2016年4月22日金曜日

日本農薬学会の農薬生物活性研究会の第33回シンポジウムが東京農業大学校友会館グリーンアカデミー大会議室で10:00-16:15に開催され、私も聴講してきました。昔は私自身も講師として講演をしたこともありましたが、最近もできるだけ参加して聴講することにしています。最近どんな殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤が開発・上市されたか勉強するいい機会です。
今回は以下のプログラムのように、1題の特別講演と6題の講演がありました。

開会あいさつ
〇特別講演 大塚 隆(日本農薬)
「イソプロチオランの開発経緯と最近の動向-いもち病防除剤から環境ストレス耐性付与剤探索へ」
〇除草剤編 中村 新(バイエルクロップサイエンス)
「新規除草剤ホラムスルフロンの生物活性」
〇殺菌剤編 小川宗和(石原産業)
「新規うどんこ病防除剤ピリオフェノンの生物活性」
-休憩(昼食)-
〇殺菌剤編 久池井 豊(デュポン)
「新規殺菌剤オキサチアピプロニンの生物活性」
〇殺菌剤編 波多野広幸(バイエルクロップサイエンス)
「新規殺菌剤フルオピラムの生物活性」
-休憩-
〇殺虫剤編 播本佳明(ダウ・ケミカル日本)
「新規殺虫剤イソクラストTM(スルホキサフロル)の生物活性」
〇殺虫剤編 八田大介(アダマ・ジャパン)
「新規殺線虫剤フルエンスルホンの生物活性」
閉会あいさつ

いずれも大変勉強になりましたが、私にとっては最初の特別講演で取り上げられたイソプロチオランという化合物には昔直接ちょっとだけ関わったことがありましたので、特に興味深く思いました。この化合物は日本農薬株式会社によってイネの重要病害のイモチ病防除の殺菌剤(商品名 フジワン)として開発されましたが、その後いろいろな活性があることがわかってきました。トビイロウンカという害虫に対する活性や、植物成長調整剤としての活性や、豪雪地帯のリンゴの樹皮の野鼠による食害に対する忌避活性や、鶏や牛の脂肪肝改善剤としての活性、さらに合成展開によって類縁化合物に肝硬変治療薬や水虫治療薬などの医薬もみつかりました。

講演要旨によると、1968年9月にイソプロチオランに殺菌活性を発見した時は、圃場での性能評価試験をする場所が日本国内にはなく、米軍が統治していた沖縄に行き、農業試験場名護支場近辺の借用圃場で実施したとのことです。
ネットで調べてみると https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%B2%96%E7%B8%84%E7%B5%B1%E6%B2%BB 、1945年(昭和20年)の終戦から1972年(昭和47年)5月15日に本土復帰するまで、沖縄は日本ではありませんでした。私が千葉大学の学生だったのは、1962年(昭和37年)4月から1966年(昭和41年)3月までですから、当時はまだ米軍統治下にあったことになります。そう言えば、当時同じ研究室を専攻していた同級生のH君が、春休みだったか夏休みだったか沖縄旅行をしてきましたが、まるで外国に行くようにパスポートだったかビザだったか特別の書類が必要だったと言っていたのを思い出しました。
私が名古屋大学大学院博士課程2年次にアメリカのノースカロライナ州立大学のPh.D課程に入り直したのは1969年(昭和44年)でしたから、沖縄はまだ米軍統治下にあったことになります。

最後の講演で取り上げられた新規殺線虫剤フルエンスルホンは、ネコブセンチュウに活性が高いとのことでしたので、質問の時間にマツノザイセンチュウに対してはどうですかと訊いてみたら、残念ながら活性は低いとのことでした。

ノースカロライナ州在住の空手の弟子・友人のMargie Reinitz さんからのメールに、1969年以来の空手の弟子・友人のFrank Peoples 君が赤ちゃんを抱いている写真が添付されていました。最近亡くなった奥さんのJoAnn さんの連れ子のJeniffer を小さい時から自分の娘のように育てたので、最近Jennifer に産まれた赤ちゃんを自分の孫のように感じているのだと思います。
おじいちゃんが孫を可愛いと思うのは、日本人もアメリカ人も同じです。