2016年4月10日日曜日

千葉大学園芸学部の卒業生で、成田市で造園業をしている樹木医の吉岡賢人君をリーダーとする樹木医仲間が、合計15人甚兵衛の森に集まりました。樹齢約300年の巨木のマツが10数本あったと言われますが、枯死伐採した1本の年輪を正確に数えてみたら、260本確認できたとのことです。巨木は2012年に最初の1本が枯れて以来、殺虫剤散布を毎年実施し、殺線虫剤の樹幹注入も実施し、かつ根元に浸透性殺線虫剤ネマバスター(有効成分ホスチアゼート)の希釈液(使用基準の2倍希釈:値段が高いので経費節減するためと、樹冠部ではなく根の中の有効成分濃度が確保できればよいので)を土壌施用もしているにもかかわらず少しずつ枯れていき、現在は巨木は8本しか残っていません。
地元の樹木医を中心に、枯死伐採したマツの根株の調査をして枯死原因を特定し、残っている巨木の有効な保存対策を立てることが目的です。枯死にはクロカミキリ雌成虫が地面に潜って根に産卵することが関わっていると推察されますが、そのこととマツノザイセンチュウの根への感染がどう関わっているかがまだ証明されていません。
私が参加するのは3回目でしたが、途中の渋滞を予想して朝7:00に松戸の自宅を車で出発したら、日曜だったせいか渋滞がなくて8:15に現地に着いてしまいました。

前回の調査で、2014年に枯死して伐採した根株NO.11の根の材片はマツノザイセンチュウのDNA診断で陰性でした。隣接して一部根が癒合・接着していた根株NO.12の根の材片は採取部位によって陽性と陰性の場合がありましたので、同じ根株でも、根の中のマツノザイセンチュウの分布には振れがあることを示唆しました。
そこで今日の調査は、(1)根株NO.11の反対側を掘って根を露出し、材片を採取してDNA診断をすること、(2)NO.11の根の一部を切り出して、クロカミキリ幼虫の寄生・加害状況を明らかにすること、(3)残っている巨木のマツ8本の中の3本の地際から材片を採取して、DNA診断をしてマツノザイセンチュウがすでに侵入しているかどうかを確認することでした。(3)は貴重な生立木に傷を付けるのですから、材片採取はできるだけ最少量にし、材片採取後は木材腐朽菌などの感染を防ぐために、きちんと殺菌剤処理をしました。

2015年に伐採したNO.12の根株の粗皮下にはイエシロアリが存在していましたが、生立木NO.3の地際部にもイエシロアリが見つかりました。一見健全に見えるNO.3の巨木も実際には衰弱がすでに始まっているのかわかりませんが、今後どうなっていくのか、要観察です。
NO.11の根の地下深い部位には、クロカミキリ幼虫が寄生・加害していました。太い根の一部を切り取って、ナタで割材しながら丁寧に調べていったら、クロカミキリ幼虫が多数見つかりました。ボーベリア菌と思われる白い菌糸に囲まれて病死している幼虫もたくさん見つかりましたので、この微生物はクロカミキリ幼虫の自然死亡率にかなり貢献しているような気がしました。いくつか採取してきましたので、いずれどなたか専門家に頼んで同定してもらおうと思っています。

巨木の横には、比較的若い抵抗性マツの植樹圃場がありますが、その中の1本は前回見た時は部分枯れ状態だったのが、今回はさらに枯れ症状が進行していましたので、いずれ枯死してしまうかもしれません。

枯死して伐採された根株の近くには、カブトムシ幼虫やその他の生物も見られました。私は調査途中の午後3時に現地を出発しましたが、途中渋滞区間があったり道を間違えたりして、松戸の自宅まで2時間半かかってしまいました。天候にも恵まれましたし、景色のよいところで胸をわくわくさせながら、野外で皆と一緒に調査をするのは楽しい一日でした。