水省、厚労省、環境省に連絡を取って合法的に国内に輸入し、私の研究室に不純物組成の分析を依頼してきました。私が分析結果を日本農薬学会大会で発表したのがきっかけで、川島先生にメタミドホス製剤を提供し、購入した7種類の分析用標準品メタミドホスとδ13Cを測定して比較し、それぞれ違いがあることを明らかにしたものです。
後者の論文はJournal of Forensic Sciences(法医学雑誌)に掲載されましたので、今後犯罪捜査に安定同位体比が普通に使われるようになっていくのかもしれません。